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  6/8 連合会事情


 知らないところで知らない人と交わることには、基本的にあまり抵抗の無い私ですが、私費で来ているならともかく、公費で来た以上少しなりとも肩に力が入ります。その上私の拙い語学力で、相手の話を理解し、こちらの考えを述べ、さらに日本の労協の見解や状況をも説明しなければならないと言うのは、思っている以上に疲れることだです(日本語で話したって疲れる内容なのに・・・)。

 さらに、今はスペイン語を勉強し始めたため、毎日両方の言葉で考えねばならず、疲れ倍増です。よって、1日が終わって部屋に帰ると、もうあまりものが考えられなくなってしまいます。日報を書くのも少し億劫です。まあ、帰ってからまとめて報告書を書くくらいなら、今書いておいたほうが楽なんでしょうが。

 しかし、本当に毎日毎日新しい人と会って話をするのは、結構タフでないとやってられないと言うことに気づきました。何かだんだん何を質問したら良いのかわからなくなってきます。


 2週間経って、こちらのだいたいの事情は分かってきました。構図としては、マドリードの連合会は、マドリード゙唯一の労協の連合組織ですが、その主な役割は、対政府、自治体の窓口であり、失業対策を中心に、政府自治体により多くの「社会的経済」の価値を認めさせ、労協を支援するように働きかけること、一種の圧力団体であるとも言えます。これに対し加盟各単協は、経営的にはそれぞれ全く独立しており、特に要請しない限り、連合会からの事業についての指導や方針提起はありません。ただ、政府からの援助のみを目的に連合会に加盟しているかというとそうではなく、それぞれに労協としての自負があり、何らか社会的な必要性の自覚のもとにそれぞれの事業を行っており、その実現のために連合会は必要と感じているようです。

 日本との大きな違いは、やはり法的認知があるということ。別に肩肘を張らないでやっているという感じがします。マドリード゙の連合会には月に1件以上の新加盟組合があるわけですから。ただ、どれも、えてしてそれほど大きな規模ではありません。それゆえ現在の政府(PP)からは、協同組合も中小企業振興策の一部という位置づけにされがちなのだそうです。また、労協と政党、労組との距離も日本と比較的似ているようです。今のところ、労協の活動を最も認知しているのはSOCIALIST PARTY(社会党?)で、次が共産党で現政府のPP(日本語でなんと言うのでしょう?)は、前述のとおり。また、労働組合との関係も、幾つかの労組は労協を敵対視しているそうですが、労協の活動家の中には労組出身の人も多いようです。

 マドリードの連合会は、日本の労協連のように、とにかく社会的認知を目指して独立独歩と言うことではなく、何か事業を行うにしても(例えば失業者向けの講座など)基本的には、EUや国家・自治体の社会的資産をいかに社会的経済部門または協同組合に振り向けさせるか、というのが第一の発想になる様に思います。

 日本の労協連の成り立ち、特にセンター事業団と言う大きな協同組合を直接経営していると言う姿は、やはり少し特殊で説明するのに少々骨が折れます。そして、それが今後どのように発展していくのかが私自身が良く分かっていないため、説明することはより困難です。もちろん、今年の総会で提起されたような、展望はありますが、それにしてもセンター事業団と言うバケモノを今後どうしていくか、明確なビジョンを持つ必要があるように思います。どなたかこれについてすっきりと説明できる人はいませんか?いずれにせよ各単協(事業所)がもっと自立する力をつけていくことがその第一歩に思えます。


 *今日、再度歯医者に行ったら、反対側の親知らずも抜かなければいけないと散々脅かされました。さすがにそれは勘弁してもらいましたが歯医者で口を開けたままいろいろ言われるのはホント情けないもんです。

 *今日はついに気温が30度を超えましたが、まだ長袖で一日過ごせました。湿度が無いとこれほどまでに不快感を感じないものなのか、と感心しています。

それでは、また。


6/9 CEMO 歯科の協同組合

 結構なんだかんだと毎日忙しい?気がする。

 「CEMO」というマドリードの歯科の協同組合を訪ねる。元々はアナさんのいるCESと一緒だったものが路線上の(政治的?)対立で13年前に5人の組合員が分離したのだそうである。この辺のことは微妙で聞いても良く分からない。ガブリエルさんというUCMTAの事務局の人が説明してくれる。

