『協同の發見』2000.1No.93
『協同の發見』目次

研究レポート

社会的協同組合と行政のパートナーシップ
をめぐる研究ノート
―委託契約をめぐって―


田中 夏子(長野県/長野大学)

1.はじめに


1-(1)本稿の目的

 一般に行政と事業体の契約においては二つの困難が想定される。第一に「政治的な権力関係」。これにより、(1)実際上水平的な「パートナーシップ」が困難で、受注側が自らの創意工夫の発展というよりは下請的な立場となる傾向が強いこと、(2)発注側の評価基準が暖昧で、専門的な検討に欠け、窓意的な選択が行われやすいこと、そして不鮮明な選択基準が時として汚職の温床などともなりうること。また第二の困難として「情報の不均等」。受注側と発注側を比較すると、サービスの質や価格の適正度に関する経験と情報が受注側に多く集積する。発注側に高度な管理能力がない限り、事業が適切に行われているか把握するのは難しい。外部委託は合理化の一環で行われるケースが多いため、その業務に熟知したエキスパートが発注側には手薄となるのが常である。
 「権カ的関係」と「情報の不均衡」の相互作用によって、「契約」は短期的にはコスト安かもしれないが、双方の信頼関係の不在、発注側の管理能カの低下、それに甘んじた受注側の財・サービスの質の低下を伴う危険が常に存在する1
 公的サービスの運営を民間に委ねれぱ、コストと質が改善されるとする議論は、明らかに短期的な効果にのみ目をむけたものである。相互が緊張関係のもとに育ち合う関係の中でこそ、「委託」は積極的な意味をもつ。それではどのような「委託」の形態がのぞましいのか。
 こうした問題設定のもと、本稿の目的は、第一にイタリアにおける、地方公共団体と非営利事業体(ここでは杜会的協同組合に限定して論じる)のr委託」関係の変遷を概観し、法的な枠組みと実例を追うこと、また第二に、そうした委託関係が、協同組合、行政、さらに市場にどのような影響をもたらすのかを論じるための課題を提示することである。

1-(2)本稿の構成

 議論に先だって、この「委託」関係が協同組合にとって大きな重要性をもっている点を、その収入構造から確認する(2-(1)非営利事業体の収入構造にみる「公共」との結びつき)。次に、地方公共団体からの受注が多い現状にあって、その関係がどのように変遷し、いかなる問題を抱えてきたのかを概観しよう(2-(2)受委託関係の概略)。続いて、そうした変遷の結果、現在どのような到達点にあるのかを、法的な枠組みによって特徴づけ(2-(3) 4州における「委託」法的な枠組み、そうした州法の規定を受けた協定づくりが実務レベルではどのような形をとるのか、実例にあたりたい(2-(4)ブレーシャ県の高齢者ホームに関わる公示書類を題材に)。最後に、極めて大ざっぱではあるが、こうした「委託関係」の再生が、そこに関わる各主体(協同組合、行政、市場)にどのような影響をもたらすのか、仮説的に述べつつ、今後の研究課題の提示としたい(3.契約関係の再構成がもつ杜会的な意味)。


2.非営利事業体の収入構造にみる「公共」と結びつき


 パートナーシップを論じるあたっては、少なくとも@経済的関係、A政策的位置づけの両者をみる必要があろうが、むろん両者は分かちがたい面もあるが、本稿ではさしあたり@にっいてみることとしたい。

2-(1)非営利事業体の収入構造にみる「公共」と結びつき

 圧倒的に地方公共団体からの委託が多い現状にあって、その体質を変えていくべきとする主張も存在するが2、ここではむしろ、その関係をどのように生産的で安定的なものにしていけるかに絞って議論を進めていきたい。

@収入構造における公・民割合の多様性
 地方公共団体との契約関係を深めるか否かは、協同組合の活動分野、運営方針、地域性などによってかなり異なってくる。例えぱ一般に「4:6」(社会的協同組合を含む非営利部門の総計)あるいは「3:7」(社会的協同組合のみの総計)といわれる公共、民問からの収入割合は、分野別にみるとかなり多様性がみられる。表1は、杜会的協同組合を含む非営利事業体、ボランティア団体全体にっいての収入構造であるが3、杜会的協同組合だけでみると、事業分野別のデータはないものの、CGMによる1996年調査では、A型協同組合、B型協同組合の収入に占める、公・民の割合は以下のようになっている。

表1 非営利団体の収入に占める、公共組織からの収入の割合(活動分野別・事業高順)
  事業総額(単立 100万リラ) 公的組織からの収入
福祉サービス 3,516,367 58.1
医療・リハビリ 2,901,186 71.5
専門教育・生涯教育 2,347,898 95.8
その他の保健医療 574,313 76.2
市民の権利擁護 536,641 97.4
文化・芸術 486,964 23.3
国際支援 387,671 80.5
大学教育 176,977 27.4
初等・中等教育 165,289 6.8
職業教育・起業支援 130,449 28.1
(Barbetta, 1996から Ranci, 1999, p.254が事業高の高い分野を抜粋して作成)

