7/30 ASALMA マドリード労働者持株会社連合会
今日は急遽,以前に予定していて,盗難騒ぎでキャンセルした,「SAL」の連合会を訪問する予定が入る。訪問するといっても,この「ASALMA」はマドリード労協連からは目と鼻の先(歩いて5分)。労協連とは頻繁に交流があるようだ。SALの正式名称は「SOCIEDADES LABORALES」。日本語で言うとどうなるのかよく分からないが,スペインの株式会社(S.A:SOCIEDAD ANONIMA)との対比で考えると,「労働の会社」とでも言えようか。ASALMAはそのマドリードの連合会に当たる。
対応してくださったのは事務局長のリカルド・ラトレ・ラサロさん。この人とは以前,ADAPTの会議か何かで一度会っている。
1時の約束が,会議が長引いているとかで,45分ほどロビーで待つ。労協連の事務所に比べると,だいぶ新しい。2時ごろようやくリカルドさんの部屋に通される。労協連の人たちは,通訳なしで大丈夫だと言っていたのに,リカルドさんはスペイン語しか話さないという。まったくもう,と思うが,いつものことなのでもう余り動揺しない。ASALMAのスタッフで英語の話せる人が,通訳してくれることになる。
SALの歴史は,約20年。1970年代の経済危機に際し,経営不振に陥った企業を,オーナーが放棄しようとするのを,労働者が団結して買い取ったことに始まるという。これについては,労働組合その他が関与したのか?と聞いたら,それはなかったとのこと。
その目的や理念は,「民主主義・参加・連帯」という言葉に現されるように協同組合とほぼ同じである。もっとも大きな相違点は,出資と決定に関する権利である。
協同組合は一人一票の原則であるが,SALにおいては,出資のパーセンテージに応じて決定権があるという。また,外部資本の割合を49%までに抑え,労働者が最低51%の資本を持つというのが原則である。また,一人の労働者が出資できるのは全体の25%までと決まっている。
これらを説明していわく,市場経済への適応と言う点では,協同組合よりモダンな組織である,とのこと。SALのような企業形態は,まったくスペインのオリジナルなもので,最近は,コスタ・リカなど中南米の国などにも少し,生まれてきている。何より興味深いのは,米国のユナイテッド航空が,このような労働者企業となっており,それを紹介している雑誌を見せてくれた。
それによれば,米国内には約1,000社の労働者企業(ESOPという)があり,11,000,000の労働者が働いている。これは米国の全労働人口の10%にあたるということである。詳細については彼らもよく知らないとのことで,交流があるわけでは無いらしい。
スペイン国内では,マドリード・バスク・バレンシア・アンダルシアなどでSALの運動が強く,マドリードでは1,300社10,000人の労働者,スペイン全体では8,000社,100,000人の労働者が働いているとのこと。企業の種類としては40%が工業,60%がサービス業とのことであった。
1986年に従来の株式会社法にSALに関する付則が設けられ,今年(1997)の4月に,SAL法として独立したそうである。内容的には株式会社の法律と余り違わないということだった。この法律の冊子をもらったので,どなたか能力のある方に,訳していただけたらと思います。
運動的には,SALは株式会社など企業が危機に陥ったとき,SAL化することで企業を継続し,失業者が増大を防ぐことがひとつの目的。もうひとつは協同組合同様,失業した労働者が,失業保険等の援助でSALを設立することにより,雇用機会を創出することだそうである。この点では,マドリード労協連とASALMAは,完全に一致して協同でセミナーを開いたり,講座を開設したりしている。
現在,マドリードでは年間約250の新しいSALが生まれており,これは協同組合の設立数よりも多いとのことだった。(マドリード労協連関連で年間17協同組合が開設され,連合会全体の組合数が200位だそうだから,単純に考えればSALの方が10倍くらい大きいことになる。)
以上が,およそ説明の概要で,実質15〜20分くらいしか,時間がなかった。でもその割には日本語の書き方を教えろだの,バレンシアにパエリアを食べにいってないのか?だの,結構話が脱線した。リカルドさんは,「これで荷物が5キロ増えるな」などと言いながらお土産と資料を山とくれました。冗談か本気か分からないが,「日本に招待してくれたら是非行きたい」とのことだったので,一度呼んでじっくり話を聞いたらよいかもしれない。
もう一件の役所の予定は,又もキャンセル。もう行かないだろう。研修も明日が最後,ようやく少しホッとしています。この通信も,おそらく7月一杯で終わりになるでしょう。とにかく電話がないと送受信できないので,事務所が閉まってしまうとどうにもなりません。
したがって,しばらく(2週間ほど)私とは連絡が取れなくなりますのであしからずご了承ください。では,また。(明日,もう一度メールを送ります)
菊地 謙