« イタリア視察ツアー現地報告 その3 | メイン | イタリア視察ツアー現地報告 その5 »

a000029

イタリア視察ツアー現地報告 その4

【2005年10月20日】

piazza grande0.jpg 朝から雨模様の中、ボローニャ市内で失業者支援の活動をするピアッツァ・グランデ(Associazione Amici di Piazza Grande Onlus)を訪問しました。ピアッツァ・グランデは、ノンプロフィットのアソシエーション(NPO)で、94年にホームレスのグループによって設立されました。市のバスの倉庫を提供され活動してきましたが、2003年に火災になり、事務所を高架下の場所に移したため、手狭となり、現在一部の活動を制限しているということで、2年以内に新しい建物を建てて移転する予定だそうです。
piazza grande1.jpg 活動の柱の一つは、ホームレス販売する月間新聞で、ホームレスの状況を伝える記事や、ホームレスに対する食事や宿泊の提供情報などが載っており、約6000部が発行されています。ホームレスが一部を0.5ユーロで買い取り最低1ユーロ以上で売ることになっています。
piazza grande5.jpg また、移動サービスとして、週に4日、街の中を車で回ってホームレスに飲み物や食べ物を配る活動を行っています。提供する食品の多くは、フードバンクのようなものがあり、食品点やスーパーが提供したもので、イモラにあるセンターまで取りに行っています。 その他に、市民から提供された古着のリサイクル(主にホームレスに配る)すると同時に市の職業訓練の一環として裁縫を学んでいる人たちもいます。放置自転車などを提供されリサイクルして市民に販売する事業なども行っています。移動サービスでは、たんにサービスを提供するだけでなく、職業訓練の情報など人々と社会をつなげる活動を重視しています。

piazza grande6.jpg 2000年にはファーレ・モンデ(Fare Monde)という家具のリサイクルや家の内装を行う社会的協同組合がこのピアッツァ・グランデから生まれています。

 その他の重要な事業として、「路上の弁護士」と言われる、ホームレスへの法的権利擁護活動があります。民事的・刑事的・行政的な問題を抱える人が多いので、ボランティアの法律化が支援に当たっています。離婚の問題や借金の問題などのため、公的なサービスを受けられない状態にある人たちに対しての支援が中心で、重大犯罪にかかわるような人はごく少数だそうです。

 お話をしていただいたアルベルト・ベンキモル(Alberto Benchimol)さんは、民間企業でマネージャーとして働いていたそうですが、キャピタリズムの限界を感じてこの活動に参加したとのことでした。

piazza grande4.jpg ちなみに、このピアッツァ・グランデから生まれた社会的協同組合は前述のファーレ・モンデも含めて2つあるそうですが、いずれもレガなどの連合会には加盟していないそうです。
 しかし、有給スタッフだけで10人を数え、数多くのボランティアが関わり、ボローニャ市では非常によく知られた団体のようでした。ボローニャの街の目抜き通りで、新聞を売るピアッツァ・グランデのメンバーにも出会いました。

 この日はタクシーで訪問したのですが、運転手もよくわからないような場所で、ほとんど放置された(ボロい)市の建物を利用して活動しており、昔の失対事業の現場を髣髴とさせるものがありました。

 午後からは、ボローニャから車で40~50分のところにある、フェラーリとパバロッティの街、モデナ市で行われている、レガの「企業の社会的責任」に関する国際会議に出席しました。と言っても、ほんの1時間ほどの参加で、全体的な会議の中身はよくわかりませんでした。
 ただ、地元モデナ市のアリアンテという社会的協同組合による「社会的バランスシート」についてのプレゼンテーションは興味深いものでした。経済的な決算とともに社会的な決算を行うということで、立派な報告書ができており、設立以来10年の歴史の中で障害を持つ組合員がどのくらい働いてきたか、などさまざまな指標を用いて、社会的企業の活動を評価するものです。
 自治体の入札参加の資格や、入札時における質の評価などと同様に、貨幣で計れない価値をどのように認めていくか、というイタリアの人々の思想を感じました。

会議から抜けて、レガのアントニオ・フィネッリさんの案内で彼の地元モデナ市のドゥオーモ(大聖堂)、市庁舎(フィネッリさんは市の仕事もしていたので、市役所内にも多くの知り合いがいます)を見学しました。13世紀の建物をそのまま使っている市庁舎では、ブルータスから三頭政治に関わる市の歴史的な壁画や、自治都市間の争いの中で、ボローニャ市から奪った水を汲むバケツ(厳重に保管されている)に関わる逸話などの説明を受けました。
 帰りは、愉快な運転手さんの話を聞きながら、ボローニャへ戻り、中華料理を食べました。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://jicr.roukyou.gr.jp/cgi/mt-tb.cgi/30

コメント

住友さん、こんにちは。
お返事遅くなってすみません。

報告書は(時期は未定ですが)つくる予定です。
それ以前に『協同の發見』誌にできるだけ掲載しようと考えています。

菊地

初めて書き込みさせていただきます。
大学でイタリアを学んでいる者です。
今イタリアの社会協同組合について資料を集めているのですが、今回のツアーの報告書など発行される予定はあるのでしょうか?