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2006年08月17日

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ワーカーズコープアスランの総会報告

 8月1日の夜、ワーカーズコープ・アスランの第7回総会が千代田区和泉橋区民館で行われました。

 アスランは、2000年8月に、5年半にわたる編集プロダクションの争議を経て、その解決後にワーカーズコープとして立ち上がりました(詳しくは『協同の發見』2000年10月号No.101、「はじめまして。編集ワーカーズコープ・アスランを立ち上げました」参照)。

 アスランは設立総会において以下の4つの目的を掲げました。

  1. 解雇争議を支援するため、被解雇者の当面の就労の場、または協同での仕事の創出を目指します。
  2. 出版関連のフリーランスのネットワーク化による仕事の創出を目指すとともに、納得できる仕事を追求します。
  3. 失業者の雇用の創出を目指します。行政に失業対策・雇用促進事業などの実施を要請します。
  4. 組合員の相互扶助の精神に基づき、協同して事業を行い、組合員の経済的地位の向上を図ります。
 以後、6年にわたり日本では他に例のない、フリーランスのネットワークによる出版・編集のワーカーズコープとして、新しい独自の道のりを歩んできました。当初の目論見が外れて、思ったように仕事や利益の確保が難しく、設立から2、3年は本当に厳しい経営を余儀なくされましたが、ここ数年、労働運動や協同組合運動との提携も進み始め、ようやく安定した事業の見通しが立ち、事業の黒字化に一定のメドも立つようになってきています。特に若手の編集者の育成も開始し、将来に向けて持続的に発展しうる事業体としての方向性も打ち出してきています。

 今年の総会で討議された大きなテーマのひとつは、「常勤組合員とフリーランス組合員のバランス」の問題でした。設立目的にもあるように、アスランは、出版業界の中でつねに不安定な立場に置かれるフリーランスのライター、デザイナー、編集者、イラストレーターなどを組合員として組織し、実際に仕事を発注しながら協同で新しい仕事おこしも行い、さらにはその地位向上のための活動も行うことをめざしています。

 ただ、事業としてみた場合、全体の仕事量の内、一定の管理費を取ってフリーランス組合員に発注する部分をどの程度にするかは非常に難しい判断になります。特に現状の管理費の設定でいくと、これ以上フリーランス組合員への発注部分を増やすと、常勤組合員の負担も増え、経営的にも厳しいため、来期は仕事量全体も含めやや抑制することが方針として提起されました。

 それに対し、総会に出席した何人かのフリーランス組合員からは、フリーランスの取り分を減らしてでも仕事量を増やし、アスランが発展できる条件をつくっていく方が重要ではないか、という意見から出され、個々の利害ということより、アスランという存在が出版業界の中で大切なのだという認識が示されました。

 これまで理事会の議論でもなかなか結論が出なかった問題なのですが、組合員と直接意見交換をすることでひとつの方向性が出てきたのではないかと思います。今期の総会ではフリーランス組合員から1名の理事を選出し、さらに連携を強めていくことが確認されました。(菊地も協同総研からの理事としてもう1期お手伝いすることになりました。)

 総会後の懇談会で、何人かの組合員の方とお話をさせていただきましたが、アスランには専門的なテーマを持って著作を出されているライターや編集者の組合員がたくさんいます。彼ら彼女らとの連携をより強めていく中で、新しいワーカーズコープのモデルを切り拓いていくことができるのではないか、と強く感じました。

2006年08月09日

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スペイン協同組合法75周年

kubrickheader.jpgスペインでは1931年、スペイン共和国憲法制定会議により最初の協同組合法が制定されました。今年は協同組合法制定75周年にあたり、そのWebサイトが作られています(スペイン語のみ)。

日本労協連は、以前からマドリード労協連(UCMTA)と交流を続けていますが、今年も日本労協連/センター事業団の総会・総代会へのメッセージをマドリードからいただきました(『協同の發見』2006年7月、No.167に掲載)。マドリード労協連理事長のルベン・ビジャさんはそのメッセージのなかで協同組合法75周年について触れ、スペインの協同組合運動と法制化の闘いの歴史について述べておられます。

今回、『協同の發見』に載せたメッセージの日本語訳が現地の協同組合法75周年Webサイトに掲載されました。

Mensaje a Jigyodan 2006
(version en Japones)をクリックするとpdfファイルが見られます。

なお、『協同の發見』に掲載された全文は以下の通りです。

「日本労協連第27回総会・センター事業団第21回総代会へのUCMTA(マドリッド労働者協同組合連合会)からの挨拶」

 マドリッド労働者協同組合連合会から、連合会と事業団の年次総会への心からのお祝いを申しあげます。

 私たちは地方自治体により委託された事業の改善、人びとの能力を高めること、事業推進、経営改善、協同労働の促進、協同労働の法制化を推し進める労働者協同組合の連帯のための調査、社会的連帯活動の強化という課題に応える本総会・総代会の成功を十分確信しています。

 私たちは今日のスペインにおける協同組合活動を簡潔にご紹介したいと思います。

 組合員の皆さん、
 75年前、スペイン共和国の憲法制定会議によりスペインで最初の協同組合法が公布されました。

 国民の主権を体現する市民の代議員達は、自由の価値、聖俗の分離、両性の間での平等、すべての人びとのための教育、市民的徳、正直、連邦制度、平和や人権に対する敬意、労働者の福祉への責務、社会的権利や公益に献身してきました。その後、そうした価値は共和国憲法に定められ、協同組合も社会に貢献することができるというあらゆることがらを十分に承認するものでありました。

