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2005年10月19日

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イタリア視察ツアー現地報告 その2

【2005年10月18日(火)】
regione_emilia_romagna.jpg 午前中は、エミリア・ロマーニャ州保健・福祉参事局、社会サービス計画・社会/保健サービス開発部門の社会的経済と第3セクター部長のオリアンナ・モンティ(Orianna Monti)さんのお話を伺いました。

 モンティさんは、「イタリアでは分権化が進む中で、試験的ではあるが第3セクターを福祉の主体者として受け入れていく方向にある。」とした上で、「エミリア・ロマーニャ州ではそのような国の方向性が出る以前から、協同組合の“ゆりかご”として発展し、すでに1970年代には社会的協同組合が誕生し(現在は約600)、ハンディを負った主体者を労働に受け入れ、またケアを提供してきた。これは協同組合が生み出した価値・文化であり、その経験が評価され、70~80年代には福祉サービスが公から社会的協同組合に委託されるようになっていった。」と話されました。
Orianna_Monti.jpg そのような行政と社会的協同組合の連携の中で、「91年の国法381号(社会的協同組合法)の制定の後、94年に州法7号によって規定を作って調整をしてきた。サービスの委託については、入札への参加資格を州に登録をするが、その際、サービスに必要な資格者や民主的な運営、労働協約などを審査する。また、入札に当たっては、コストとサービスの質を50:50の割合で評価することが州法で定められている。」と言います。
 また、最近では、入札によるサービスの委託だけではない新しい関係を模索しており、州の福祉政策の計画立案の段階から社会的協同組合など第3セクターの人々が参加する仕組みが始まっているとのことでした。
 サービスの質を担保するもののひとつとして、働く組合員(従事組合員)の保護(労働協約)を最低の基準としており、A型・B型の社会的協同組合ともそれが求められるということが強調されていました。また、サービスを委託しても、住民に対しての最終的な福祉の責任は、あくまでも行政にあるということも繰り返されていました。
 現在のイタリアの経済状況の中で、エミリア・ロマーニャ州でも予算の削減が進んでいます。しかし、早くから高い水準の福祉を提供してきたため、市民がすでにそれを“文化”と捉えており、後退させることは難しいとのことでした。また、女性が働き続ける地域性の中で、少子化が進み高い高齢化率を示しており、高齢者向けのサービスが拡大しているとのことでした。

 午後は、実際に福祉サービスを提供するボローニャ市(コムーネ)の「人へのサービス部長」ラファエレ・トンバ(Raffaele Tomba)さんと同僚のマーラ・ロージ(Mara Rosi)さんにお話を伺いました。

Raffaele_Tomba.jpg ボローニャ市は人口37万人で65歳以上の高齢者が人口の1/3を占め、世界的に見ても高い高齢化率となっています。99年以降、出生率が少しずつ上がっているが高齢化に歯止めがかかっていないなかで、東欧を中心に年間1万人の移民(外国人労働者?)が入ってきているそうです。そのため、市の福祉の対象としては、子供・高齢者・移民が中心になります。
 子供向けのサービスへの社会的協同組合の関与は、学校が終わった後、困難を抱える子供に対してエデュケーターという資格者が支援を行う活動などが中心だそうですが、数年前からは市の直営のみだった保育園を、社会的協同組合が財源を出して2つ設置しており、市は20年の運営委託(利用料も市が負担)をしているそうです。
 高齢者の分野では1)訪問ケア、2)デイセンター、3)施設ケアの3つのカテゴリーがあり、1)と2)については、社会的協同組合が100%担っており、3)については40箇所のうち2箇所を担っているそうです。いずれも高齢化が進みサービス需要が急激に増大する中で、社会的協同組合に委託するようになったとのことでした。
bologna.jpg 委託に当たっては、基本的にすべて入札で行っているが、やはり労働協約を重視しており場合によっては質の部分を50%以上の割合で見ることもあるそうです。また福祉計画については、3年ごとに見直し、その際必ず市・社会的協同組合・労働組合の3者の協議(テーブル)を設けているそうです。
 増加する移民については、移民の子供たちが学校に行けるよう、文化メディエーターという人が子供とその家族の支援を行っているそうですが、実際には移民送り出し組織があったりして、子供だけを送り込んでくることもあり、簡単ではないとのことでした。また、特に高齢化の中でのニーズがあり、家庭での家政婦として働く移民女性が多くなっているが、ヤミ労働となっている場合も増えているそうです。

 行政の担当者から話を聞く機会があったのは非常に貴重なことでした。エミリア・ロマーニャ州では、左派が一貫して政権を握っており(くしくも中道左派のリーダーとしてプロディ氏が選出されたとのニュースを聞きましたが)、イタリア全体で見ても、社会的協同組合を中心とする第3セクターとの関係には長い歴史があり、まさに“文化”となっていることを感じました。一方で、財政難、分権化、高齢化の進行の中で、新しい福祉サービスのあり方を模索していることも感じました。

 明日は、レガのエミリア・ロマーニャ州本部を訪問します。
 朝晩はかなり冷え込み、こちらの人の服装も冬支度です。

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