表2 社会的協同組合1こおける官・民の収入(A/B別)
  社会的協同組合計 A型協同組合 B型協同組合
市民からの寄付 2.7 2.6 2.8
非営利セクター〃 1.1 1.5 0.6
企業からの〃 0.9 0.5 1.4
自治体からの補助金 8.6 11.0 4.6
市民への財・サービスの販売 9.1 7.4 11.9
非営利セクター〃 6.5 6.5 6.6
企業への〃 13.4 5.1 27,8
自治体への〃 50.6 65.4 24.7
381号5条による契約 7.1 ―― 19.6
 公共団体からの収入計 66.3 76.4 48.9
(CGM、1997、p.140)4

 以上の表2から、公共部門への依存が社会的A型協同組合においては、76.3%、B型においては48.9%とおおむね00%の開きがあることがうかがえる。
 また、たとえおなじ事業分野、おなじタイプの協同組合であっても、民間市場を志向するか、公共部門を志向するかは、そのめざすところによって異なろう。例えば、教育分野の非営利組織の全国平均割合は「公」5「民」5だが、実際の活動において、その偏差は大きい。一例を挙げよう。
教育分野で活動する杜会的協同組合では、「親であることに戸惑う夫婦」や「離婚したけれども子供の教育には双方で責任を分かとうとする男女」に対して、学習機会を提供しているが、ある教育協同組合ではこれを「民間市場」と位置づけて直接親たちをクライアント(支払い主体は各親)とする一方、別の協同組合5では、親の孤立が生じないよう学校とのタイアップをはかって事業を提案しているため、契約相手は自治体となっている。つまり、人々の、極めて個別的内面的な問題や悩みを発端とする場合は、民間市場となるだろうし、子供との関係づくりの難しさを地域杜会の資源を結びあわせて解決しようとすれば、公共団体からの受注という形をとる。前者は比較的都市部の例であり、後者は島嶼部内陸地域の例だが、こうした地域の杜会的・文化的文脈も規定要因の一つとなる。
 以上みてきたように、非営利組織の収入構造は、事業部門、A/Bのタイプ別、そして個々の協同組合の戦略や社会的環境など、いくっかの要因が相互作用して多様な形となっていることがうかがえよう。
 こうした財務上の性格の多様性を加味しつつ、実際の協同組合事業の中で、どんな「委託関係」がっくり出されつつあるのか、それが「委託制度」にどのような影響をもちうるのか、そして制度化された形が、実践の中でどう陶冶されていくのか、そのダイナミズムを描きだすことが重要になってくるのではないか。言うまでもなく、本稿はそれらに答えうるものではないが、せめてそうした課題の入り口に立つことを念じて、筆を進めることとする。

A地方公共団体からの収入構造
 一口に「公共からの収入」といっても、その性格はさまざまである。ランチは、非営利セクターに対する公的支出のタイプとして、4類型(A.半官半民組織への資金投入、b.移転支払い(補助金など)、c.公的に保障される個人むけサービスに伴う間接的な対価6,d.契約や協定に基づく公共団体からの委託事業実施に伴う対価)を示した上で、それぞれの比率が、a.微少、b.20%、c.11%、d.69%であることに着目している7。すなわち、非営利セクターに投入される公的支出の7割が契約に基づく事業収入となっている点を重視し、さらにb.(移転支払い)による収入割合が高い事業分野として、権利擁護、文化活動、またc.d.(事業の直接的・間接的委託)による収入割合が高い事業分野として、職業教育、医療、福祉となっている点に大きな特徴を見出している。つまり、前表とあわせてみると明らかだが、公的支払いが「b.補助金」中心の分野では、収入構造全体からみると公的支払いへの依存が少なく、民間に一定の事業の足場をつくっている分野が多い。逆に公的支払いが「c.間接事業収入、d.契約による事業収入」中心の分野では、収入構造全体も地方公共団体に傾斜している。
 「公共依存」の是非を一般化して問うのではなく、どのような性質の財源なのか(補助金なのか事業収入なのか)、事業収入の場合、だからといって自動的に安定的な収入源である保障はないが、それならぱ、その部分をどのように安定的かっ生産的に再構成していくか、といった議論が必要となろう。
 そこで次に契約による事業の際、どのような委託の方式、内容が、受注側発注側、そして何より利用者にとってメリットの期待できるものになるとされるのかに議論を移したい。

