『協同の發見』1999.11 No.91 | 目次 |
インターネットを活用することで、
研究所の活動はどうなったか(1) ホームページとメーリングリストの現況と利用案内
手島 繁一(協同総研常任理事/法政大学)
■進化する電子情報通信技術の活用
電子情報通信技術は、ハード面、ソフト面とも著しい進化の渦中にあります。パソコンの技術革新と価格破壊の勢いは、今年前半から特にすさまじいほどの加速度を加えているようです。今や最新のテクノロジーを結集したパソコンの価格は10万円を切るのが当たり前になっています。周辺機器でも、例えばスキャナーなどは、パーソナルユースで十分実用に耐える機器でも、1万円を切る値段で売られています。わたしなど、1ヶ月前に2万円を出して買ったスキャナーがより性能がアップして8000円で売られている新聞広告を見て、唖然としつつ滂沱の涙を流したものです。
より注目すべきは、ソフト面の進化でしょう。ことにインターネット技術の進歩と普及は刮目すべきものです。かの情報整理法の寵児、野口悠紀雄氏ですら、最近の著書『インターネット「超」活用法』(講談社)で、インターネット技術の進歩を過小評価していたことを自己批判しているほどです。わが国のインターネット世帯普及率も10%を超えたそうで、このステッキングポイントへの到達の速度は、過去のいかなる家庭電化機器のそれよりも格段に速いということです。わが国でインターネットの実用化研究が始まったのが1970年代半ば、大学などの研究機関による学術サービスの開始が84年、商用サービスが立ち上がり一般の利用が可能になったのが92年のことですから、驚くべき速度と言うべきでしょう。 わが研究所も、この時代の趨勢に乗り遅れてはならじと、99年度総会でインターネット技術の活用を方針として掲げました。具体的なアクションとしては、以下の4つの課題に取り組みました。 (1)ホームページ(Home Page、HP)の開設
(2)メーリングリスト(Mailing List、ML)の活用
(3)研究所内LANの構築
(4)ISDNの導入
LANとISDNの件は研究所の設備問題ですのでともかくとして、会員の皆さんに関係する上記(1)(2)について、現況を報告し、あわせてお願いを述べさせていただきます。 ■ホームページの現況
研究所のホームページは、総会前日の6月25日に立ち上がりました。以来4ヶ月間のアクセスは600件を超えています。実は、10月30日までは500件だったのですが、その後急速にアクセスが増え、ここ1週間で100件のアクセスがありました。つまり、10月までは月平均125・日平均4アクセスであったものが、11月になってから日平均15弱と、ほぼ3倍になったわけです。この急激な変化の原因は何であるのかを分析出来ていませんが、わがHPもようやく認知されてきたとはいえるのではないでしょうか。
アクセスの急増の原因については、思い当たる節が一つあります。皆さんもご承知のように、1998年度ノーベル経済学賞を受賞されたアマルティア・セン教授(英ケンブリッジ大学トリニティカレッジ学寮長)と、永戸祐三・日本労協連理事長、中川雄一郎・協同総研理事長、および菅野正純・同副理事長との会見が10月17日に行われました。これ自身、ビッグニュースなんですが、この会見の模様をいち早くHPに掲載しました。どうもそれ以降、アクセスが急増したように思われてなりません。あくまで推測にすぎませんが、もしそうだとすれば、HPへのアクセスは見栄えではなく、コンテンツつまり情報の中味に左右されるという、「インターネットの鉄則」が証明されたことになります。また、速報性という、インターネットの他の情報伝達手段にはない優位性をあらためて示したことにもなるでしょう。もちろん、この優位性を保障するものは、わたしどもの献身的な(?)更新作業なんですが。 ところでその更新作業(HPのアップデート)なんですが、はじめの数ヶ月は慣れないこともあって1ヶ月に2回程度が精々だったのですが、最近では1週間に2回程度はできるようになりました。 更新作業は今のところ、わたしが一元的にやっていますが、こういうスタイル自身は実はインターネットの哲学には適合的ではないのです。「集中処理」から「分散処理」に移行する必要があります。この点で、私たちは最近、有益な経験をさせてもらいました。 わたしなどがやっている、いかにも素人的なHP更新作業を見るに見かねたのでしょうか?熱心なHP閲覧者の吉田省三会員(長崎大助教授)が、自ら研究所案内のイタリア語Versionを作成され、イタリアの友人にも点検していただいた上で、わがHPへの掲載の許可を求めてこられたのです。もちろん、即OKを出しました。トップページからリンクされている「Chi siamo (in italiano)」というページは以上のような経過で出来上がったのです。私どもが特にお願いしたわけではなく、吉田会員の全くのボランティア的参画でした。なるほど、「ネット上で作業を分担する」とか、「分散処理」とはこういうことか、と学びました。吉田さん、ありがとうございました。 まだ研究所のHPをご覧になっていない方は、是非一度アクセスしてみてください。アクセスするためのURLは、後に書いてあります。なお、インターネットエクスプローラー(IE)をお使いの方は「お気に入り」、ネットスケープナビゲーター(NN)をお使いの方は「ブックマーク」に研究所のHPを登録しておくと、それ以降のアクセスは至って簡単になりますので、お勧めします。登録の方法は、それぞれのブラウザー(IEやNNなどのHP閲覧用ソフト)のマニュアルかオンラインヘルプに書いてあります。 インターネットを利用できる環境にない方は、お近くでインターネットを利用されている方にお願いして見せてもらってください。「百聞は一見にしかず」です。 ■国際ドメイン名(JICR.ORG)の取得
わがHPは着実な進化を遂げてきていますが、ごく最近さらに大きな進化の一歩が踏み出されました。それは、国際ドメイン名を取得したことです。
