2023年11月3日、国連総会は2025年を、2012年に続き2回目の「国際協同組合年」とすることを宣言しました。

この宣言は、「社会開発における協同組合」と題する国連決議のなかで行なわれたもので、協同組合の取り組みをさらに広げ進めるため、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた協同組合の実践と、社会や経済の発展への協同組合の貢献に対する認知を高めるために、国連、各国政府、協同組合が、この機会を活用することを求めています。

宣言を受け、日本労働者協同組合連合会(ワーカーズコープ連合会)古村伸宏理事長は以下の声明を発表しました。
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IYC2025を「協同のチャレンジ」の契機に

 国連総会は、「社会開発における協同組合」と題する決議のなかで、2012年に続き、2025年を国際協同組合年(IYC)とすることを宣言しました。この年を世界と日本社会における変革の契機にしていくためにも、ワーカーズコープ連合会は、加盟する全ての会員・組合員に呼びかけ、市民とともに最善の成果を得るためのアクションを、地域の中で推進していきます。

 世界は今、ウクライナやガザでの戦争・紛争に象徴される平和の危機に直面しています。また、気候と環境・食料、生物多様性なども後戻りできない困難な状況にあります。そして、人間社会の競争と分断、対立は、あらゆる生命の生存条件と調和を崩し、危機的な状況を加速させています。こうした危機と困難の根底には、利己的で近視眼的な利益追求に奔走してきた、私たち人間のあり方があります。
 一方で、この困難と危機に向き合い、自らと社会のあり方を変革しようとするアクションも存在します。「持続可能性」を共通テーマとするアクションは、大きな潮流を生み始めていますが、こうした変革のアクションの中にも、利己的な利益の追求を企むものも存在してしており、高い感度と主権性・当事者性を持って物事を見抜くことが求められています。
 私たちは人類史的な分岐点に立つ中で、あらためて、地域・コミュニティの再生と、これを基盤とする経済、社会づくりへの転換が問われているように思います。
 今回の国連の宣言には、協同組合という組織と文化によってエンパワーメントされたあらゆる人々が、それぞれの人生とコミュニティを前向きに変革していくことで、寛容で包摂的・対話的な社会を実現していこうとする意図が込められています。
 人々が主権と当事者性を高め合うこと。そして、私だけから私たち、そしてみんなへと思いやりと配慮の幅を広げ、共生・共存の関係のあり方を模索していくこと。さらに、そのための話し合いや対話による協同の関係を育んでいく場として、協同組合が機能することが求められていると自覚します。

 2025年の国際協同組合年(IYC2025)は、協同組合による社会貢献の認知度を高めることに止まらず、現在世界中で取り組まれている協同組合のアイデンティティの見直しをはじめとする、本質的な協同組合の意義を深める流れの中で迎えることになります。
 それぞれの協同組合が自己変革し、組合員の主権と当事者性を高めながら多様な協同組合間の協力と連携の関係を格段に強め、人々とコミュニティを焦点に自らを社会に開き、協同の文化のさらなる創造へと踏み出すことが期待されています。
 
 私たちは間近に迫ったIYCを、11年前のそれとは異なる環境下で迎えます。一つは、前回IYCの成果として、日本では「日本協同組合連携機構」(JCA)が誕生し、この多様な協同組合の結集軸を中心に、多岐にわたる実践の可能性が広がっているということ。そしてもう一つは、「労働者協同組合法」が社会に存在しているということです。
 この二つは、今回の国連決議が目指すもの、そして協同の実践者の広がりと深まりをつくり出す条件とも言えます。
日本の協同組合は、組合員共通の利益=共益を生み出す組織・運動体として、それぞれの根拠法で規定されています。しかし、労協法では、お互いが自分らしく・人間らしく働くという共通利益の追求に止まらず、その仕事を、地域・市民にとっても広く有益なものに高めていくという目的が掲げられています。
 これは共益と公益を融合した「公共益(みんなの利益)」の実現という、これからの時代の協同組合のあり方を先んじて探求するものであり、すでにその実践が各地で始まっています。労協法の施行は、単に新たな協同組合を制度化したことにとどまらず、協同組合の原点と先進性を発するものとして、協同組合セクターの中にも影響を広げようとしています。

 私たちワーカーズコープ連合会は、新たな船出となった本年6月の創立総会で「ワーカーズコープ未来ビジョン2023」を採択しました。IYC2025を契機に、このビジョンに掲げた「『働く』を変える」ことから、全面的な協同労働の社会化を、職場から、仕事から、地域から一層深く、そして広範に呼びかけ実践していきます。そして、新しい協同組合のあり方を中心課題として探求し、自らの拠りどころ、行動指針としてきた「協同労働の協同組合原則」を、現場と地域での実践と組合員の実感の中から再定義する取り組みを進めます。
 持続可能で活力ある地域・社会を、すべての人々の社会参加と、すべての命の尊厳を確保する意志の下に実現していく、「協同のチャレンジ」の契機として、IYC2025を位置づけ推進します。

2023年11月25日
日本労働者協同組合連合会
理事長 古村伸宏

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【関連リンク】
国際協同組合同盟(ICA)ウェブサイト
https://www.ica.coop/en/newsroom/news/resolution-calls-second-international-year-cooperatives-2025

日本協同組合連携機構(JCA)のプレスリリース

https://www.japan.coop/wp/14458