 各州や地方の団体を通した協同組合運動は、また誕生したばかりの共和国が代表する価値との共存に言及し、そこで最上の代表たちとともに価値の実現に献身してきました。新しい法律に定められたICA原則は、それの主な証明だったのです。

 協同組合法は、即興的に作られたのではなく、社会改革研究所や内部のリベラルな改革者たちと共に、協同組合組織とその代表たちによる系統的な研究の成果でした。彼らは、事前に賛同を得ている原文を作りました。それは他国における協同組合の経験、改良、発展を表したものです。

 法律は以前に起案されていましたが、しかし共和国において当該の協同組合の要件を法律文書に変更することを余儀なくされました。更に軍事クデーターとその後起こった内乱の結果、独裁政権により最終的に廃止されましたが、それはカタルニアとエウスカディ州での協同組合法制度に参照されていました。

 法律が廃止され、協同組合財産が没収され、協同組合組合員やその代表の多くのメンバーの投獄、追放、処刑され、協同組合組織とセクターは排除され、統合された組織(シンディカト・バーティカル)に吸収されました。スペイン独裁政権が行ったのはこうしたことなのです。それにも係わらず、反体制のレジスタンス活動は、協同組合精神を維持し育成し、自由のための闘いを組織しました。

 1978年、民主主義復興の後、すべての他のセクタ同様、協同組合は民主主義的原則にそって最終的に再組織し、ICA内でその地位を回復するようになりました。ICAは常にマドリッド労協を支援し、また地域的、全国的ベースでスペイン共和国において制定された最初の法律の価値と原則をもりこんだ法制化の発展を促したのです。

 今日、地域と全国ベースの協同組合組織の代表として、私たちは男女の協同組合員にスペインで最初の協同組合法を草案し、承認し、それを維持し、困難な時代を通してその価値を守り続けた人びとに対し、ふれあいや感謝の思いをもつように呼びかけています。協同組合の新しい組合員教育において必須の文献としなければなりません。わが国における民主主義への主要な貢献と同様、私たちは自身を協同組合原則と価値の冒頭部分に掲げられているその忠実な信奉者として関わっています。

 協同組合の同じ原則と価値を共に分かち合いましょう。

 がんばろう。

マドリッド労働者協同組合連合会
理事長 ルーベン・ビジャ

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障害のある人の就労・生活支援をめざして―自立支援法下の新たな状況を見据えて

日本労協連では、8月31日(木)、9月1日(金)に、標記のタイトルの講演・学習と協同労働のプロジェクト会議を開催します。基本的には組織内部の会議ですが、外部の方のご参加も可能だと思いますので、関心のある方はぜひどうぞ。

  • 日時:8月31日(木)午後3時~6時
       /9月1日(金)午前10時~午後4時

  • 会場:豊島区南大塚・東京労働会館7階「ラパスホール」
  • 日程:
    [8月31日]
    • 佐藤進氏(埼玉県立大学教授)
       講演「21世紀の障害者福祉:市民の社会連帯と新しい公共支援の連携」
    • 伊原和人氏(厚生労働省障害保健福祉部企画官)
       講演「自立支援法の就労・生活支援事業と“協同労働”への期待」

    [9月1日]
    • 増田一世氏(さいたま市・やどかりの里「やどかり情報館」館長)
       講演「障害のある人の労働支援:やどかりの里の取り組みと自立支援法下の挑戦」
    • 報告と討議:地域労協・センター事業団における障害者支援の取り組みと今後の事業・運動展開

    (講演はすべて「仮題」です)
  • 申し込み:日本労協連 Tel 03-5978-2190

2006年08月01日

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労働者たちの“企業再生”

050123_l02.jpg 『労働者たちの“企業再生”』
 先日の記事でご紹介した、南米アルゼンチンの労働者協同組合による回復工場について、NHK-BSで2005年1月に放映されたドキュメンタリーです。
 番組では、貧困地域に育ったルイス・カーロ弁護士が破綻した企業を労働者協同組合として再起させるために奮闘している様子が描かれています。番組冒頭のシーンは、ある家電工場の操業再開のセレモニーですが、そこにはICA(国際協同組合同盟)会長のバルベリーニ氏の姿も見られ、国際的な協同組合運動としても大きく位置付けられているように思います。
 詳しい内容は、こちらのブログ(「社会派ドキュメンタリー番組」)が紹介してくださっているので、ご参照ください。
 アルゼンチンは、2001年の経済破綻を前後して、失業者を中心とするさまざまな運動が発展してきていますが、これらの「回復工場」運動も、カーロ氏のMNFRと、左派でより大きな組織を持つMNERという2つのナショナルセンターを持ち、占拠・自主生産闘争と法廷闘争を中心に拡大しているようです。
 いずれにしても、利潤ではなく自分や仲間、家族が生きていくために団結し連帯するこの運動は、協同組合のひとつの原点を見るような気がします。

 8月号の『協同の発見』で、この運動に関する記事の翻訳を掲載する予定です。
 →すみません。紙面の都合で9月号に延期しました。

 番組のビデオ・DVDがありますので、ご覧になりたい方は協同総研までご連絡ください(約20分です)。

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