インターネットを利用しておられる方はご存じだと思いますが、HPにアクセスするためにはHPの住所(正式にはURLといいます)を指定しなければなりません。通常、その住所表示(URL)は以下のような構成になっています。 http://(www.)ドメイン名.組織の種別ドメイン.国名ドメイン/~HP名
わがHPはinfoweb (11月1日からは@niftyという新会社に統合されました)という商用プロバイダーを利用してますから、そのドメイン名を記述して、以下のように書かなければなりませんでした。 http://village.infoweb.ne.jp/~kyodoken / ところが、インターネットはアメリカが発祥地ですから、アメリカのサーバーやプロバイダーは国名ドメインを表記しなくてもよい特権が与えられているのです。この辺をとらえて、「インターネットはアメリカの世界制覇の新たな帝国主義的戦略」として批判する意見は、それなりに根拠があるといえます。これにプロバイダーあるいはサーバーを変更することなしに、独自ドメイン名(例えば会社の名前だとか)を与えるサービスをプラスして提供する会社があることを、法政大学大原社会問題研究所の野村一夫さんから教わりました。 独自ドメインだけを提供するサービスは日本の中にも数多くありますが、その場合は国名ドメインすなわちjpは必ず表記しなければなりません。その点を考慮すると、アメリカのドメイン名提供会社の方が、より優れたサービスを提供しうることになります。この際、インタネットがアメリカの帝国主義戦略であるかどうかの本質論はさておいて、比較優良サービスは利用させていただこうではないか、というプラグマティズムの立場に立つことにしました。ドメイン名「JICR.ORG」という第一希望で申請したのですが、取れました!ちなみに「KYODO.ORG」や「JICR.COM」というドメイン名は登録済みでした。 そういうわけで、この雑誌がみなさんのお手元にわたる時点では、研究所のHPは以下のような簡明な呪文(URL)だけでアクセス可能となっています。「jicr.org」は、大文字表記と小文字表記を区別しませんから、「JICR.ORG」でも構いません。 http://jicr.org/ あるいは http://www.jicr.org/
なお従来の長ったらしい呪文(URL)もこれまで同様使用できますのでご安心ください。 ところで、なぜ「JICR.ORG」なのか、疑問をもたれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは協同総合研究所の英語表記(Japan Institution of Co-operative Reseach)の略称です。研究所の英語表記を決める際の理事会で、富沢賢治副理事長(聖学院大教授)が「JICRは日本語風に読むと、『じっくり』となって、ぴったりですね!」と発言されたのが決め手になったように記憶しています。 それに習って、みなさんも「じっくりオルグ」と覚えてもらい、周りの方々に広めてもらえるとうれしいのですが。なお、くれぐれも「じっくりオルグの精神を尊重して、原稿遅れます」などと、原稿締切の延期や仕事の遅滞の言い訳に悪用されないことを、お願いしておきます。 ■メールアドレスも新しいアドレスが使えます
国際ドメイン名取得に伴って、メールアドレスもこれまでのアドレスはそのまま使えますが、それに加えて以下の簡単なアドレスも使用可能になります。ご利用ください。
■メーリングリストの活用
研究所ではメーリングリスト(Mailing List、ML)を開設しています。これは、電子メールを使って、会員間で自由に意見交換や情報交換を行うための広場です。会員であれば誰でも参加できます。参加手続きは簡単で、
○kyodoken@jicr.orgあるいはkyodoken@mb.infoweb.ne.jp宛てに、「ML参加希望」と「メールアドレス」だけ書いて電子メールを送ってください。事務局で加入手続きを行ったあと、参加承認のメールが送り返されます。それであなたも晴れてMLの一員です。 ○投稿は全く自由です。事務局からは、「HPの更新情報」「出版物のお知らせ」や研究会、その他のイベントのお知らせを届けます。 ○研究所のMLの最近の現況では、ICOMのビデオ編集に関する情報のやりとり、研究所の国際ドメイン名取得の手続き、HPへの意見・注文などが話題の中心になっています。 ○ここ数日は上記の話題などで異常な盛り上がりを見せていて、一日平均5件を越える投稿があります。平常ではそれほどの投稿はないにしても、個人間のメールのやりとりよりは多い数のメールを受け取ることになります。そこでML参加者には、強制ではありませんが、メールボックスに「協同総研ML用の専用フォルダ」を作るようお勧めします。 こうすれば、協同総研MLへのメールはすべて自動的にこのフォルダに収まることになって、検索や整理が大変楽になります。 「専用フォルダ」の作り方は、それぞれが使っているメールソフト(メーラー)のマニュアル、あるいはオンラインヘルプをご覧ください。「メールの整理」あるいは「フィルタリング」の項目で載っているはずです。研究所に電話あるいはメールで問い合わせてもらっても結構です。 ■今後の課題については次号
この4ヶ月の改革は、インターネット技術を活用するノウハウを学び、蓄積する過程でもありました。この過程の中で、見えてきた課題もあります。HPの内容の刷新、HP管理体制の検討、MLの拡大や管理体制、メールマガジン(Mail Magazine、MM)の創刊、インターネットを軸にした研究所の活動と会員間コミュニケーションの改善・強化の可能性の検討などです。
これらについては次号に掲載します。皆さんからもどしどしご意見・ご注文をお寄せください。 なおこの小報告は、定番記事の「編集後記」を兼ねています。 |