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2006年06月30日

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障がいのある人と共に働く~家電リサイクル~

yachiyo.jpg 6月28日、労協センター事業団東関東事業本部の方々と、千葉県で家電リサイクル事業で障がいのある人たちを積極的に雇用している共進グループを訪問しました。
  家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)とは、2001年に施行された法律で、現在のところ一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)の4品目から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。
 基本的には、小売店を通じてメーカーが責任を持ってリサイクルすることが定められており、エアコン60%、テレビ55%、洗濯機50%、冷蔵庫50%というリサイクル率も決まっています。
 共進グループでは、家電4品目にパソコンを加えた5品目の処理を、小売店などを通さず一般家庭や事業所から直接受託し、手分解によってほとんどの品目で90%以上のリサイクル率(冷蔵庫は75%)を実現しています。

 今回は、共進グループの事業所のうち千葉県八千代市で小規模な事業を行っている(有)光和と、本埜村でより大きな規模の事業を行っている(有)本埜共進にお邪魔しました。
 先に訪問した光和では、石川さん(上の写真前列右端)にお話を伺いました。光和は開設して2年、現在障がい者が4名と健常者が3名で、月200台の家電を分解しています。元自動車修理工場だった場所で約100坪。家電リサイクルを事業としてやるには最小の単位だと言います。働いている人は、20歳から35歳と比較的若いのですが、別の事業所も含め7、8年の経験を持つベテランもいます。労働時間は1日5時間で週5日勤務が基本。沢山の仕事がこなせるベテランになると、給料が月12万円にもなっているそうです。手分解によって約40種類の鉄、非鉄金属、プラスチック等が再資源化され、リサイクル率も非常に高いということで、非常に社会的に有用な仕事に思えました。また、働く人たちにとっても、手順を覚えていけば、自分ひとりの力でやり遂げることの出来、また自分のペースで進められる仕事でもあり、向いている人にとっては最高の仕事ではないかと思いました。

motono.jpg 午後から訪問した(有)本埜共進は、98年から事業を開始しており、グループの家電リサイクル事業の中核になっている事業所です。若手の指導員鈴木さん(右の写真の後列左から2人目)からお話を伺いました。
 現在、家電リサイクル部門では、8人の障がいを持つ人と4人の健常者が働いています。事業所の規模としては、光和の数倍は大きく、家電の他にも事業所から出る産廃の中間処理も行っているとのこと。光和ではスペース的に難しい、廃プラスチックの破砕作業(破砕機によるチップ化)も行っていました。
 本埜共進では広いスペースを生かして、鶏の平飼い事業も行っており、成田のホテルの残菜を回収して飼料にして、生まれた卵をまたホテルに販売するという取り組みを行っていましたが、鳥インフルエンザのリスクもあり、6月末を持って終了するそうです。

sagyou7.jpg いずれにしても、社会的に意義があり、障害のある人々の就労を生み出すすぐれた取り組みだと思います。ただ、いずれにしても一般廃棄物の中間処理および収集運搬業の許可が必要であり、それらの許可を地元市町村から受けられるかという問題と、事業を行うのに必要な場所の確保(廃棄物処理法との関係で、住宅地などで許可を取るのはまず難しい)の問題があるでしょう。(左の写真は光和のWebサイトから借用)

 このような取り組みが日本中でどんどん広がると、障がいのある人の雇用とともにリサイクル者問題にももっと行政や市民の関心が高まるのではないでしょうか。

(菊地)
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第16回総会&記念シンポが行われました

06AGM-01.jpg6月24日(土)、明治大学駿河台校舎研究棟2F第9会議室にて、協同総合研究所第16回総会と記念シンポジウム「協同労働の協同組合法~その歴史的意義と現代的意味~」が約50名の会員が参加して開かれました。

 総会では、中川雄一郎理事長(明治大学教授)の開会の挨拶に続いて、日本労協連の古村専務より、今秋に兵庫で予定されている協同集会への参加の呼びかけ、また、労協の発展の中で、介護や子育て、若者支援などさまざまな分野で教育と研究が求められており、協同総研の役割に期待する旨のご挨拶をいただきました。
 
 昨年度の活動報告では、一年間の研究やシンポジウム、センター事業団と共同で行った調査、イギリスとイタリアへの海外調査、台北や上海で行われた国際会議での発表などについて報告があり、新年度の活動方針では、協同労働への社会的関心が高まり、指定管理者制度など労協の事業・運動がこれまでの枠を超え大きく飛躍する中で、実践者・研究者・専門家が協同する組織として、大学と連携しての講座の支援、定期的な学習会を地域レベルで開催するなど協同労働で働く人々の学びや成長を支援することを協同総研の中心課題としていくことを提起されました。
 最後に、欠員補充として前神奈川県職員の横井博さんの理事就任を岡安専務が提案し、すべての議案が承認されました。

