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2007年04月28日

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連合メーデーに参加しました

mayday07_1.jpgだいぶ時間が経ってからの報告で恐縮ですが、4月28日(土)、日本労協連として第78回連合中央メーデーに参加しました。
今年は、天気もよく、昨年より参加者も多かった気がします。日本労協連の旗を持っていると、労福協の方が、労福協の位置へと案内してくださいました。

2007年02月15日

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ニート・社会的ひきこもり集会に参加しました

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 2月11日、三鷹で行われた「第2回ニート・社会的ひきこもり支援者全国実践交流集会」に参加しました。午前中はパネルディスカッション「若者支援の現状と課題」です。印象に残ったことは、「自立よりも参加の支援が必要」(文化協同ネットワークの佐藤洋作さん(協同総研理事))、「当事者の生存権、発達権が守られる支援であるのか」(大阪体育大学助教授の山本耕平さん)、「企業も地域の中で生活しているのだから、若者を正規雇用して育てるべき」(三鷹ハローワーク廣瀬誠人さん)、「ひきこもりには複合的な要因があるから、地域の中での組織ネットワークが必要だ」(放送大学の宮本みち子先生)という言葉でした。
 午後はテーマ別実践交流会で議論を深めました。私が参加した「仕事づくりと雇用」の会では午前の議論を受け「①企業以外の場所でどう働く場を作っていくのか、②失敗が許されない、長時間労働の職場環境が展開されている社会をどうするか、③働く場と支援の場をどうつなげるか」について考えました。

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2007年01月31日

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韓国・社会的企業調査

web3.jpg昨年12月に韓国で「社会的企業育成法」という新しい法律が成立し、今後の韓国での仕事おこしの運動にも関連するということで、協同総研として1月14日から18日まで現地調査に行きました。調査の受け入れ・コーディネートは韓国労働者協同組合連合会にお願いし、4日間で10箇所ほどの仕事おこしの支援組織や事業団体を訪問しました。
日本労働者協同組合連合会では、約10年前から韓国の労働者協同組合と交流があり、国際会議での交流や協同集会への参加、関連する「自活後見機関」(後述)からの見学受け入れなどを続けています。
web2.jpg韓国での労働者協同組合運動は、失業者・貧困層の生産協同組合運動として始まり、2000年の国民基礎生活保障制度施行以降は、同法に基づく貧困層の仕事おこしを支援する「自活後見機関」とも連携して「自活共同体」を立ち上げる運動を展開しています。
今回成立した「社会的企業育成法」は、1)社会サービスの担い手づくり2)(社会的に不利な立場の人々の)新しい仕事の創出を目的とし、労働者・サービスの利用者・その他の人々が参加する運営方法や、利益の3分の2を社会的目的に使用することなど、いくつかの要件を満たすと国からの融資や自治体の優先的な契約、社会保障費や税金の減免などの支援を得られる仕組みです。

web1.jpgまず、韓国労働者協同組合と同じ事務所にある「社会的企業支援センター」を訪問して、事務局長の文普京(ムンボギョン)さんより、この法律の制定にあたっての市民運動側の取り組みなどを伺いました。80年代の民主化運動を経て、市民運動が失業・貧困問題に活発に取り組んでいる韓国では、運動が国や政党に影響を与えるだけの力を持っているように感じます。また、97年の韓国の経済危機(IMF危機)による、大量のリストラ、貧困層の増大の問題は、政府や企業、市民にとって大きな課題であり、その克服のためにさまざまな試行錯誤が行われています。社会的企業育成法の施行は今年7月からなので、まだ細かい実施条件などは明らかではなく、市民運動側も様子を見ている段階のようですが、これまでの運動の中から生まれた事業のいくつかは、今後「社会的企業」制度に移行する可能性があり、ご紹介をいただいて事業所・現場を見学しました。

web4.jpg 看病人事業と呼ばれる主に病院で患者の介助や世話をする仕事や、低所得者層の家の改修事業、水生植物の栽培事業などを訪問したのですが、特に印象に残ったのが、リサイクル事業でした。「未来資源」とよばれるこの事業体は、ソウルから車で1時間半ほどの清原郡にあり、かなり規模の大きな2つのリサイクル施設を持っています。第1工場では生活系の廃プラスチックリサイクル、第2工場では小型家電の再資源化事業を行っていて、特に小型家電のリサイクルは日本でも障害者の仕事おこしの分野として検討しているため、非常に参考になりました。韓国の自活後見機関では、2001年からこの分野に着目し、大手家電メーカー「三星(サムソン)」の協力も得て、小型家電(ドライヤー、掃除機、炊飯器、ラジカセなど)を手分解し、金属やプラスチックに細かく分別して資源として販売しています。韓国でもテレビ、冷蔵庫などの大型家電はメーカーの責任でリサイクルをする制度があるため、対象外の小型家電に着目したとのこと、国内ではこの事業を行う団体は他になく、環境分野での先進的な事業開発に取り組んでいるということでした。
 韓国では、法制度の整備が進み、今後ますます「社会的企業」が増加していくことが予想されます。さまざまな形で、韓国との情報や実践の交流が進められればと思っています。
 調査の詳細については、後日報告会を行う予定です。

