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 6/27  PANGEA 

自然教育と野外活動の協同組合

                    PANGEAの人々


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 今のところ毎日マドリード近辺の協同組合を訪問しては、話を聞くというのが私の日課なのですが、私の研修を引き受けてくれているマドリードの連合会の人たちも忙しいのか、あまり丁寧に訪問先や行き方を教えてくれません。最近は週の始めに一枚のスケジュール表を渡されて(スペイン語で書いてあります)、それを見て勝手に一人で行くといった感じになってきています。マドリード市内についてはだいぶ慣れて、住所だけあれば自分で調べて地下鉄などで行けるようになったので、別にそれでも構わないのですが、今日はちょっと苦労する羽目におちいりました。

 午後、予定の時刻に予定の訪問先の住所の建物に行っても、近所の人はそんな団体も人もいないと言うのです。「Calle Veronica」と言う名前の通りだったのですが、地図で調べる限り、マドリードには一つしかありません。不審に思って連合会の事務所に電話で確認してみると、なんと地方行きの電車かバスに乗っていかなければならない、だいぶ離れた隣の市の通りの名前だったのです。

 たまたま駅が近かったので、駅まで歩き、電車に乗って教えられた駅で降りました。しかし、そこは、工場地帯と軍隊の基地しかないところで、言われていたようにタクシーを拾おうにも、どこにも見当たりません。仕方がないので、市街地があるとおぼしき方向へ向かって、歩き出しましたがこれがまた遠く、ゆうに30分以上かかりました。

 街に来ればタクシーが走っているかと思いきや、これがまた全然走っていない。人に聞いてもそんな通りは知らないと言う。やっと公衆電話を見つけて、訪問予定の協同組合へ電話して、迎えに来てもらえることになったのは約束の時間を1時間半も過ぎた頃でした。まあ何とかなるだろうと思っていたので、あまり焦りはしませんでしたが、日の照る中歩きつづけてさすがに疲れました。(後で知ったのですが、連合会の人たちも、私が着かないとの連絡を受けて慌てていたそうです。)

 去年日本にアナさんを受け入れた時には、常に誰かが付き添って通訳も必ず付けるというような対応をしていました。それに比べるとまあいい加減なもんだな、とも思いますが、この辺が国民性の違いなのかも知れません。私も一人でやらせてもらった方が気が楽だったりするのですが。いずれにせよ油断をしてはならないということでしょう。

 それはともかく、今日訪れたところは、マドリードから南に電車で15分くらい行ったところのGetafe(ヘタフェ)という市にある「PANGEA」という協同組合。対応してくれたのはフアンさん。年齢を聞くと27歳、私より若い。事務所の入り口を入ると狭い空間に30代ほどのマウンテンバイクが天井から吊り下げられてあったり、地面に並べてあったりする。

 設立は1993年。環境やエコロジーの教育に関心のある生物学、社会教育等の専門家7人が集まって、発足した。組合の目的は環境問題やエコロジー、リサイクルなどを青少年へ教える事。そのために毎月平均2回、自転車ツアーやトレッキングツアーなどの野外活動を企画している。フアンさん自身がいつもガイド役として自転車ツアーに同行するそうだ。ツアーは国内が多いが、ヒマラヤや西アフリカなど国外にも行っている。一回のツアーには30人から50人、平均で40人の人が参加するそうだ。金額はきちんと聞かなかったが多分2日間で1万5千ペセタ(約1万3千円位)だと思う。

 また、公立の学校からなどの依頼で、子供たちに自分の住んでいる地域の水の問題、空気の汚染、リサイクル、消費などを教えるプログラムも持っている。絵や写真、時にはゲームなども交えて教えているそうだ。

 現在は組合員が3人に減ってしまったが、当初は7人が20万ペセタずつ出資し、そのお金で自転車を買い、事務所を借り、電話を引いて必要なものをそろえ、保険代を払ったそうである。設立時に中央政府から50万ペセタ(約43万円)が各組合員へ、地方政府から100万ペセタ(約85万円)が組合へ援助されたが、それ以外は行政の支援はない。

 組合の設立目的や活動内容を書いたパンフレットを作り、マドリード州内の全部の学校へ送付して、活動をアピールしてきた。ただ、組織は小さいので実際の活動はマドリードの南部地域に限られるとのこと。

 経営的な事を聞くと、スペインでは、公教育に対する報酬は良く、学校の依頼で行う仕事は非常に収入が良いとのことで、今のところ問題はないそうである。ただ、(これは他のところでも聞いたが)全般に、スペインの行政は支払いが遅く、それが悩みの種だと言っていた。場合によっては1年後に支払われるなんて事もあるらしい。

 この日は、翌日の土曜日から日曜日までの自転車ツアーの準備をしているところだったので、長居はせずに早々に引き上げてきた。メンバーはみんな地元の歩いてすぐのところに住んでいる人ばかりで、近所の仲間が協同組合を作ったんだと言っていた。それ以外にもこの日も何人かの友達が自転車の整備等に手伝いに来ていて、非常に楽しそうであった。将来は今の2倍くらいはツアーの数を増やしていくことを目標にしているとのこと。

 帰りは、街の中心から出ているバスで帰ってきた。

 私事ではあるが、大学時代の約4年間、休日のたびに自転車ツーリングにうつつを抜かしていた身としては、この人たちのやっている事の楽しさは非常によく理解できる。できたら一度一緒に参加させてもらいたい。また、このような協同組合なら日本でも作ることが可能ではないかという思いが湧いてきた。何せ私が学生時代にクラブでやっていたこととほとんど同じなのだから。うーん、日本に帰ったら具体的に考えようかなあ。

 

][<>][<>][ 菊地 謙 ][<>][<>][


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