平成25年度 セーフティネット支援対策等事業費補助金 社会福祉推進事業

一般社団法人 協同総合研究所 平成26(2014)年3月 作成

 

はじめに

1.本調査研究の背景と目的

厚生労働省は、 平成 25 年度から生活困窮者自立促進支援モデル事業を開始し、平成 27 年 4 月からの生活困窮者自立支援法の本格実施に向けて準備を進めている。そこでは、自立相談支援事業、就労準備支援事業、就労訓練事業(中間的就労)の認定、一時生活支援事業、家計相談支援事業、そして学習支援事業が準備されている。
一般社団 法人 協同総合研究所は、働く者たちが協同という関係づくりのなかでそれぞれが主体性をもって就労に取り組む働き方、そして協同事業の創造と推進について、調査研究する団体であることから、とくに就労準備事業と就労訓練事業(中間的就労)に関心を寄せてきた。こうしたなかで、平成25年度の社会福祉推進事業では、「社会的事業体が取組む就労支援準備事業から持続性のある中間的就労創出に向けた制度・支援に関する調査研究」というテーマを掲げ、一般就労(民間労働市場)という出口に向けた就労訓練支援としての中間的就労とあわせて、この出口が容易に見つからない者に対する継続的な就労の場としての中間的就労の可能性を明らかにすることを目的と して、調査研究を行ってきた。あわせて、その中間的就労の受け皿となる社会的事業体(社会的企業など)の育成、自立、持続性の確保といった課題をどのようにして解決するのかについて検討を行った。その中間的就労と社会的事業体役割のイメージを示したのが、図1である。

図1 中間的就労の位置づけと機能、および社会的事業体の役割

 

中間的就労は、民間企業のなかで仕事の一部を体験あるいは訓練の場として提供するもの、また、自治体のなかで仕事の一部を同様のものとして活用することも想定されている。そうした取り組みも一般就労に向けた就労支援の方法であるとはいえ、さまざまな困難を抱えている被支援者に対しては伴走型の相談事業を合わせて実施することが望まれるだろう。このことから、日常生活や社会生活についての相談やさまざまな調整が必要となり、いわゆる伴走型支援が求められることになる。この点を考慮すれば、中間的就労は、社会的企業によって担われるか、伴走型支援を担う NPO などとの連携で実施されることが望ましいといえるだろう。また、一般就労という出口を前提にしても、障害などさまざまな不利を抱えているために実際にはその出口に行きつかない被 支援者がいることも忘れてはならない。その意味で、中間的就労は、就労訓練型とあわせて、継続就労型が必要にあると考えられる。図1は、まさにそのことを示すとともに、本調査研究では、これら2つを安定的に実施できる中間的就労、その担い手としての社会的事業体とはどのようなものなのか、これを探ることを目的としている。

今年度、この調査研究目的を明らかにするにあたって、次のような調査研究を進めてきた。

1.平成 25 年度の生活困窮者自立促進支援モデル事業を実施している自治体における就労準備事業、就労訓練事業(中間的就労)の 実施状況ならびに課題について明らかにする。あわせて、平成 26 年から同モデル事業の実施予定(あるいは見込み)の自治体における就労準備事業並びに就労訓練事業(中間的就労)の実施にあたっての課題を明らかにする。

2.中間的就労は、一般就労への移行を前提に、就労体験や職業訓練を実施する場であるとともに、他方で一般就労への移行が困難である(あるいはこれと異なる働き方を求める)者にとって、持続的就労の場となることが望ましい。この場合、その実現はどのようにして可能かという点についての考察を行う。すなわち、 中間的就労の受皿となる社会的事業体が安定かつ持続可能となる条件は何か、とくにその場合、地域社会あるいはコミュニティとの関係に注目しつつ、検討を行うこととした。全国には、この先進事例がいくつかあり、このヒアリング調査を通して、この課題に迫ることとした。

3.とくに、この調査研究のために設置した委員会のメンバーになっていただいた3つの自治体――釧路市・京丹後市・臼杵市――については、継続的な調査を実施し、事業の進捗状況にともなって生じる課題について意見交換を行い、そのなかで調査実施側がモデル事業の推進において生じているリアルな課題と解決策について学ぶとともに、自治体側にもいくつかの提案を行うというアクション・リサーチをめざした。

4.生活困窮者就労支援および中間的就労については、海外においても優れた実績がみられる。イギリス、フランス、イタリアそして韓国について、それぞれの専門家からその実態を報告していただき、日本におけるこの事業の具体化にあたって学ぶこととした。

5.さらに、こうした調査研究を踏まえて、月一回の定例研究会を開催するなかで、意見交換を行った。その議論の成果を提言として取りまとめた。