1/25の「社会的企業研究会」での岡安喜三郎専務の報告レジュメはこちら

2006年09月09日

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日本職業リハビリテーション学会に参加

kanno060908.jpg協同総研では今年1月に研究会「イタリア協同組合調査報告」を行ったのですが、その際日本職業リハビリテーション学会の松井亮輔先生(法政大学)、松為信雄先生(東京福祉大学)にご参加いただきました(松井先生はその後研究所の会員にご加入いただきました)。そのお二方が実行委員(松井先生が大会長)となって開催された「日本職業リハビリテーション学会第34回大会(9月8日:神奈川工科大)の大会企画シンポジウム『多様な雇用・就労形態の実現に向けて』に、日本労協連の菅野理事長がシンポジストとして参加し、報告を行いました。

シンポに先立つ松井亮輔先生の基調講演では、『地域に根ざしたインクルーシブな雇用・就労の展開』と題して、ご自身の職業リハビリテーション分野とのかかわりを振り返りながら、日本での障害者の福祉から就労への支援施策の展開を跡付け、最後に地域に根ざした多様な働く場の整備について展望と課題を述べられました。特に、現在常用雇用されている身体・知的障害者の約6割は雇用率制度の対象となっていない(56人以下の)民間企業で雇用されており、さらに小規模作業所などで就労する18万人の障害者や職安に求職登録しながら就職しえていない15万人の障害者の受け皿足りえるのは、そのような(雇用率対象外の)小規模企業であること。しかし、それにも限界があるので、障害者の就労機会を拡大するには、一般の民間企業以外に「近年各地でひろがってきている、労働者協同組合(社会的協同組合)、社会企業、「(昨年滋賀県で制度化された)社会的事業所」やNPOなどでの雇用、ならびに独立行政法人等も含む、公的機関などでの雇用、および起業や在宅就労など、多様な働く場づくりが積極的に進められなければならない。」と述べられました(引用はレジュメより)。

シンポでは、菅野さんが労働者協同組合やイタリアの社会的協同組合についての紹介をした他、滋賀県のねっこ共働作業所の白杉滋朗さん(昨年協同総研の関西会員集会でもご報告いただきました)から、滋賀の社会的事業所制度についての報告などもありました。

学会シンポ全体の報告は、また別の機会に譲りますが、障害者自立支援法の制定など障害者の就労を取り巻くさまざまな状況が変化する中で、菅野さんが発言したように日本ではいまだ「企業は営利企業、労働は雇用労働、にきわめて狭く限定した政策になっている」のが実態です。さまざまな分野の方々と交流する中で「協同労働」の裾野を広げていければと思います。

2006年08月17日

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ワーカーズコープアスランの総会報告

 8月1日の夜、ワーカーズコープ・アスランの第7回総会が千代田区和泉橋区民館で行われました。

 アスランは、2000年8月に、5年半にわたる編集プロダクションの争議を経て、その解決後にワーカーズコープとして立ち上がりました(詳しくは『協同の發見』2000年10月号No.101、「はじめまして。編集ワーカーズコープ・アスランを立ち上げました」参照)。

 アスランは設立総会において以下の4つの目的を掲げました。

  1. 解雇争議を支援するため、被解雇者の当面の就労の場、または協同での仕事の創出を目指します。
  2. 出版関連のフリーランスのネットワーク化による仕事の創出を目指すとともに、納得できる仕事を追求します。
  3. 失業者の雇用の創出を目指します。行政に失業対策・雇用促進事業などの実施を要請します。
  4. 組合員の相互扶助の精神に基づき、協同して事業を行い、組合員の経済的地位の向上を図ります。
 以後、6年にわたり日本では他に例のない、フリーランスのネットワークによる出版・編集のワーカーズコープとして、新しい独自の道のりを歩んできました。当初の目論見が外れて、思ったように仕事や利益の確保が難しく、設立から2、3年は本当に厳しい経営を余儀なくされましたが、ここ数年、労働運動や協同組合運動との提携も進み始め、ようやく安定した事業の見通しが立ち、事業の黒字化に一定のメドも立つようになってきています。特に若手の編集者の育成も開始し、将来に向けて持続的に発展しうる事業体としての方向性も打ち出してきています。

 今年の総会で討議された大きなテーマのひとつは、「常勤組合員とフリーランス組合員のバランス」の問題でした。設立目的にもあるように、アスランは、出版業界の中でつねに不安定な立場に置かれるフリーランスのライター、デザイナー、編集者、イラストレーターなどを組合員として組織し、実際に仕事を発注しながら協同で新しい仕事おこしも行い、さらにはその地位向上のための活動も行うことをめざしています。

 ただ、事業としてみた場合、全体の仕事量の内、一定の管理費を取ってフリーランス組合員に発注する部分をどの程度にするかは非常に難しい判断になります。特に現状の管理費の設定でいくと、これ以上フリーランス組合員への発注部分を増やすと、常勤組合員の負担も増え、経営的にも厳しいため、来期は仕事量全体も含めやや抑制することが方針として提起されました。

 それに対し、総会に出席した何人かのフリーランス組合員からは、フリーランスの取り分を減らしてでも仕事量を増やし、アスランが発展できる条件をつくっていく方が重要ではないか、という意見から出され、個々の利害ということより、アスランという存在が出版業界の中で大切なのだという認識が示されました。

 これまで理事会の議論でもなかなか結論が出なかった問題なのですが、組合員と直接意見交換をすることでひとつの方向性が出てきたのではないかと思います。今期の総会ではフリーランス組合員から1名の理事を選出し、さらに連携を強めていくことが確認されました。(菊地も協同総研からの理事としてもう1期お手伝いすることになりました。)