06AGM-02.jpg 総会後の記念シンポジウムでは、まず協同総研の島村主任研究員が「協同労働の協同組合法~その歴史的意義と現代的意味~」と題して基調報告を行いました。報告では、日本の法人制度にも大きな影響を与えた19世紀のドイツにおける法人法制の研究から、一般社団(結社)法の原則は協同組合法によって導かれたことが指摘され、これまでの協同組合法制における共益・非営利といった概念を超えて、結社=アソシエーションの時代にふさわしい、社会連帯の原理を織り込んだ法制の必要性が提起されました。
 これに対し、コメンテーターの法政大学大学院の渡辺光子さんからは、現在の公益法人制度改革についての評価をした上で、地域コミュニティやアソシエーションの課題にどう対応するかが法制度にも求められているコメントがあり、また協同労働法制運動の今後の方向性について質問がありました。また、同じくコメンテーターの協同総研顧問の石見尚さんは、公務員制度、公益法人制度、会社法などの改革の中で、特にコミュニケーションの手段としての労働のあり方が問われなければならないと発言されました。
 会場からの活発な質疑もあり、法制化運動の新たな段階に向け、充実したシンポジウムとなりました。

2006年06月21日

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2006年度版国民生活白書でワーカーズコープが紹介されました

graph1.gif6月20日に発表された2006年度版「国民生活白書」の中で、「資本と労働を持ち寄る新しい働き方」というコラムでワーカーズコープ、ワーカーズコレクティブの働き方や実勢が紹介されています。

国民生活白書は、内閣府が毎年1回まとめて発表する、国民生活全般についての動きや変化を分析した年次報告書で、特に、消費者物価指数、家計調査、給与統計、雇用統計などを中心に、生活のあらゆる側面から国民生活の実態を解明しているものです。毎年テーマを決めて、国民生活についてある切り口から特集を組んだ雑誌みたいなイメージですね。

ちなみに、これまでのテーマは、

  • 2005年度版「子育て世代の意識と生活」
  • 2004年度版「人のつながりが変える暮らしと地域-新しい「公共」への道」
  • 2003年度版「デフレと生活-若年フリーターの現在」
ということで、社会的な関心が反映されているものです。

で、今年のテーマは「多様な可能性に挑める社会に向けて」です。「多様な可能性に挑める社会」とは、「第一は、挑戦の機会が広く開かれている社会、第二は、多様な選択肢が選べる社会、第三は、希望が実現しなくても再挑戦できる社会」と猪口少子化・男女共同参画担当相は白書の冒頭で述べています。(「再挑戦」と聞くと某党総裁候補を思い浮かべますが)いずれにしろより公平・透明な市場ルールの下で、競争力を高めていくことが個々人に求められているということを強く示しているように思います。

graph2.gif白書では主に適職を探す若年者、育児期の女性、人生を再設計しようとする高齢者をターゲットに、職業生活、家庭生活、地域活動それぞれの現状と障壁について分析が行われていますが、ワーカーズコープについてのコラムは[第3章 高齢者の人生の再設計]の(第2節 高齢者の就業:意識と現実)の中に収められています。以前、日経新聞の記事で取り上げられたのと同じように、高齢期の働き方のひとつの可能性として示されていると言えます。

白書の中では、「北海道のあるワーカーズ・コープ」として、ワーカーズコープ札幌が紹介されていますが、特にワーカーズ・コープは男性の割合も高く、「その自由な働き方は大きな可能性を持っているのではないだろうか。」と結ばれています。

また、新聞等での報道ですが、共同通信の配信で東京新聞等で以下の記事が掲載されています。

社会貢献しながら収入も 退職者が協同組合活用
 内閣府が20日公表した2006年版国民生活白書は、高齢者が退職後も働き続けるための新たな形として、仲間同士が資金と労働力を持ち寄る労働者協同組合(ワーカーズコープ)を取り上げた。社会貢献をしながら収入も得る働き方で、参加者が増加。団塊世代の大量退職を控え、白書は「地域社会活性化の担い手としても期待される」としている。