2-(2)受委託関係の概略

 前項では、歴史的経過や事業分野から、公共との強い結びつきを前提とせざるを得ない現状を受けて、「公共」との関係をどう生産的に再生するかが問われていることを確認した。その一環として、公共サービス事業の受委託関係における「価格以外の指標の導入」やプロジェクト能カを問う「競争入札の方法」が検討されるようになってきている。
 そこで始めに、そうした段階にいたるまでの委託関係の経過と方式を概観したい8
 マイエッロはその経過を「イタリアでは、伝統的に外部委託が根付いてものの、透明性、質の統制、真の競争、共有された基準、それに基づく選択を欠くものだった。これらをめぐる改革は、単に理論的な要請からのみなされたわけではない。自治体と民間の双方を擁護し、またもちろん地域杜会を擁護するために両者の関係に介入することが必要とされた」(Maiello,1998,p.365)とする。外部委託に際して、@自治体が何を外部委託するべきかの選択基準、A外部の財・サービス提供者の選定方法(不特定多数を対象とした一般入札か、指定業者入札カ)、特定業者との随意契約かなど)、B契約や協定内容の明確化の三点から、杜会的協同組合と公共団体との関係づくりが進んできた。
 まず、自治体が公的サービスを委託する際の契約者選定の基準として、EUの政策を受け、1995年イタリアでも通達157号にて、「a.単に価格が最も低いものを選択する」あるいは「b.経済的に最もアドバンテージが大きい業者を選択する」ことが義務づけられた。「a」と「b」とでは双方とも経済的メリット」に言及しているため、違いが読みとりにくいが、『経済的に最もアドバンテージが大きい』とは、「事業者の仕事の質、地域への根付き方、企業的性格、当該分野での経験の蓄積などを見極め」た上で、「自治体が定めた枠や公示にある条件や協定内容を満たす」業者に事業を委ねることを意味する。こうした理解が自治体側でも徐々に共通認識となり、各地域の州法への盛り込みが進んでいった(次項参照)。また、多角的な評価基準の導入にあたっては、それぞれの項目を点数化するパラメーター方式が採用された。
 なお、上記のような『経済的に最もアドバンテージの大きい』事業者の選定にあたっては、入札方法も、従来の一般入札、指定業者入札、随意契約の三種に加え、自治体が大枠を示し、業者が、その枠内で裁量をもちつつプロジェクトの起草から価格決定まで総合的に提案するコンテスト方式(appalto concorso)が採用されるようになっている。
 以上を簡潔にまとめれば、次のようになろう。イタリアにおける公と民間の、現代の契約関係では、基準のはっきりしない不透明な方法によって政治的腐敗が横行した後、低価格であることが主たる基準となった。しかしこれではアングラ労働の温床となったり労働者の権利擁護が困難、ひいてはサービスの質が保障されないなどの弊害が出てきた。また、民間委託の効果をめぐってlRS(Istituto per la Ricerca Sociale)が1991に行った調査では、「最低価格原理」のもとでも、民間委託が自治体財源の節減に効を奏していないことが浮き彫りにされた
9。こうした無原則な委託に対する反省のもとに、価格と質の両者を勘案する選択方式が模索されてきたといえよう。その際、A型杜会的協同組合にっいてはコンテスト方式の競争入札を、またB型杜会的協同組合については一部随意契約で(381号第5条)、というのが入札方式の大きな流れとなった。
 さて、次の問題は、価格とならんでこの「質」を測定する方法、また、価格と質を点数化した後の、両者の配分方法である。したがって次にこの二点をめぐって、(3)法的な枠組みの把握、(4)事例の提示を行いたい。

2-(3)4州における「委託」の法的な枠組み

 社会的協同組合法381号第9条では、自治体と協同組合の受委託をめぐり、各州法で契約方式、入札で検討するべき事項、契約者選定方法などを定めるよう求めている(ただし州法における取り扱いはさまざまで、特に規定を設けていない州もあれば、エミリア・ロマーニャ州、バジリカータ州、リグリア州、ピエモンテ州などのように独立の章を設けて詳細を定めている州もある)。
 この項では、ロンバノレディア州(1993年州法第6号)、エミリア・ロマーニャ州(1994年州法第7号)、トスカーナ州(1994年州法第13号)、サルデーニャ州(1997年州法第16号)の各法を参照しながら
10、州法で規定されている、社会的協同組合と自治体との関係を、とりわけ受委託に限ってみていくこととする。いうまでもなく、ロンバルディア州はCGM参加の社会的協同組合の本拠地ブレーシャを含む州であり、トスカーナ、エミリア・ロマーニャの両者はレガ系の協同組合の活動が活発な地域となっている。またサルデーニャ州は、内陸部で杜会的協同組合が活発な地域であり、州法ができたのは1997年だが、1988年の時点で、杜会的協同組合を想定した州法(1988年州法4号)を出している。なお、ロンバルディア州法は「L」,エミリア・ロマーニャ州法は「E」,トスカーナ州法は「T」,サルデーニャ州法は「S」であらわした。
 A,Bでは、委託に際して明らかにすべき点が列挙されている。州によって多少違いはあるものの、おおむね共通している。

A.自治体と社会的協同組合との間の受委託に関わる協約の際、明らかにされるべき要件

 @サービス対象者の限定、サービスの内容および実施方法(L,E,T,S)
 A期問および延長や更新に関わる規定(L,E,T,S)
 Bサービスを提供する者の職業的専門性、特に技能責任者の資格、経歴、専門的資質(L,E,T,S)
 C職業教育への参加方法(E)
 Dボランティアの関わり方(L,E,T,S)特に専門性の備わる就労メンバーをどう補完するのかの特定(T)
 E設備の衛生上、安全上の基準(L,E,T,S)
 F委託事業の分野における協同組合の実績(L,E,T,S)。特に標準的な機能と活用すべき人材の指標を重視して言及(T)
 G適用の労働協約(L,E,T,S)
 H支払額と支払い方法(L,E,T,S)
 Jサービスの質、利用者保護に関する評価方法(L,E,T,S)、利用者を対象とした定期的な調査の実施(L)、QCの実施方法(T)、利用者団体や協約を結ぶ労働組合の協カによる評価(E)
 J利用者と労働者の保険に関する規定(L,E,T,S)
 K契約の不履行や契約解消に関わる規定(L,E,T,S)