 総会後の懇談会で、何人かの組合員の方とお話をさせていただきましたが、アスランには専門的なテーマを持って著作を出されているライターや編集者の組合員がたくさんいます。彼ら彼女らとの連携をより強めていく中で、新しいワーカーズコープのモデルを切り拓いていくことができるのではないか、と強く感じました。

2006年06月30日

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障がいのある人と共に働く~家電リサイクル~

yachiyo.jpg 6月28日、労協センター事業団東関東事業本部の方々と、千葉県で家電リサイクル事業で障がいのある人たちを積極的に雇用している共進グループを訪問しました。
  家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)とは、2001年に施行された法律で、現在のところ一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)の4品目から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。
 基本的には、小売店を通じてメーカーが責任を持ってリサイクルすることが定められており、エアコン60%、テレビ55%、洗濯機50%、冷蔵庫50%というリサイクル率も決まっています。
 共進グループでは、家電4品目にパソコンを加えた5品目の処理を、小売店などを通さず一般家庭や事業所から直接受託し、手分解によってほとんどの品目で90%以上のリサイクル率(冷蔵庫は75%)を実現しています。

 今回は、共進グループの事業所のうち千葉県八千代市で小規模な事業を行っている(有)光和と、本埜村でより大きな規模の事業を行っている(有)本埜共進にお邪魔しました。
 先に訪問した光和では、石川さん(上の写真前列右端)にお話を伺いました。光和は開設して2年、現在障がい者が4名と健常者が3名で、月200台の家電を分解しています。元自動車修理工場だった場所で約100坪。家電リサイクルを事業としてやるには最小の単位だと言います。働いている人は、20歳から35歳と比較的若いのですが、別の事業所も含め7、8年の経験を持つベテランもいます。労働時間は1日5時間で週5日勤務が基本。沢山の仕事がこなせるベテランになると、給料が月12万円にもなっているそうです。手分解によって約40種類の鉄、非鉄金属、プラスチック等が再資源化され、リサイクル率も非常に高いということで、非常に社会的に有用な仕事に思えました。また、働く人たちにとっても、手順を覚えていけば、自分ひとりの力でやり遂げることの出来、また自分のペースで進められる仕事でもあり、向いている人にとっては最高の仕事ではないかと思いました。

motono.jpg 午後から訪問した(有)本埜共進は、98年から事業を開始しており、グループの家電リサイクル事業の中核になっている事業所です。若手の指導員鈴木さん(右の写真の後列左から2人目)からお話を伺いました。
 現在、家電リサイクル部門では、8人の障がいを持つ人と4人の健常者が働いています。事業所の規模としては、光和の数倍は大きく、家電の他にも事業所から出る産廃の中間処理も行っているとのこと。光和ではスペース的に難しい、廃プラスチックの破砕作業(破砕機によるチップ化)も行っていました。
 本埜共進では広いスペースを生かして、鶏の平飼い事業も行っており、成田のホテルの残菜を回収して飼料にして、生まれた卵をまたホテルに販売するという取り組みを行っていましたが、鳥インフルエンザのリスクもあり、6月末を持って終了するそうです。

sagyou7.jpg いずれにしても、社会的に意義があり、障害のある人々の就労を生み出すすぐれた取り組みだと思います。ただ、いずれにしても一般廃棄物の中間処理および収集運搬業の許可が必要であり、それらの許可を地元市町村から受けられるかという問題と、事業を行うのに必要な場所の確保(廃棄物処理法との関係で、住宅地などで許可を取るのはまず難しい)の問題があるでしょう。(左の写真は光和のWebサイトから借用)

 このような取り組みが日本中でどんどん広がると、障がいのある人の雇用とともにリサイクル者問題にももっと行政や市民の関心が高まるのではないでしょうか。

(菊地)

2005年10月25日

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イタリア視察ツアー現地報告 その6(おしまい)

【2005年10月24日】

 土曜日はヴェネツィアに宿泊し、いったんボローニャに戻ってから再度列車で2時間のアドリア海側のマルケ州ペーザロ(Pesaro)という街に移動しました。
 ここは、菅野理事長らが9月にICAのカルタヘナ総会(コロンビア)で知り合った、レガのマルケ州理事長、シモーネ・マッティオリ(Simone Mattioli)さんの地元で、ボローニャまで来るのならぜひ足を延ばせとのお誘いを受けての訪問です。

