電気湯で開催中の「働く」ことをテーマにした展示についてお知らせさせていただきます。
この展示は、協同総研が編集に関わった『わたしからはじまるわたしたちを育む働き方ーつながり、編み出す、協同労働の生きる力』(コトノネ出版)の発刊を記念して行われます。
今月28日(金)まで行われておりますので、ぜひ銭湯に温まりに足を運んでいただけたらと思います。

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「働く」ことから考える展
実施日:2025年2月2日(日)~2月28日(金)の15~24時まで(土曜定休)
会 場:電気湯(東京都墨田区京島3-10-10)
入浴には550円いただきます。

ステートメント:
「働く」ことから考える
 
「働く」とは、なんだろうか。いい大学を出て、良い企業に就職したって、僕の心を満たすことはなかっただろう。どれだけ大きな規模の仕事をしても、親しくもない友人に「こんだけ大きな仕事をしてるんだぜ」と自慢げに語って、寂しく夜道を歩くことになるんだろう。そんなことを高校の頃から考えているものだから、大学生の終わり頃には、「就活」に自分の夢を載せることができる友人たちを妬ましい目で見ていた。「働く」ことと「夢に向かう」ことは全く別のはずなのに、現実的な将来に向かってうまく折り合いをつけることができる彼らを、卑しくも寂しい目で見ていた。

 生きるための(ご飯を食べるための)仕事と人生を賭けた仕事のことを、ご飯と人生になぞらえて、ライスワーク:ライフワーク、と区別するらしい。あらゆるサービスが押し付けてくる「好きなことを仕事にする」「豊かに働く」という要求の裏側には、そうやって現実と夢を区別することに抗う意思そのものを市場化せんとする大きな気配が漂っている。

 「働く」とは、なんだろうか。スキマバイトやスポットワークといった流行の中で、「自分らしく自由に働きたい」という「働く」ことへの根源的な気持ちを、交換可能な単位(≒お金、ポイント、注目)へと換えていってしまう産業構造の誕生を我々は目撃している。意思を含む自分の全てが交換されていくこの生き方は、果たして「人生の可能性を広げる」のか。自分自身を、交換可能なものに押し込められない働き方は、果たして存在するのだろうか。

 昨年12月、協同労働という働き方をめぐる5つの対談を収録した書籍『わたしからはじまるわたしたちを育む働き方ーつながり、編み出す、協同労働の生きる力』(コトノネ出版)が出版された。正社員、派遣、スキマバイト、といった「働き方」の大きな潮流に、「協同労働」という言葉が新たに加わる。私たちの日常生活にまで入り込んでくる「タイパ」とか「コスパ」という価値観の逆をゆく、果てしない対話を通して事業を作っていくこの働き方は、「人生の可能性を広げる」働き方となりうるのか。

 「働く」とは、なんだろうか。どうにも換えがたいこの自分にとっての、なににも換えられない「働く」を、いま考える。

2025年2月2日 電気湯

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2025/1/25に開催した「働く」を考えるトークイベントの様子