 以上は、杜会的協同組合AB型に共通して言及されている部分である。これに続いて、B型をめぐる規定が付されている。

B 特にいわゆるB型協同組合への委託をめぐる規定

 @91年法381号第1条1項bに規定される協同組合と自治体との契約にあたっては、杜会的に不利益を被っている人々の労働参加のための雇用創出を目的として明記しなけれぱいけない(L,E,S)。
 A委託されるサービスの量、生産性、ハンディを抱えた就労者への教育的な効果に言及した上での人数の確定(L,S)
 B必要とされる仕事と関連づけたハンディの種別(E)
 C中長期的視野に立っ、各自に個別化された計画の存在と支援形態の量と種類(E)(トスカーナ州の場合は、「選択基準」の条項に、類似の記載一後述)

 以上の規定は、サービス・財の分野に関わららず一般化・抽象化された規定だが、これにそって自治体は公示の中で具体的な要件のリストとその点数を示すことになっている(次項2-(4)参照)。

C.契約者の選択基準

 以下では「契約者選択のための基準」(落札基準)にっいて州法の規定を追ってみよう。これについては、前述の「明らかにされるべき要件」と異なり、表記の有無、表記法のばらつきが大きい。ここでは上記の点について独立した条項を有するトスカーナ州の規定を参照する。同法では次の三点を重視するべきとしている。
 @サービスを提供する組織のプロジェクト能カ
 A委託された事業の複合性に答えられるような組織的能力および経済的・資金的能力
 B協同組合が、委託された事業の担当者として想定している協同組合メンバーの専門性、経験
 またB型協同組合との受委託については、さらに以下の二点の重視を求めている。
 @ハンディを抱えた人々の労働参加とう目的に照らしてプロジェクトが有効であるか
 A委託事業が行われる地域とのき結びつきが深いか
 
 エミリア・ロマーニャ州とサルデーニャ州はほぼ同様の記述となっており、以下の5点が挙げられている。
 @当該部門における、国や州の定めで求められる標準的機能を持ち合わせていること
 A当該部門の各種契約や規定の尊重
 Bプロジェクト能カ、組織能カ、イノヴェーション能カ
 C担当者の職業的専門性
 D同一の部門を担う公的機関、民間組織によってつくり出されている価格一質のバランスに照らした評価
 E企業的安定性(Eのみ)

 その他、受委託関係をめぐる興味深い点として、
 @トスカーナ州法(第9条第4項)では、受委託関係の性格づけをあらわす次の一文が置かれている。「地方公共団体と協同組合の受委託関係は、双方の、組織面でのオートノミーによって特徴づけられている。地方公共団体はサービスの給付を委託し、協同組合は、委託された事業を遂行するため、諸々のファクターを結びつけながら複合的な組織として機能する」。
 Aエミリア・ロマーニャ州法(第10条第1項)では、価格と質のバランスに言及した次の一文がみられる。
 「福祉・医療・教育サービス運営の評価を目的として契約相手を選択する際は、単に、通常の選択基準とされる最低価格と異なる客観的な基準についても言及しっつ、提起されたサービスが評価されなければならない」。
 Bさらにピエモンテの州法(1994年州法18号 第12条第1項)では、社会的サービスの委託決定の際の基準として「いずれの場合でも、最低価格であることをのみをもって決定することは禁じられる」とし、公共事業における「最低価格」の重視の申し合わせを、杜会的協同組合との契約関係においてははっきりと排除した形となっている。

 以上、州法の受委託関連の規定を概観してきた。むろん、州法の規定の、現実場面での運用がどのようになっているかについては別途検討が必要だろう。例えば、エミリア・ロマーニャ州法10条「契約者選定のための評価基準」は、1997年3月および4月の改正で、その第5項に「契約者選定に際して、価格的要因は総合的評価点の50ポイントを越えてはならない」という条項が加えられた。ところが97年6月の時点では、ボローニャ市では、引き続き、価格に60ポイント、提供されるサービスの質に40ポイントの配分で契約者の選定を行うとしており、協同組合の側からは、自治体のパートナーシップに対する強い疑問の声が挙がっていた(1997年6月 レガ・ボローニャ本部にてアルベラー二氏からのヒアリング)。
 逆に、ロンバノレディア州法では、ポイントの具体的な指示がないものの、後にみるように、実験的な試みに対しては、「価格最高30、サービス内容他最高70」あるいは「価格最高20、サービス内容他最高80」といった公示例もみられる。州法の規定と現実とのズレを含めた対応関係の分析は、筆者の能力をはるかに越える課題なので、本項では以上の言及にとどめ、次に高齢者施設運営委託の公示の例を参照しよう。