pesaro0.jpg 事前にメールでやり取りをして、時間を約束して夕方にペーザロ駅で待ち合わせ、ホテルまで案内してもらいました。夜、シモーネさんの奥さんで保育士ののシモーナ(Siomona)さんと、シモーネさんの弟のダヴィデ(Davide)さんと一緒に、海辺のレストランで会食しました。シモーネさんは、自身が社会的協同組合の活動を行っており、社会的協同組合の代表がレガの州理事長に選出されているのは全国でも2箇所だけとのことでした。先日お会いしたレガのA.アルベラーニさんなどと一緒に、全国的に社会的協同組合の普及活動も行っているそうです。社会的協同組合は、イタリアでも新しい協同組合の運動で、若いシモーネさん(40代半ば)が、耳にピアスをしていることなども、以前は伝統的な協同組合の人々から抵抗があったそうです。翌日の夜にはアドリア海を挟んで対岸にあるボスニアに理学療法の社会的協同組合を設立する支援に出張するそうで、非常に忙しい中、私たちのために時間を割いていただきました。
pesaro1.jpg 翌朝早くから車でホテルまで迎えに来ていただき、ペーザロの街にある「アルコバレーノ(arcobaleno:虹)」という社会的協同組合(A型)の運営する保育園を訪問しました。お話を伺ったのは、ドナテッラ・ガイア(Donattela Gaia)さん。保育園はペーザロ市の建物の中で運営を入札で3年前から委託されているということです。利用する子供たちは4ヶ月から3歳までで、(それ以上は幼稚園になるとのこと)57人の子供が入所していました。4ヶ月から預かるところは少ないので、希望者が多くかなりの待機者がいるとのことでした。
pesaro3.jpg 続いて10kmほど離れた隣町ファーノ(Fano)にある「ラビリント(labirinto:迷宮)」という保育園を訪れ、保育園全体の責任者ジーナ・ヤコムッチ(Gina Iacomcci)さんからお話を伺いました。ちょうど夏から秋への部屋の模様替えの時期であまり飾り付けをしていないということでしたが、さまざまな意匠を凝らして美しく部屋がディスプレイされていました。飾りつけは保護者とスタッフが協力して行うそうです。0~3歳の子供たちが対象なので、あまり走り回ったりするスペースが必要なわけではないようですが、かなり余裕のある部屋のつくり(基準があるそうです)になっており、ゆったりとした時間が流れていました。具体的な保育のプログラムまではゆっくり伺うことはできませんでしたが、このくらいの時期からさまざまな素材(鉄、布など)に触れさせて、将来の職業につながるように意識しているとの話は印象的でした。
pesaro4.jpg いずれにしても、イタリアでは近年、幼児向けサービスの要望が増加しており、自治体から社会的協同組合への保育園の委託は拡大しているそうです。ジーナさんは、自治体ではフレキシブルさに欠け、営利企業が教育にお金を割かない現状の中で、協同組合が保育を担うメリットがあり、保護者の要求に応え、提案していく力が社会的協同組合にはあると語っていました。98年に開設した当初は、協同組合の保育園ということで敬遠する保護者もいたそうですが、1年後には殺到するようになった、とのことでした。

 ギリギリまでお話を聞いて、ファーノの駅から列車に乗ってボローニャへ戻り、昼食もそこそこに社会的協同組合カディアイ(CADIAI)を訪ねました。

cadiai1.jpg カディアイはこれまでも労協の関係者やさまざまな人が訪問している、ボローニャでは最も大きく1974年に設立されたA型の社会的協同組合です。就労者数は約800人で組合員は約半数とのことです。対応していただいたのは、教育とクォリティ部門のピエールルイージ・シニャロッディ(Pierluigi Signaroldi)さんです。シニャロッディさんは、学生時代に兵役拒否で4年間市民サービスに従事し、法学部だったのですがその後協同組合の活動に参加したとのことで、カディアイの現場で13年働き、その後管理部門に移ったとのことで、現在の理事長など同じ世代の人たちと一緒にやってきたと言います。
 当初は人に対する社会サービスの協同組合として誕生し、70年代の終わりに福祉サービスの委託が始まって以降成長し、91年の法制化以降は社会的協同組合に転換して90年代半ば以降大きく発展してきました。当初はA型、B型の両方の分野で活動することを目指しましたが、B型の社会的協同組合は概して規模が小さく、カディアイのような大きなところがB型の活動に参入すると他の小さな協同組合の活動を阻害するとの判断から、A型のみになったとのことでした。カディアイは全国的に見ても大きな社会的協同組合ですが、他の大規模社会的協同組合が全国的な活動を展開しているのに対し、カディアイはほぼボローニャ県に限っての活動をしているところが特徴だそうです。
 活動の分野としては大きく分けて1)障害者向けサービス2)教育サービス(幼児(~5歳)・年少者(6~17歳)・成人(18歳~))3)健康サービス(労働安全衛生など)4)高齢者向けサービス(ナーシングホーム、ケアホーム)5)福祉ケアサービス(訪問介護、デイケア)の5分野で、内容的には保健・福祉のほぼ全てのエリアをカバーしています。もともとは労働者の医療分野の活動も広げていきたかったそうですが、民間企業の力が強く、労働安全衛生の分野が94年に法改正(620条)され健康診断などと同時に労働環境の監査(労働時間・環境など)が義務付けられたこともあり、この分野に進出したそうです。
cadiai2.jpg この他にも、外国人労働者が71人(20カ国!)働いていることや、組合員の最低出資金額(1050ユーロ)、各部門の連帯や経営上のお金の流れ、訪問介護の事業のあり方、事業の質の評価や維持・向上の具体的方法、他の協同組合との連携、コンソルツィオ(事業連合)での保育園の建設など、とても書ききれないほどさまざまなお話をうかがうことができました。後日、改めて何らかの形で報告します。
 最後に、他の重要な会議を終えた理事長のリタ・ゲディーニ(Rita Ghedini)さんが挨拶に来られ、今後の福祉事業での交流を約束しました。

 つい最近移転したばかりというボローニャ駅にも程近い事務所は、非常に洗練された印象で、組織的にも事業的にも非常に高い水準にあることが想像されました。社会的バランスシートの報告書等も含め、資料もたくさんいただきました。


 今日もう1箇所、会談を残しています(レガのWebエディターの方)が、今日の夕方には帰国の途につくので、これが最後のレポートになります。長いようであっという間の日程でしたが、イタリアの協同組合人の情熱と連帯に触れ、調査団はみな元気に帰国できそうです。
 お付き合いいただきありがとうございました。(菊地:10/25AM7:00ボローニャのホテルにて)