 スペインでは歯科治療は公的負担(公立病院)があるがあまり良い治療ではない。また、矯正や美容整形は公的負担が無い。また、スペインでは歯科医に行く人の割合が少なく(10%程度)歯科医や矯正の専門家は金持ち相手の仕事をする傾向にある。フランコが倒れた後スペインの歯科治療の環境は劣悪であったが最近は非常に良くなった。CEMOでは、「より良いサービスを安く経済状態の悪い人たちにも提供する」ことが目的。そのため、支払いに長期の分割を認めており、18ヶ月までは無利子、それ以降は15〜20%の利子としている。

 現在2つのクリニック(マドリードと郊外の町)があり、1992年には30人の組合員がいたがそれ以降の景気の後退で現在組合員は18人。今月の末に3つ目のクリニックを開設する予定。経営を守るためには「小さい診療所でたくさんの患者を」がモットー。現在マドリード゙では一日約70人郊外では約30人の患者が来る。開院時間は月曜から土曜の9:00〜10:30。


6/10 CES 歯科の協同組合

 CESで治療


 私が通っている歯科協同組合の「CES」で話を聞く。ご存知のとおりアナさんの働いている協同組合。CESのストーリーは聞いている人もいるかと思うので、割愛するが、1980年に個人経営の診療所のオーナーだったビジャ氏の父上が経営を協同組合化して始まった(Comunistだったそうです)。

 その頃、歯科治療は高価でよりよく安いサービスを目指したが、歯科医師会は保守的でその壁を崩すことから始まった。歴史的には4つの時期に分けられる。

@アパートの一室で始まってから新しいクリニックを作るまで(〜86)
 組合員を増やすことが目標だった。

A経営支援のための2次協同組合SANICOOPの設立(88)
 サニコープで仕入れ等のコストの削減、新しい専門技術をもったクリニックの開始、組合内規の整備(就業規則、賃金基準、定款)

B経済的社会的危機(92〜96)
 収入の減少(92年3.65億→96年3.09億)によりリストラを余儀なくされ、治療方法の合理化や給料の10%引き下げ、増資等を行う。組合員の中でもかなり議論を行ったが、納得できずに去るものもいた。しかし、外部ではかなりの数の歯科クリニックが倒産したがCESは基本的には雇用を減らすことはせず、残った者たちの結束はより強くなった。状況は少しずつ好転してきており、一連の経営改革が認められ、銀行からの融資も受けられる状況にあり、今年の末にはもう一つの新しいクリニックの開設を予定している(5つ目)。

C現在(97〜)
 私の聞いた印象では、経営の近代化にかなり力を入れている。他の私企業よりもこの点については進んでいると自負しているようだ。マドリード゙労協連全体でもこの点に力を入れており、EUや国の公的資金と自治体等の協力でADAPT(後述)のプロジェクトを開始している。

 具体的には、市場での生き残りを目指した品質管理マニュアルの作成で「TOTAL QUALITY]と言っていた。日本でも昨今アメリカの工業やサービスの品質基準である「ISO」がよく雑誌などで取り上げられているが、ようするにそれのEU版である。CESではISO‐9000の取得を目指しているとのこと(最近は日本のビルメン業者でも取ってますね)。アナさんによれば、マニュアル化は弊害もあるが、協同組合のの観点で導入することには大きな意味があるとのこと。マドリードのクリニックでははじめてのケースだそうである。

 この後、昼食をとりながら話をする中で、副専務のアウグスティンさんが、盛んにJUST IN TIMEやトヨタのかんばん方式の話をしてきて、答えるのに困ったが、それらのシステムをサービス業にも導入したいとのこと。また、CESの経営内容を聞いたところ、人件費が約65%。これは歯科医としてはどうなのか私には知識が無いが、スペインの他のクリニックよりは高いそうで、理由としては社会保険の完備をあげていました。