2-(4)実践的な事例-公示書類を題材に

 ここでは、ロンバルディア州ブレーシャ県の自治体ロデンゴ・ザイアノ市における、公設民営型の居住型高齢者ホーム「テイルデ・エ・ルイジ・コロージオ」(Tilde e Luigi Colosio)11の運営委託にあたって行われた「コンテスト方式による入札」の概要を、入札のための公示書類からみてみよう。
 同施設は、この夏開所したばかりの高齢者ホームである。自立的生活が全く不可能とされる9割の高齢者と部分的に自立的な生活が可能とされる1割の入居者から構成される100床の施設だが、建物の構造はもとより、生活の組み立て方をはじめ介護や医療の体制も利用者20人ずつを基本単位としているため、グループホームの集合体の感が強い。公設民営による同様の試みは、ボローニャはじめ、国内でもいくつか例があるものの、全体的にはまだ少なく、新しい試みである。
 この施設運営委託にあたって、市が公示した入札に関わる協定内容(capitol ato)第7条「選定の基準」12によると、選定は表3に示した5つの基準を15〜30点の点数づけを伴って行われる。

表3 選定の基準
A 高齢者を対象とした社会1医療サービスの分野での能カと実績(最高15点)
(1)高齢者を対象とした居住型施設の運営経験
(2)高齢者を対象とした他の形態のサービス供給の経験
(3)高齢者を対象とした政策上、あるいは業務上の実験的な取り組みの経験
(4)高齢者を対象とした社会的援助に関わる研究調査、出版物
(5)その他
B 社会的企業としての職業的専門性と組織機構(最高15点)
(1)高齢者施設を運営するための特殊な専門性を有するスタッフがそろっているか
(2)専門性の高い補助スタッフがそろっているか
(3)基本的な職能形成およぴ現在の能カの向上をはかる教育の運営経験
(4)その他
C この自治体に住むボランティアおよぴ利用者がもつ、専門的な資源の価値を認めそれを活性化するための能カ・実績(最高10点)
(1)サービスの供給にあたる恒常的なボランティア
(2)恒常的な関わりをもつボランティア団体
(3)社会的協同組合による新しいイニシアティヴ
(4)社会的協同組合、ボランティア団体による、この地域への実践的な参加
(5)利用者の側からのコントロールを活性化するような経験
(6)その他
D 施設運営のプロジェクト(サービスの複合性、特徴、質)(最高30点) 
(1)サービス供給の全体像
(2)技術的な特徴
(3)サービスの総合的な質とその評価方法(自己評価およぴ第三者評価の両者によるもの)
(4)サービス担当者の職業的な質
(5)利用者本人とその家族の、施設への関わり・参加の方式
(6)統合的サービスの特徴
(7)市が関係する他の高齢者サービスとの関連づけの方式、特徴
E 価格(最高30点)
X= B x30
    A
ただしA=評価すべき価格、B=オファーの中の最低価格、X=点数
また、入札の資格者は社会的協同組合もしくは社会的協同組合連合とされている。

 表3には以下の特徴がみられるといえよう。
 @価格とサービスの特質の勘案の割合
 価格とその他のパラメーターのバランスが30対70とされ、通常の50対50、あるいは60対40という設定と比較すると異例の配分となっている13
 Aサービスの「質」把握のための多角的な検討
 提案されたサービス内容やその遂行能力はむろん、その前後、すなわち教育(熟練者の再研修も含む)と評価(自己・第三者による複眼的な評価)のシステムが確立されているかが問われている。
 B地域的要素の重視
 比重自体はそれほど高くないにしても、CおよびD-(7)にみられるよう、協同組合として地域的な関わりをどの程度重視しているかが、問われている。また、その一環として、ボランティアや家族など、地域資源のネットワーク形成や活用が促されている。

 さて、こうした行政側の要求に対して、協同組合の側はどう対応しているのだろうか。
 「小規模」「特定の専門分野」「地域性」の三つをモットーするCONFCOOP系のSol.Co.Brescia(ブレーシャ杜会的協同組合連合)傘下の協同組合が、上記のような複合的・統合的な要請に単体として答えるのは難しい。そこでSol.Co.Bresciaの内部に、分野別6つの単協(福祉サービス、ビルメン、レストラン、衛生管理、清掃など)からなる事業協同組合GENESIを結成し、連合会が契約主体となった。入札にあたっては、ピエモンテやトスカーナ、シチリアなど他地域からの協同組合の参加が数件あったという。「地域的要素の重視」の点からみれば、GENESISが州外の事業体と比べて有利ではあるが、しかし他のパラメーターの比重を考慮すれば、競争原理は機能していると考えられる。
 同事業協同組合および施設の責任者であるエレナ・ヴァレンティー二さん14によると、例えぱサービスの内容や方法におけるGENESIのイノヴェイティヴな部分として、以下の例が挙げられた。
 @利用者グループのヘテロな構成:症状
 重度、中度、軽度の利用者を組み合わせたグループ構成により、利用者が必要とするサービスを効率的に配分し、また十分な時間行える15
 A家庭的な規模を基本単位:拡大家族の規模を念頭に20人の基本的な単位として生活、介護、医療サービスを構成。診察室、食道、居間も20人ごとの居住空間にそれぞれ設置。
 Bチームによる統合的サービス体制:介護士(Ausiliario Socio Assistenza)、看護婦、医師、理学療法士、アニマトーレ(レクリエーションや学習活動を担当)等に、異なる専門職でエキップを構成して、各「拡大家族」を担当し、生活・医療・福祉の統合的サービスを供給。
 例えぱこうした事柄は、公示書類中D-(1)として考慮されることになる。

