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2007年01月31日

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韓国・社会的企業調査

web3.jpg昨年12月に韓国で「社会的企業育成法」という新しい法律が成立し、今後の韓国での仕事おこしの運動にも関連するということで、協同総研として1月14日から18日まで現地調査に行きました。調査の受け入れ・コーディネートは韓国労働者協同組合連合会にお願いし、4日間で10箇所ほどの仕事おこしの支援組織や事業団体を訪問しました。
日本労働者協同組合連合会では、約10年前から韓国の労働者協同組合と交流があり、国際会議での交流や協同集会への参加、関連する「自活後見機関」(後述)からの見学受け入れなどを続けています。
web2.jpg韓国での労働者協同組合運動は、失業者・貧困層の生産協同組合運動として始まり、2000年の国民基礎生活保障制度施行以降は、同法に基づく貧困層の仕事おこしを支援する「自活後見機関」とも連携して「自活共同体」を立ち上げる運動を展開しています。
今回成立した「社会的企業育成法」は、1)社会サービスの担い手づくり2)(社会的に不利な立場の人々の)新しい仕事の創出を目的とし、労働者・サービスの利用者・その他の人々が参加する運営方法や、利益の3分の2を社会的目的に使用することなど、いくつかの要件を満たすと国からの融資や自治体の優先的な契約、社会保障費や税金の減免などの支援を得られる仕組みです。

web1.jpgまず、韓国労働者協同組合と同じ事務所にある「社会的企業支援センター」を訪問して、事務局長の文普京(ムンボギョン)さんより、この法律の制定にあたっての市民運動側の取り組みなどを伺いました。80年代の民主化運動を経て、市民運動が失業・貧困問題に活発に取り組んでいる韓国では、運動が国や政党に影響を与えるだけの力を持っているように感じます。また、97年の韓国の経済危機(IMF危機)による、大量のリストラ、貧困層の増大の問題は、政府や企業、市民にとって大きな課題であり、その克服のためにさまざまな試行錯誤が行われています。社会的企業育成法の施行は今年7月からなので、まだ細かい実施条件などは明らかではなく、市民運動側も様子を見ている段階のようですが、これまでの運動の中から生まれた事業のいくつかは、今後「社会的企業」制度に移行する可能性があり、ご紹介をいただいて事業所・現場を見学しました。

web4.jpg 看病人事業と呼ばれる主に病院で患者の介助や世話をする仕事や、低所得者層の家の改修事業、水生植物の栽培事業などを訪問したのですが、特に印象に残ったのが、リサイクル事業でした。「未来資源」とよばれるこの事業体は、ソウルから車で1時間半ほどの清原郡にあり、かなり規模の大きな2つのリサイクル施設を持っています。第1工場では生活系の廃プラスチックリサイクル、第2工場では小型家電の再資源化事業を行っていて、特に小型家電のリサイクルは日本でも障害者の仕事おこしの分野として検討しているため、非常に参考になりました。韓国の自活後見機関では、2001年からこの分野に着目し、大手家電メーカー「三星(サムソン)」の協力も得て、小型家電(ドライヤー、掃除機、炊飯器、ラジカセなど)を手分解し、金属やプラスチックに細かく分別して資源として販売しています。韓国でもテレビ、冷蔵庫などの大型家電はメーカーの責任でリサイクルをする制度があるため、対象外の小型家電に着目したとのこと、国内ではこの事業を行う団体は他になく、環境分野での先進的な事業開発に取り組んでいるということでした。
 韓国では、法制度の整備が進み、今後ますます「社会的企業」が増加していくことが予想されます。さまざまな形で、韓国との情報や実践の交流が進められればと思っています。
 調査の詳細については、後日報告会を行う予定です。

1/25の「社会的企業研究会」での岡安喜三郎専務の報告レジュメはこちら

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