2005年10月23日

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イタリア視察ツアー現地報告 その5

【2005年10月21日】

copaps1.jpg 朝からタクシーでボローニャの北にあるサッソ・マルコーニ市の山の上にあるコーパップス(COpAPS)という社会的協同組合を訪問しました。
 なぜか約束が伝わっておらず、代表のロレンツォ・サンドリ(Lorenzo Sandri)さんは1時間ほどかけてほかの用事を人に頼んで駆けつけてくれました。
 COpAPSは、日本でも多くの研究者の方が紹介されていますし、昨年、代表のサンドリさんは日本に招待されて、各地で講演をされているので、ご存知の方も多いかも知れません。
copaps2.jpg  COpAPSは、精神障害者を中心に問題を抱える子供たちも対象としたB型社会的協同組合です。現在職員が40名ほどいて、B型の社会的協同組合としては、比較的大きい部類に入ります。1975年から活動を開始し、障害者の学校が廃止される中で、問題を抱える人々を社会に挿入していくのには農業分野が適しているということで、始まったとのことです。81年にサッソ・マルコーニの町に職業教育の学校を作り、88年にアグリツーリズムを中心に自活能力と経済的な力をを身につけるための施設として山の上の土地を借りて建物を改修し、ハーブなどの栽培を行う施設をつくりました。当時、失業率は今よりもっと高く、障害者にとってはより厳しかったそうですが、実際に仕事をつくり、仕事を通じて社会に参加していくことを目指してきました。
copaps3.jpg  91年に社会的協同組合が法制化されましたが、それまでは「連帯協同組合」や「社会的目的を持った農業協同組合」と名乗って活動してきました。主な活動としては1)清掃事業2)緑化事業3)リサイクル事業の3分野で、仕事を起こしながら働く場を広げてきました。14年経って、自分たちの戦略は正しかったと感じており、社会的協同組合はかつてないほど発展してきているということです。
copaps4.jpg  実際の仕事の作り方としては、自治体からの委託がありますが、入札にも1)一般競争入札2)法第381号による社会性を認める入札、があり、当然2)を活用しています。また、200,000ユーロまでの随意契約という方法もありますが、ボローニャでは少ないそうです。ボローニャ市はメンテナンスなどを「グローバル・サービス」として一括して委託する方針なので、コンソルツィオ(事業連合)に参加しています。また、グローバル・サービスの対象として除外されている分野(墓の清掃管理など)を受託しているということでした。

 山の上で説明を受けたあと、ふもとの施設の食堂で、職業訓練の若者たちと一緒に昼食をとりました。取りたての野菜を使った食事は美味でした。

2005年10月22日

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イタリア視察ツアー現地報告 その4

【2005年10月20日】

piazza grande0.jpg 朝から雨模様の中、ボローニャ市内で失業者支援の活動をするピアッツァ・グランデ(Associazione Amici di Piazza Grande Onlus)を訪問しました。ピアッツァ・グランデは、ノンプロフィットのアソシエーション(NPO)で、94年にホームレスのグループによって設立されました。市のバスの倉庫を提供され活動してきましたが、2003年に火災になり、事務所を高架下の場所に移したため、手狭となり、現在一部の活動を制限しているということで、2年以内に新しい建物を建てて移転する予定だそうです。
piazza grande1.jpg 活動の柱の一つは、ホームレス販売する月間新聞で、ホームレスの状況を伝える記事や、ホームレスに対する食事や宿泊の提供情報などが載っており、約6000部が発行されています。ホームレスが一部を0.5ユーロで買い取り最低1ユーロ以上で売ることになっています。
piazza grande5.jpg また、移動サービスとして、週に4日、街の中を車で回ってホームレスに飲み物や食べ物を配る活動を行っています。提供する食品の多くは、フードバンクのようなものがあり、食品点やスーパーが提供したもので、イモラにあるセンターまで取りに行っています。 その他に、市民から提供された古着のリサイクル(主にホームレスに配る)すると同時に市の職業訓練の一環として裁縫を学んでいる人たちもいます。放置自転車などを提供されリサイクルして市民に販売する事業なども行っています。移動サービスでは、たんにサービスを提供するだけでなく、職業訓練の情報など人々と社会をつなげる活動を重視しています。

piazza grande6.jpg 2000年にはファーレ・モンデ(Fare Monde)という家具のリサイクルや家の内装を行う社会的協同組合がこのピアッツァ・グランデから生まれています。

 その他の重要な事業として、「路上の弁護士」と言われる、ホームレスへの法的権利擁護活動があります。民事的・刑事的・行政的な問題を抱える人が多いので、ボランティアの法律化が支援に当たっています。離婚の問題や借金の問題などのため、公的なサービスを受けられない状態にある人たちに対しての支援が中心で、重大犯罪にかかわるような人はごく少数だそうです。

 お話をしていただいたアルベルト・ベンキモル(Alberto Benchimol)さんは、民間企業でマネージャーとして働いていたそうですが、キャピタリズムの限界を感じてこの活動に参加したとのことでした。

piazza grande4.jpg ちなみに、このピアッツァ・グランデから生まれた社会的協同組合は前述のファーレ・モンデも含めて2つあるそうですが、いずれもレガなどの連合会には加盟していないそうです。
 しかし、有給スタッフだけで10人を数え、数多くのボランティアが関わり、ボローニャ市では非常によく知られた団体のようでした。ボローニャの街の目抜き通りで、新聞を売るピアッツァ・グランデのメンバーにも出会いました。