 さて本項では、前半で州の規定を、また後半で公示例および協同組合側の対応のアウトラインをみてきた。議論の組み立てとしては大ざっぱものであるが、資料や検証の穴埋めは今後の課題としたい。

3.契約関係の再構成がもつ社会的な意味

  
 この項では、結論というよりも、こうした委託関係の変遷が、非営利セクターと行政にどのような刷新をもたらしたのか、以下の三点を仮説的に提示し、検証については今後の課題としたい。
 行政と杜会的協同組合との委託関係の明確化と再構成は、まず第一に社会的協同組合の運営において、公共性と事業性を理念レベルでなく実践的レベルでどう両立させていくかを問うものであった。すなわち、非営利組織の側の、組織づくりや仕事のあり方に関わる刷新の促進である。入札書類づくりというプラクティカルなレベルでなく、専門性、合理的な仕事の遂行、組織内
・組織間のネットワーク能力、利用者との関係、地域とのつながりなどをめぐって、日常的に自己評価、外部評価を重ねるプロセスは、おのずと組織自体に大小のイノヴェーションをもたらす。
 第二に、市場との関係である。そもそも、両者の契約関係は、これまで市場の中で当然視されていた契約関係(低価格の最大重視)を相対化し、他の評価項目を導入した上で、その比率を変更していくという流れの中で形成されてきた。つまり契約関係の再構成は「市場の杜会的形成」(Bagmsco A.)
16の一端として位置づくのではないか。
 また、労働市場に対する影響についても言及の必要があろう。イタリアにおける非営利組織の位置づけは、福祉の供給主体というぱかりでなく、雇用創出の担い手としての期待も強い。地域の労働政策との連携も、地域によっては密に行われている17。契約関係の再構成との関連づけからはやや離れると受け取られるかもしれないが、量的な雇用創出に留まらず、契約のための協定づくりでは、誰がどのように働くかを掘り下げて検討することを求められるため、特にB型協同組合に働く人々の労働との関わりを質的に保障する可能性が増すと考えられる。
 第三に、行政と事業体の関係の見直しは、行政側にも刷新をせまることとなる。ランチによれば、契約関係の再構成によって以下二点の「新たな、契約の文化」が生まれつつあるという18

(1)パートナー形成の前提としたルールづくり
 州法では、公的な財源にアクセスするため、協同組合に対して拘束カの強い規定(専門的力量のレベル、働く人々の資質、労働協約の順守など先にみたさまざまな要件)を設けて、協同組合を統制下に置いているが、これは逆にみれぱ、行政が潜在的なパートナーを見出すための行為であり、管理の対象というよりも、政策決定の分野でも非営利セクターに市民権を与えようとする
意図にっながる(Ranci,1999,p.261)。

(2)地域社会における実験としての契約関係づくり
 低価格を重要視する公共事業一般の落札方法の限界が明らかになった段階で、契約者決定のための基準づくりと契約内容の明確化が強く求められた。1991年の381号は契約者選定のために、経済的合理性とならんで、サービスの質や事業者の杜会的な信頼性にふれた基準づくりを志向した初めての法だった。それに基づいて各州法では契約関係のあり方を定式化していくわけだが、ランチによれぱr新しさ」は定式自体にあるのではなく、そのプロセス――必要とされるサービスの質を見極めて、契約内容を確定していくという行政側の仕事のプロセスにあるという(Ranci,1999,、p.262)。

 新しい契約システムづくりを通じて、行政がどう変わったかにっいての議論は、実証的な段階ではイタリアでもあまり展開されていないが19、非営利セクター台頭に対する評価、意味づけとも関わる重要な研究分野であろう。非営利セクターは、「政府の失敗」の補完物、つまり公では機能不全を抱えざるを得ない福祉システムのほころびをカバーする道具の一っなのか、あるいは「失敗」を重ねてきた行政に、市民杜会からの働きかけによって再生を促す「社会的発明」(White.W.H.)の一端なのか。また、後者に転じていくにはどうすればいいのか。その問いに答えるために、上記三点に関わる実証的な研究が、不可避の課題ではないだろうか。


【脚注】
*1 Hansmam H.,The ownership of enterprise,The Belknap Press of Harvard University Press.1996pp.24-34