 白書などによると、労働者協同組合のうち、中高年層などの仕事づくりを目指した事業団から発展したワーカーズコープは2005年度で76団体あり、計4万人以上が参加。一般企業の売上高に当たる事業高も約215億円と前年度より2・4%伸び、特に介護・福祉関連が増えた。
(共同) (2006年06月20日 18時18分)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006062001002437.html


2006年06月19日

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シンポ『「協同労働の協同組合」法~その歴史的意義と現代的意味~』

 協同総研では、6月24日(土)の会員総会終了後、記念シンポジウムとして以下の研究会を開催いたします。
 どなたでもご参加いただけますので、ぜひおいでください。

シンポジウム『「協同労働の協同組合」法~その歴史的意義と現代的意味~』

  • 日時:2006年6月24日(土)14:30~17:30
  • 会場:明治大学駿河台校舎研究棟2F第9会議室(地図
  • お問い合わせ:協同総合研究所 kyodoken(at)jicr.org ((at)を@に変えてください)
  • 報告:島村 博(協同総研主任研究員/協同労働法制化市民会議事務局長)
    コメント:田畑 稔(大阪経済大学人間科学部教授)、渡辺光子(法政大学大学院、前宮城県生活環境部次長)ほか
 ワーカーズコープ(ワーカーズコレクティブ)の働き方に対する社会的共感が広がる一方で、それを保障する法制上の仕組みはいまだ確立していません。
 一方で、明治以来の日本の法人法制が大きく改革される中、協同労働の協同組合法制は排除されたままになっています。
 近代社会の成立過程において、資本との契約の下での賃労働という関係が永続化し、労働疎外が拡大していく中で、結合した資本に対する自衛運動として発展してきたのが協同組合運動です。
 ワーカーズコープ(=「協同労働の協同組合」)の法制定運動の中心を担ってきた島村博さんより、ドイツにおける協同組合法の制定過程についての研究から、近代社会の設計と協同組合の役割、および現代社会における意味についてご提起いただき、協同労働のあり方ならびに今後の課題・使命について討議します。

2006年06月07日

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ICAのWeb雑誌に日本の法制化運動が紹介されました

今年3月16日に明治大学リバティーホールで行われた『「協同労働の協同組合」法制化を求める市民のつどい』についての記事がICA(国際協同組合同盟)のWeb雑誌『ICA Digest』(No.48)に掲載されました。


労働者協同組合の法制化を要求する日本の人びと

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 3月16日東京の明治大学で、「協同労働の協同組合」法制化を求める前例のない集会が持たれました。日本は労働者協同組合に関する法制度がない数少ない国の1つであり、そのことは、日本の労働者協同組合運動の発展にとって障害となっています。

 2000年、「協同労働の協同組合」法制化をめざす市民会議が設立。それ以来、日本労働者協同組合連合会は、他の組織と共に労働者協同組合運動を促進し、ILOの193号勧告の実現に努めてきました。

 316集会は、協同組合、労働組合、女性のグループ、障害者、学生や一般の参加者を感激させました。集会の基調報告は、ICA会長のイヴァノ・バルベリーニ氏。他のスピーカーは、労働者福祉中央協議会会長の笹森清氏、京都大学池上惇名誉教授、ILO駐日事務所、駐日代表の長谷川真一氏です。

 バルベリーニ会長は、協同組合が発展するため、競争相手と同一の条件のもとで競争することができる適切な法制をもつことを強調。集会では適切な法制化のため、引き続き政府へのロビー活動を行う必要性を確認しました。


( "ICA Digest No. 48, April 2006":pdfファイル )

英文↓↓

Japanese call for worker co-operative legislation

An unprecedented meeting calling for worker co-operative legislation in Japan was held on March 16 at Meiji University in Tokyo.

Japan is one of the few countries to have no worker cooperative law. Without legislation, it is difficult to promote worker co-operative movements. The Citizen Forum on Worker Co-operative Legislation (CFWCL) was established in November 2000.

Since then, Japan Workers’ Co-operative Union has worked with other organizations to promote worker coop law and to undertake the ILO 193 Recommendation.

The meeting attracted over 300 people from co-ops, trade unions, women’s groups, organisations for disabled people, students and the general public. ICA President, Ivano Barberini, addressed the gathering. Other speakers included Kiyoshi Sasamori, President of the National Council of Worker’s Welfare, Prof. Jun Ikegami, Professor emeritus at Kyoto University, and Mr. Shnichi Hasegawa,
director of the ILO in Tokyo.

Mr. Barberini emphasised the need for cooperatives to have appropriate legislation to develop and to be able to compete with the same arsenal as their competitors.

The meeting confirmed the need to continue to lobby government for appropriate legislation.

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