 この日はタクシーで訪問したのですが、運転手もよくわからないような場所で、ほとんど放置された(ボロい)市の建物を利用して活動しており、昔の失対事業の現場を髣髴とさせるものがありました。

 午後からは、ボローニャから車で40~50分のところにある、フェラーリとパバロッティの街、モデナ市で行われている、レガの「企業の社会的責任」に関する国際会議に出席しました。と言っても、ほんの1時間ほどの参加で、全体的な会議の中身はよくわかりませんでした。
 ただ、地元モデナ市のアリアンテという社会的協同組合による「社会的バランスシート」についてのプレゼンテーションは興味深いものでした。経済的な決算とともに社会的な決算を行うということで、立派な報告書ができており、設立以来10年の歴史の中で障害を持つ組合員がどのくらい働いてきたか、などさまざまな指標を用いて、社会的企業の活動を評価するものです。
 自治体の入札参加の資格や、入札時における質の評価などと同様に、貨幣で計れない価値をどのように認めていくか、というイタリアの人々の思想を感じました。

会議から抜けて、レガのアントニオ・フィネッリさんの案内で彼の地元モデナ市のドゥオーモ(大聖堂)、市庁舎(フィネッリさんは市の仕事もしていたので、市役所内にも多くの知り合いがいます)を見学しました。13世紀の建物をそのまま使っている市庁舎では、ブルータスから三頭政治に関わる市の歴史的な壁画や、自治都市間の争いの中で、ボローニャ市から奪った水を汲むバケツ(厳重に保管されている)に関わる逸話などの説明を受けました。
 帰りは、愉快な運転手さんの話を聞きながら、ボローニャへ戻り、中華料理を食べました。

2005年10月21日

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イタリア視察ツアー現地報告 その3

【2005年10月19日】
 前日に訪問したエミリア・ロマーニャ州庁舎と同じエリアにあるレガコープ・エミリア・ロマーニャ州本部を訪問しました。ちなみにレガコープの本部ビルは18階建てで、ボローニャのシンボルである塔をモチーフに丹下健三氏が設計したものということです。

legacoop.jpg まず、レガの州本部15階にある労働者協同組合の全国連合会ANCPL(Associazione Nazionale Cooperative di Produzione e Lavoro)でアントニオ・フィネッリ(Antonio Finelli)さんが出迎えてくれました。レガの州レベルの理事長、クラウディオ・タリアヴィーニ(Claudio Tagliavini)さんにも同席いただいて、エミリア・ロマーニャ州における協同組合の状況について、簡単なレクチャーを受けました。
finelli.jpg エミリア・ロマーニャ州では人口400万人のうち、約半数が何らかの形で協同組合の組合員になっており、イタリアでは最も企業的な面と同時に社会的な面でも発展しているところです。小売商の協同組合や生協は不況の中、価格を抑え国民の生活を守る役割を果たして組合員を増やしており、建築分野でも、最近話題になっているシチリアとメッシーナを結ぶ橋の入札にも建設労働者協同組合(CMC)が参加するなど、大きな役割を果たしています。同時に不安な世の中を反映して、協同組合による福祉のネットワークも広がり、大きな力になっています。
 一方で、農業・漁業・工業などの分野の協同組合は大変な状況になってきているということでした。

Alberani.jpg フィネッリさんと同僚で研究所の方と一緒に昼食をとった後、レガ州本部の社会的協同組合の責任者であるアルベルト・アルベラーニ(Alberto Alberani)さんから、エミリア・ロマーニャ州における社会的協同組合の状況をお聞きしました。アルベラーニさんは、8年前までは今回の調査でも訪問予定のCOpAPSという社会的協同組合で働いていたそうです。
 プレゼンテーションの資料も交え、お話をお聞きしました。
 ボローニャ県には現在113の社会的協同組合があり、そのうち40がレガに加盟しています。CONFCOOPERATIVEやAGCIといった他の連合会とは、かつては競合関係にあったが、現在は協力し合う関係になっているということで、3者共同のダイレクトリーをいただきました。
 ボローニャ県では、1971年まではすべての医療・福祉は公的に運営されており、非常に発展していました。しかし、74年以降、精神病院の廃止、麻薬患者の増加、高齢化、女性の社会進出など社会の大きな転換の中で、公的福祉だけでは住民への要求に応えられなくなり、その中で社会的協同組合が急速に生まれていきます。やがて91年に社会的協同組合の法制化されると、入札で社会サービスに社会的協同組合が導入されていくようになります。
 社会的協同組合が作り出すのは、人間と人間の関係であることが特徴で、特に給料を得て、資格を持ち、訓練され、組織されている従事組合員がその財を生み出しています。労働者であり経営者であることが成功の理由のひとつです。。
 今後ますます国の直営でなく社会的協同組合に税金が支払われていくような仕組みになっていくだろうと考えており、そのメリットとして・官僚的にならない・フレキシブルである・人材育成・コストの管理、が挙げられます。
 今後の問題としては、・公的財源への依存・労働者の給与が相対的に安い(公務員1,500ユーロ:社会的協同組合900ユーロ、労働協約で公務員は高く保障されている)・労働組合との関係(脅威と見なされる)・低い利益率(3%:投資のための内部留保ができない)などがあります。

