韓国における地域活性化の現状について
協同総研は毎年数次にわたって韓国からの視察団を迎え、ワーカーズコープの現場を案内
しておりますが、日韓交流そのものはまだ一方通行の状態が続いています。韓国の現状をど
のように把握しておられるのか、日韓双方でご活躍中のお二人をゲストにお招きし、韓国の
社会的企業、社会的経済、まちづくり、教育、学習、文化全般にわたって伺います。「マウル(
=地域)共同体」づくりの具体的な事例を拝聴しながら、日韓の地域づくり、まちづくりのありよ
うについて探っていきたいと考えております。
(終了後も引き続き新春親睦会の会場で議論する予定です)
◎講 師: 李 正連 イ・ジョンヨン jeongyun LEE 東京大学大学院教育学研究科准教授
姜 乃榮 カン・ネヨン Kwang Naeyoung 慶熙大学公共大学院講師
◎日 時: 2014年1月25日(土)1:30~4:30
◎会 場: 〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-4-6 東京三協信用ビ6F 東京セミナー学院
◎主 催: 協同総合研究所
◎共 催: 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
◎参加費: 1,000円(会員、障がい者、学生は500円)
◎問合せ申込み: 協同総合研究所 東京都豊島区池袋3-1-2光文社ビル6階 TEL 03-6907-8033
FAX03-6907-8034 E-MAIL kyodoken@jicr.org
▼報告1 「社会的企業育成法の最新情報」
▼報告2 「社会的企業の支援環境~社会的企業支援センターと社会投資財団」
研究会では、まず協同総合研究所の岡安専務理事が「韓国の社会的企業法をめぐって」と題して報告。欧州各国における近年の社会的企業・社会的協同組合に関わる法整備を概観した後、ここ数年の韓国労働者協同組合連合会や自活後見機関との交流から「社会的企業育成法」が昨年末に成立した経緯、法の内容(
続いて、東京市政調査会主任研究員の五石敬路さんより、「社会的企業法の背景」として報告がありました。五石さんはまず、韓国の社会的企業育成法が低所得者層・貧困層の運動から生まれてきた点が、日本との比較で最も大きく異なる点とした上で、韓国における貧困層の運動の歴史を説明しました。
自活支援事業をめぐる問題としては、生産性の向上や自立者の拡大など事業の成果が上がらないとの批判や、運動側としてもコミュニティ運動の文脈で発展させていきたいという思いがありながら、自活後見機関から脱して自立すると却って生活が苦しくなる「貧困の罠」の問題、また制度的によって参加者が決められるため、共同体の理念の維持が難しいことなど、いくつかの問題点を挙げられました。


昨年12月に韓国で「社会的企業育成法」という新しい法律が成立し、今後の韓国での仕事おこしの運動にも関連するということで、協同総研として1月14日から18日まで現地調査に行きました。調査の受け入れ・コーディネートは韓国労働者協同組合連合会にお願いし、4日間で10箇所ほどの仕事おこしの支援組織や事業団体を訪問しました。
韓国での労働者協同組合運動は、失業者・貧困層の生産協同組合運動として始まり、2000年の国民基礎生活保障制度施行以降は、同法に基づく貧困層の仕事おこしを支援する「自活後見機関」とも連携して「自活共同体」を立ち上げる運動を展開しています。
まず、韓国労働者協同組合と同じ事務所にある「社会的企業支援センター」を訪問して、事務局長の文普京(ムンボギョン)さんより、この法律の制定にあたっての市民運動側の取り組みなどを伺いました。80年代の民主化運動を経て、市民運動が失業・貧困問題に活発に取り組んでいる韓国では、運動が国や政党に影響を与えるだけの力を持っているように感じます。また、97年の韓国の経済危機(IMF危機)による、大量のリストラ、貧困層の増大の問題は、政府や企業、市民にとって大きな課題であり、その克服のためにさまざまな試行錯誤が行われています。社会的企業育成法の施行は今年7月からなので、まだ細かい実施条件などは明らかではなく、市民運動側も様子を見ている段階のようですが、これまでの運動の中から生まれた事業のいくつかは、今後「社会的企業」制度に移行する可能性があり、ご紹介をいただいて事業所・現場を見学しました。
看病人事業と呼ばれる主に病院で患者の介助や世話をする仕事や、低所得者層の家の改修事業、水生植物の栽培事業などを訪問したのですが、特に印象に残ったのが、リサイクル事業でした。「未来資源」とよばれるこの事業体は、ソウルから車で1時間半ほどの清原郡にあり、かなり規模の大きな2つのリサイクル施設を持っています。第1工場では生活系の廃プラスチックリサイクル、第2工場では小型家電の再資源化事業を行っていて、特に小型家電のリサイクルは日本でも障害者の仕事おこしの分野として検討しているため、非常に参考になりました。韓国の自活後見機関では、2001年からこの分野に着目し、大手家電メーカー「三星(サムソン)」の協力も得て、小型家電(ドライヤー、掃除機、炊飯器、ラジカセなど)を手分解し、金属やプラスチックに細かく分別して資源として販売しています。韓国でもテレビ、冷蔵庫などの大型家電はメーカーの責任でリサイクルをする制度があるため、対象外の小型家電に着目したとのこと、国内ではこの事業を行う団体は他になく、環境分野での先進的な事業開発に取り組んでいるということでした。