*2 社会的協同組合の議論において、「公共団体への過剰な依存」を問題視し、「民間受注の
増加」とr公共団体への依存からの脱却」を課題としてきたのは、主としてレガ系の協同組合である。同協同組合の場合、比較的組織規模が大きく、企業性を重視するケースが多いため、民間からの受注の重要性を主張する意見が聞かれた。例えば、A.アルベラー二(1997年当時レガ・ボローニャ連合の「社会政策」責任者)もr公と民の関係を密にするというウェルフェアミクスの考え方を踏襲すると同時に、急を要する新たな必要性を抱える民間の利用者に対して、直接新しい答えを提示する」ことを訴え、「我々社会的協同組合が全面的に公共部門に依存している状況を
 脱したいと考えている」としている(「社会的協同組合一理念、提言、見直し」(1997年5月16日ボローニャにて開催)。
 一方、自治体との深い結びっきを前提としているのが、CGM系の杜会的協同組合である。もともと、イタリアの非営利セクター(歴史的にさかのぼれば教会勢力)と国家との関係は、歴史的に深いものとされる。国家が、カトリソク勢力に守られて根付いてきた社会的組織(Caritasなど)を積極的に庇護、援助してきた経過から、公的な予算が非営利組織に流れる仕組みが強固に定着しているからだ。社会的協同組合研究では、こうしたカトリック系の組織を母体とするCON下COOP,CGM傘下の協同組合を対象とするケースが多く、「公共との密接な関係」が前提となった議論が主流となる傾向が強い。

*3 Barbetta G.P.(A cura di),"Senza scopo di lucro:Dimensioni economiche,legislazione e politiche del settore non profit in Italia",Boiogna,Il Mulino,1996、 バルベッタが、上記で使用しているデータは、サラモン、アンハイマーが主導し、ジョーンズ・ホプキンズ大学が行った非営利組織に関する国際比較調査(12カ国)(Salamon,L.S.and Anheier H.K. The emerging sector.An Overview,Baltimore,Institute for Policy Studies,The Johns−Hopkins University,1994)の一環として収集された。
 上記(Barbetta,1996)はイタリアの調査結果を詳述したものである。対象数は53,816団体にのぼる。
 国際比較においては、何をもって「非営利」とみなすか、各国間で(時としておなじ国の中でも)一致をみることが難しいだけに、バルベッタも概念上の定義と調査対象を確定していく実際上の定義との検討に多くの頁を割いている。とりわけ、他国では「協同組合」を、剰余の分配を認めていることをもって営利組織の一環とみなしているのに対し、イタリアの場合、社会的協同組合については「非営利」とみなす傾向にある。「剰余の分配」が極めて限定的であること、キャピタル・ゲ
インが禁じられていること、解散時の財産(払い込み資本控除)分割が禁じられいることなどから、協同組合一般を営利」と「非営利」の中間と位置づけた上で、それらと社会的協同組合を分かつものとしてさらに、381号法(1991年)第1条「地域の普遍的利益(L'Iinteresse generale della comunita)の追求を目的とする」点、すなわち「互恵性」(mutualita)を越えるとする性格づけ(Maiello,1998.pp.344-345)が挙げられる。
 また、剰余の分配についての付言も要しよう。社会的協同組合は、国法のレベルでは、あくまで協同組合の一形態として一定範囲の剰余の分配が認められている。しかし州法によって、「剰余の分配の禁止」をうたっているケースもある(例 Trentino―Alto Adige州 州法24号、1988年10月24目、1993年11月15日改正―この州では88年の段階から剰余の分配を禁止している)。また州法でそうした規定がない場合、個々の社会的協同組合が定款などで定める場合もある。

*4 CGM(A cura di),"Imprenditori sociali : Secondo rapporto sulla cooperazione sociale in
Italia",Torino,Fondazione Giovanni Agnelli,1996.
 上記の報告書は、1991年CGM研究所が実施した社会的協同組合調査の第二弾である。対象協同組合は、レガ系、あるいは連合会非加盟の協同組合も含め1,321団体におよぶ。

*5 田中夏子「イタリア杜会的経済への旅(5)―地域の学ぴの欲求を読みとり、政策提言―調査研究・教育協同組合Lariso」『協同の発見』第92号(1999.12)。サルデーニャ島の内陸部ヌオロを拠点する研究調査・教育協同組合「ラリゾ」では、多発する青少年の暴カに対応するため、親、学校、ソーシャルワーカー等によるグループワークを手がけている。親が個別に解決するのではなく、地域的な広がりの中で解決策を志向する。現在、内陸山間部で18の自治体と契約を結んでいる。なお同組合は、一般に「民間市場志向」「企業志向」と特徴づけされるレガの加盟協同組合である。

*6 公的保障が個人や家族を通じて間接的に非営利事業体に支払われる場合(医療費など)。 あるいはコムニタの入居者などが、障害者年金の一部をコムニタでの生活費として支払う場合など。

*7 Ranci C.,ILe politiche pubbliche’,in Barbetta(A cura di),"Senza Scopo di lucro",Bologna,il Mulino,1996,pp.255-256.

