「協同労働の協同組合」法制化を求める市民のつどい
3月16日(土)午後5時半から、明治大学駿河台校舎リバティーホールにおいて、『「協同労働の協同組合」法制化を求める市民のつどい』が約300人の参加者の下、開催されました。この集会は「協同労働の協同組合」(=ワーカーズコープ)を位置づける法律を日本で制定することを目指す「協同労働法制化市民会議(永戸祐三会長代行)」が主催したものです。この集会はまた、世界中で約100カ国、200以上の組織と約8億人にものぼる組合員を組織している国際組織(ICA:国際協同組合同盟)の会長、I・バルベリーニさんを迎えて、世界中でのワーカーズコープの歴史と現状、可能性を学び、日本における法制化の促進を内外にアピールすることを目的として企画されました。
最初に、日本におけるワーカーズコープや同様の働き方(=協同労働)を目指す現場からの発言がありました。まず、生協の組合員が中心となってつくられた、ワーカーズ・コレクティブのネットワーク組織であるワーカーズ・コレクティブ・ネットワーク・ジャパン(WNJ)代表の藤木千夏さんから活動報告と、WNJの「ワーカーズ・コレクティブ法」制定の運動についての紹介がありました。藤木さんは、現在進んでいる国の公益法人制度改革が、結局ワーカーズが望む法制にはなりえなかったと述べ、今後「法制化について共に考えていきましょう」と締めくくられました。
次に、障害のある人もない人も共に働く場づくりの運動を進めている「共同連」の斎藤縣三事務局長より発言がありました。斎藤さんは、これまで日本の障害者福祉が、「働く」ことを意味づけて来なかった歴史を振り返り、今回成立した障害者自立支援法では、障害者の就労がよりいい加減な扱いになっていることを批判。改めて、障害者が社会の中で働くための法制化に参加していきたいと述べられました。
現場報告の最後は、「労協センター事業団」の田中羊子専務から、失業者の運動から始まった労働者協同組合が、介護保険制度を契機に福祉サービスの分野に広がり、今、公共分野の民営化が進む中でそれを市民化する担い手として発展してきている、と発言がありました。
また、センター事業団事務局の相良孝雄さんからは、指定管理者などで広がる児童館の仕事の中で、若い組合員が協同労働を実践しているとの報告がありました。
第2部は、バルベリーニICA会長より、「世界の労働者協同組合―文化的基礎、現状と趨勢―」と題して報告があり、協同組合の歴史とその中でのワーカーズコープの発展、そして特に近年イタリアや欧州各国で広がっている「社会的協同組合」の事例が紹介されました。会長は特に、協同組合企業のアイデンティティが「資本の集中によってではなく、ニーズの集中によって生まれ、働く場の最大限の保障など、利潤以外の利益を追求する」と強調されました。
報告を受け、「連合」前会長で現在労働者福祉中央協議会会長の笹森清さんはコメントとして、数字の現実として日本の会社270万社の内、労働組合がある会社は6.5万社にとどまり、97%の会社では労働組合はない実体の中で、労働者がいかに連携を取れるか、これまでのグループやイデオロギーを超えて取り組まなければならないと話され、戦後60年が過ぎ、高齢者、女性、障害者、新卒者、移民、現役の6つの労働をどうしていくか、均等待遇など、働くことを通じた新しい社会システムをつくろうと呼びかけました。
また、京都大学名誉教授の池上惇さんからは、経済学の立場から創造性のある労働とそれを担う労働者の意味づけを行い、協同労働の果たす役割の積極的な評価のコメントがありました。
最後に、バルベリーニ会長は、イタリアの経験にも触れながら、研究者や労働組合、さまざまな協同組合が連携して、人間らしく生きられる社会をいかにつくるか、本物の経済をいかにつくるかが課題であり、ICAと連携をとりながら法制化を推進してほしいと提起され、集会を締めくくりました。
2000年11月に設立された「法制化市民会議」は翌01年6月に最初の大きな市民集会を開催し、その時にもWNJや共同連の方にご報告を頂き、利潤追求ではなく協同で働くことを目的とする協同組合の法律を一刻も早く制定しようと呼びかけました。以来5年が経過しましたが、日本の中では、「協同労働」を求める声は、市民社会の中でまだ大きなものとなっておらず、法制化運動はまだ道半ばです。むしろ日本の働く現場はより競争を強いられ、個人が分断される方向に進んでいます。ただ、この日のバルベリーニ会長の報告にもあったように、世界的に見れば、G8諸国の中でも、ワーカーズコープの法制がないのは日本のみであり、欧州でも南米でも、北米でさえも利潤追求のみを目的とした経済のあり方への批判と対案としての協同組合企業や協同の働き方が広く存在しています。久しぶりに一堂に会した各団体の方々と共に、1日も早く「協同労働」の法制化を実現したいとの思いを新たにした集会でした。(菊地)