 ボローニャでは、社会的協同組合によって福祉が充実しているため、豊かで安全と見なされ、投資の対象になります。新自由主義経済と社会的経済の考え方のちがいはまさにここになります。
 ボローニャ市では24の保育園を市が運営していますが、1人の子供当たり月に1,000ユーロのコストがかかります。ところが社会的協同組合では800ユーロで運営が可能で、園の開設時間も直営に比べ2時間も長く(16:30まで→18:30まで)することができます。それは、社会的協同組合の人件費が安い面もありますが、公的なサービスの非効率性の問題でもあります。
 また、社会的協同組合のCADIAIはこれから5箇所の保育園を一度に開設する計画ですが、この際、CADIAI(社会的協同組合)・MANUTENCOOP(メンテナンスの労働者協同組合)・CAMST(給食の労働者協同組合)・建設協同組合などが「カラバック」というコンソルツィオ(事業連合)をつくって協同組合の横の連携で効率的に進めています。これは重要な取り組みであるが、実際には珍しい例だそうです。

barberini.jpg 引き続き午後5時から、ANCPLと同じ建物の15階にあるICA会長イヴァノ・バルベリーニ(Ivano Barberini)氏のオフィスを訪ねました。
 バルベリーニ会長は多忙で海外を飛び回っており、今日も帰ってきたばかりとのことでした。2時間にわたり菅野理事長との会談という形でお話をいただきました。(詳しくは後日『日本労協新聞』に掲載される予定です。
 バルベリーニ会長が強調されていた点
●協同組合は社会の問題・必要・希望と歩調をあわせなければならない。
●そのために真実を理解する必要がある。グローバルの状況の中にローカルの問題があり、ローカルの次元を知るためにはグローバルの次元を理解しなければならない。
●社会的企業の挑戦課題は3つ、1)市場の中での経済力2)アイデンティティの維持3)組織の条件づくり
●グローバル化された資本主義の結果、何でもビジネスとして利益を重視し、コミュニティに責任を持たず、社会的責任から逃避する文化になってきている。
●今日の協同組合は、経済的競争力をつけていくのはもちろん、文化的な力をつけていく必要があり、そのためには地域‐国‐国際レベルで協同組合システムをつくり、価値を広げていくエネルギーを持つことが必要である。
●「協同組合の価値」というとき、抽象的な言葉に終わらせず、実践しなければならない。大企業の優位性と協同組合の優位性を分析し、具体的に対抗していかなければならない。
●「尊厳のある仕事」というのは、コストの問題である。社会的責任もコストの問題。
●巨大な多国籍企業と競合するとき、同じ次元で競争しても勝負にならない。地域にラディカルに根ざし、人との関係、倫理、健康、人々に必要なサービスを充足していくこと、そしてバランスが必要である。観念だけでなく実行力を持たなければならない。
●協同組合は歴史の中で、イデオロギー、宗教・思想の影響を受けながら、それぞれの形をとってきたが、10年ほど前にそれがひとつにまとめられた。そういう問題は。ひとつの価値として奉るものではなく、具体的に使われ、刷新されていかなければ意味がない。
●レガの協同組合は「連帯」を重視してきた。協同組合間の連帯、組合員間の連帯が協同組合を発展させた。
●10年ほど前、協同組合は汚職や入札の問題で大きな危機を迎えた。その際も組合員の連帯で乗り越えてきた。

会談後、秘書のソニアさんも一緒に、協同組合のレストランで、おいしいボローニャ料理をいただきました。

2005年10月19日

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イタリア視察ツアー現地報告 その2

【2005年10月18日(火)】
regione_emilia_romagna.jpg 午前中は、エミリア・ロマーニャ州保健・福祉参事局、社会サービス計画・社会/保健サービス開発部門の社会的経済と第3セクター部長のオリアンナ・モンティ(Orianna Monti)さんのお話を伺いました。

 モンティさんは、「イタリアでは分権化が進む中で、試験的ではあるが第3セクターを福祉の主体者として受け入れていく方向にある。」とした上で、「エミリア・ロマーニャ州ではそのような国の方向性が出る以前から、協同組合の“ゆりかご”として発展し、すでに1970年代には社会的協同組合が誕生し(現在は約600)、ハンディを負った主体者を労働に受け入れ、またケアを提供してきた。これは協同組合が生み出した価値・文化であり、その経験が評価され、70~80年代には福祉サービスが公から社会的協同組合に委託されるようになっていった。」と話されました。
Orianna_Monti.jpg そのような行政と社会的協同組合の連携の中で、「91年の国法381号(社会的協同組合法)の制定の後、94年に州法7号によって規定を作って調整をしてきた。サービスの委託については、入札への参加資格を州に登録をするが、その際、サービスに必要な資格者や民主的な運営、労働協約などを審査する。また、入札に当たっては、コストとサービスの質を50:50の割合で評価することが州法で定められている。」と言います。
 また、最近では、入札によるサービスの委託だけではない新しい関係を模索しており、州の福祉政策の計画立案の段階から社会的協同組合など第3セクターの人々が参加する仕組みが始まっているとのことでした。
 サービスの質を担保するもののひとつとして、働く組合員(従事組合員)の保護(労働協約)を最低の基準としており、A型・B型の社会的協同組合ともそれが求められるということが強調されていました。また、サービスを委託しても、住民に対しての最終的な福祉の責任は、あくまでも行政にあるということも繰り返されていました。
 現在のイタリアの経済状況の中で、エミリア・ロマーニャ州でも予算の削減が進んでいます。しかし、早くから高い水準の福祉を提供してきたため、市民がすでにそれを“文化”と捉えており、後退させることは難しいとのことでした。また、女性が働き続ける地域性の中で、少子化が進み高い高齢化率を示しており、高齢者向けのサービスが拡大しているとのことでした。