*8 「概略の把握」については、
 Maiello,"Italia"in Borzaga e Santuari(A cura di),' Servizi sociali nuova occupazione :L'esperienza delle nuoce forme di imprenditorial sociale in Europa ' ,Regione autonoma Trentino−Alto Adige,1998,Trento、pp.341-372(邦訳 マイエッロ「イタリア」(中川雄一郎訳)協同総合研究所編『欧州ワーカーズコープ最新事情―社会的連帯・就労支援への協同の広がり』、1999年)、およびLepri,S.' Cooperazione sociale ed enti pubblici ',in CGM(A cura di),"Impreditori sociali:Stpdo rapporto sulla cooperazione sociale in Italia" FondazioneGiovanni Agnelli, 1997,Torino,pp.219-234
 Lepri S.,'Alcune linee opcrative nella contrattazione',in "Impresa Sociale",genn/febb.1996,CGM,Bresciaに依拠している。

*9 Barbetta G.P.,'Sul contraction out nei servizi sociali ',in Borzaga C.(A cura di),"Non profit e sistemi di welfare: il contributo dell'analisi economia",La nuova Italia Scientifica,1996,pp.127-129.

*10 州法の原文は、Olivelli P.(A cura di)、"La disciplina giuridica del volontariato e delle
coopcrative sociali",Univcrsita degli studi di Macerata,1995を参照した。したがって本稿では1995年以後の改正が反映されていない。また、エミリア・ロマーニャ州法の全訳として、「社会的協同組合促進州法」(菅野正純訳)協同総合研究所編『欧州ワーカーズコープ最新事情―杜会的連帯・就労支援への協同の広がり』、1999年)

*11 高齢者ホームTilde e Luigi Colosioの概要は以下の通り。
「医療・福祉居住施設 Tildee eeLuigieColosioは高齢者介護の先進的な試みとして構想され建設された。ここでは医療面・社会面双方の高度な統合を目的として、ケアと居住サービスが一体的に織り込まれている。家庭的な環境に近似の仕組みとするため、居住空間は二人部屋、20床を一つのまとまりとして(施設全体では103床)、そのまとまりごとに厨房、食堂、居間、介助浴室、医務室を配置している。リハビリや医療的サービスに加え、レストラン(各コア別のものの他、施設外の人も出入りできるレストランが一階に設置されている)、バール、多目的ルーム、運動室を完備。サービスにあたるのは、高度な専門性をもった医師、看護婦、介護士、理学療法士、レクリエーションなどを担当するアニメーター、ソーシャルワーカーである。(中略)この施設の斬新性は、上記のみならず、運営面でもみられる。運営にはSol.Co.Bresciaによって設立された社会的協同組合GENESISがあたり、社会的協同組合の本質的な要素、すなわち人間性、連帯性、互恵性、支援、透明性、共有性、民主的参加を発揮するべく、活動に携わる。目標は、家庭的で快い、利用者にとって等身大の環境を再生し、それによって全ての人が自己実現の場を見出すことにある」(同施設概要より)。
 なお、入居の条件は地域居住者優先。また 料金体系(1999年8月1目現在)は、自立的生活が全く不可能な利用者の場合1日あたり 135,415リラ(うち利用者負担は65,415リラ)、部分的にのみ自立的生活が可能な利用者の場合一日あたり95,707リラ(うち利用者負担は58,707リラ)。

*12 Comune di Rodengo Saiano,"Capitolato spcciale per L'affidamcnto del scrvizio di  gestione della residenza sanitada assistenziale casa di riposo"

*13 ロンバルディアの州法では割合についての明記がない。州法の中でこの割合を明記しているものは、準備中、改定中のものも入れ少数であり、多くは通達などで規定されている。CGM研究センターのZANDONAI氏(9 月29貝ヒアリング)によれば、この「価格30、サービス内容他70」という重みづけは例外的なものであるとのことだが、1996年、ミラノ市における「障害をもった人、およびその家族に対する在宅サービスの委託」事業にも、「価格20,サービス内容他80」という点数配分による公示例がみられるなど、同州においては、価格の重みづけが、幅のある柔軟な運用のもとにあることがうかがえる。

*14 Elena Valcntini (Ciirdubatire Gencrale di GENESIS)。1999年9月11目にヒアリング。

*15 例えぱ20人の利用者に対し介護士は9人態勢。これで一日のべ35時間のサービスを保障。その他のサービスについては、利用者一人あたりで換算すると、一週間あたりリハビリ28分、医療行為42分、看護婦によるサービス140分、アニマトーレによるサービス17分となっている。

*16 田中夏子「地域杜会における社会的耐久力をめぐって―A.バニャスコの概念『インフォーマル・エコノミー』および『市場の社会的形成』を手がかりとして」、『地域社会学年報 第7集 地域社会学の新争点』、日本地域社会学会、1995年。

*17 Maicllo M.,'Agenzia del lavoro di Tronto : un progetto per le cooperative di inserimento lavorativo’,in "Impresa Sociale",magg/giu.1997,CGM,Brescia

*18 社会的協同組合を規定する381号の副産物として、行政文化の刷新が生じたとする論
 者の例としてRanci C.,”Oltre i1sc1farc state" Terzo settore,nouve solidaritea e trasformazioni del welfare",Il Mulino,1999,pp,260-262

*19 本稿脱稿(9月30日)後、Lucia FAZZIによって行政と協同組合の契約関係をめぐり精力的に調査が蓄積されていることを知った。紙面と締め切りの都合で本稿にはその紹介を盛りこむことができなかった。稿をあらためて取り上げたい。

1月号(No.93)目次『協同の發見』目次