 また、配当は9%、蓄積は25%、教育訓練費は5%以内とそれぞれ法律で定められているそうです。資本形成については、増資では追いつかないので、銀行からの借入れが主なようですが、日本の医療生協のように利用組合員からの出資は受け付けないの?と聞いたら、それは生協だから労協とは違うんだということでした。この辺の考え方にも彼我の考え方(制度?)の違いがあります。

 2日間でスペインの歯科クリニックの実態はよく分かりましたが、とにかく私は歯医者がいやで10年も無視しつづけていたので、日本の歯科治療や歯科の制度については全く無知であり、いろいろ聞かれても答えに窮してしまいました。その挙げ句、アナさんが「スペインに比べると日本では歯科矯正はあまり一般的じゃないよね?」と聞くので「多分それは、日本人がキスをしないからだよ」といい加減なことを答えたら、とてもウケてくれました。でも案外真実を突いているかも・・・?こちらでは、地下鉄でも公園でも誰はばかること無く激しくやっています。その話から、日西の文化や表現の違いの話になり、この話もよく分からんので「日本人はアクションなしでコミュニケーション出来るのだ」とまたでたらめを言ってしまいました。ヨーロッパ人からみると奇異なんでしょうね。

 ともかく、CESに限らずスペインの労協は、かなり高い専門性を追求しており同業他社と比べても高い水準を目指して実現しているようです。そのための専門的な教育や専門的な機関の充実ぶりは、やはり日本の労協より先を行っていると言わざるを得ません。

 CESでアナさんと


6/11 ADAPTセミナー

 ADAPTセミナー


 「ADAPT」の会議があるということで連れて行かれたのは、マドリード郊外の町[FUENLABRADA]。行ってみると会議と言うよりセミナーで、タイトルは「SEMINARIO SOBRE ECONOMIA SOCIAL "LA EMPRESA DEL NUEVO MILENIO"」(社会的経済に関するセミナー「新世紀の企業」)というものでした。

 マドリード労協連(UCMTA)と労働者持株企業「SAL」の連合会(ASALMA)と地元市FUENLABRADAそしてADAPT(要するに外郭団体とでも言うべきか)で共催したセミナーで地元の失業対策、町おこしとして社会的経済分野の仕事おこしに取り組むための説明会という内容のようでした。

 地元の協同組合や学校関係者、そして関心のある若者など全部で100人ほど集まり、地元市長も駆けつけていました。セミナーの中身そのものはアナさんが隣で要約してくれましたが、不覚にも途中で睡魔に襲われ必死に抵抗しましたが、一部記憶が飛んでいます。

 FUENLABRADA市は社会党の政権で社会的経済に積極的であり、市長は地域振興には社会的経済分野の発展が欠かせないと話していました。現在、市内には9つの協同組合の学校があり、市内7500部屋(全体の90%)のアパートを住宅協同組合が作っているそうです。また、若者が51%出資し行政が49%出資したSALもあるそうです。官・協・その他の社会的経済が一体となって実際に地域で仕事おこしに取り組むというのはまだ日本では考えられない状況ですが、日本でももっとそこを目指すべきなのだろうと考えました。

今日は少し量がまとまってしまいましたがこのへんで。(~o~)/~


  連合会専務:鍛谷様

 来る6月30日にマドリード労協連(UCMTA)の年次総会(General Assembly)が開かれます。その際日本の労協連からの挨拶をしなければならないとのことです。公式の挨拶なので、連合会に原稿を用意してもらったほうが良いというのが、アナさんのアドバイスです。5分程度だということなので、ぜひよろしくお願いします。言葉は英語で結構です。できれば、1週間ほど前迄にいただけるとありがたいのですが・・・。

  センター事業団経理部様

 こちらのCITIBANKで無事にお金は引き出せました。アパートの部屋170000ペセタ(85000×2ヶ月分)を払ったら残りが少なくなりましたので、もう10万か20万振り込んでいただければ幸いです。今のところあまり使う予定はありませんが、来週あたりから、少し地方に見学に行ったりしますので。ちなみに¥1=0.85PTS位みたいです。

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