 午後は、実際に福祉サービスを提供するボローニャ市(コムーネ)の「人へのサービス部長」ラファエレ・トンバ(Raffaele Tomba)さんと同僚のマーラ・ロージ(Mara Rosi)さんにお話を伺いました。

Raffaele_Tomba.jpg ボローニャ市は人口37万人で65歳以上の高齢者が人口の1/3を占め、世界的に見ても高い高齢化率となっています。99年以降、出生率が少しずつ上がっているが高齢化に歯止めがかかっていないなかで、東欧を中心に年間1万人の移民(外国人労働者?)が入ってきているそうです。そのため、市の福祉の対象としては、子供・高齢者・移民が中心になります。
 子供向けのサービスへの社会的協同組合の関与は、学校が終わった後、困難を抱える子供に対してエデュケーターという資格者が支援を行う活動などが中心だそうですが、数年前からは市の直営のみだった保育園を、社会的協同組合が財源を出して2つ設置しており、市は20年の運営委託(利用料も市が負担)をしているそうです。
 高齢者の分野では1)訪問ケア、2)デイセンター、3)施設ケアの3つのカテゴリーがあり、1)と2)については、社会的協同組合が100%担っており、3)については40箇所のうち2箇所を担っているそうです。いずれも高齢化が進みサービス需要が急激に増大する中で、社会的協同組合に委託するようになったとのことでした。
bologna.jpg 委託に当たっては、基本的にすべて入札で行っているが、やはり労働協約を重視しており場合によっては質の部分を50%以上の割合で見ることもあるそうです。また福祉計画については、3年ごとに見直し、その際必ず市・社会的協同組合・労働組合の3者の協議(テーブル)を設けているそうです。
 増加する移民については、移民の子供たちが学校に行けるよう、文化メディエーターという人が子供とその家族の支援を行っているそうですが、実際には移民送り出し組織があったりして、子供だけを送り込んでくることもあり、簡単ではないとのことでした。また、特に高齢化の中でのニーズがあり、家庭での家政婦として働く移民女性が多くなっているが、ヤミ労働となっている場合も増えているそうです。

 行政の担当者から話を聞く機会があったのは非常に貴重なことでした。エミリア・ロマーニャ州では、左派が一貫して政権を握っており(くしくも中道左派のリーダーとしてプロディ氏が選出されたとのニュースを聞きましたが)、イタリア全体で見ても、社会的協同組合を中心とする第3セクターとの関係には長い歴史があり、まさに“文化”となっていることを感じました。一方で、財政難、分権化、高齢化の進行の中で、新しい福祉サービスのあり方を模索していることも感じました。

 明日は、レガのエミリア・ロマーニャ州本部を訪問します。
 朝晩はかなり冷え込み、こちらの人の服装も冬支度です。

2005年10月18日

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イタリア視察ツアー現地報告 その1

日本労協連・協同総研のイタリア視察ツアー(2005/10/16~10/26)の現地報告です。
参加者は、菅野正純(日本労協連理事長)、菊地謙(協同総研)、川地素睿(労協新聞編集部)、相良孝雄(労協センター事業団)です。現地で菅野理事長の娘さん(ロシア留学中)も参加しています。

【2005年10月17日】
lega.jpg 1日目は午後3時半からローマのレガコープ本部を訪問しました。
 対応していただいたのは、レガ本部法律部門責任者のマウロ・イエンゴ(Mauro Lengo)さん、9月末に設立したばかりのレガコープ社会的協同組合全国連合会(Associazione Nazionale Cooperative Sociali Legacoop)理事長のコスタンツァ・ファネッリ(Costanza Fanelli)さん、そして労働者協同組合全国連合会(Cooperative di Produzione e Lavoro)理事長のロッサーノ・リメッリ(Rossano Rimelli)さんです。
lega2.jpg イエンゴさんは、①2003年に改正され2004年1月から施行している新しい企業法について、②EUレベルでの社会的協同組合法制の議論とその法律について、説明していただきました。
 ファネッリさんには、イタリアで制定された社会的企業法と社会的協同組合の関係の議論を中心に、大きく発展している社会的協同組合と労働組合との関係、またEUレベルでの社会的協同組合に対する議論についてお話をいただきました。
 リメッリさんからは、イタリアにおける労働者協同組合の状況と公共事業削減の中での生き残りの戦略、また組合員化率や従事組合員の法的ステイタスなどを説明していただきました。
 詳細は、後日また詳しくご報告させていただきます。
euro_star.jpg 会談終了後、ローマ・テルミニ駅から列車でボローニャに移動しました。
 10/18は、エミリア・ロマーニャ州本部とボローニャ市の担当者を訪問する予定です。


2005年09月12日

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work-waku都留に行きました。

Image1.jpg
9月10日(土)、山梨県都留市にあるwork-waku都留というところへ、菊地・青木で行ってきました。
work-waku都留は都留文科大学の学生さんたちがつくっているサークルで、社会学部のワークショップの授業をきっかけに、地域で自分たちがもっと楽しみたい(ワクワクする)企画を実現するために始まったそうです。
現在、公民館学級(わくわく学級)、アパート再生計画(つる小屋)、コミュニティ・カフェ(hotori)の3つの企画が動いています。

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