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 6/22 Asamblea de Cooperacion por la Paz 平和運動のNGO組織


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 この日は、当初予定していた相手がキャンセルになり、急きょ変更になった相手。 例によって、訪問するまでどんなところか分からない。書いてもらった住所を便りに歩くと、マドリードの旧市街、いかにも下町といった風情の商店が軒を並べる通りの一角だった。

 スペインの住所は通りの名前と番号で特定するのだけれど、マドリードの場合、ほとんどが集合住宅なので、更に、何階の何号室かという情報も必要になる。ビルの入り口は鍵がかかっているので、目的の部屋のインターホンを押し、中から電気錠で開けてもらうのが一般的だ。この日もらっていた住所には何階というところまでは書いてあったが、どの部屋かが分からない。電話もしてみたが話し中。たまたま外から帰ってきた人がいたので、一緒に入り、ようやく目的の部屋を見つけることができた。

 団体名は「Asamblea de Cooperacion por la Paz」。和訳すると「平和のための協力会議」とでも言おうか。(余談ですが日本労協連本部のある労働会館7階のラパスホールのラパスはスペイン語の「La Paz」(平和)ですね)

 待っていたのは、60過ぎのの初老の女性でパメラ・オマリーさん。(名刺を見て、今気が付いたけど議長という肩書きでした!!)退職した学校の先生だそうで、ほとんどネイティブのような英語を話す。この組織は、いわゆる海外協力型のNGO(スペイン語で言えばONG)である。NGOとは何か一応説明すると、Non Governmental Orgnizationの略で、日本語で言うと非政府組織。日本では主に海外協力型の組織が名乗っている。

 先の湾岸戦争(1991〜92)に際し、スペイン国内では多くの反対運動がおこったが、その運動の中から生まれた組織である。話を聞いて大まかに分類するとこの組織には3つの分野の活動がある。

@海外協力活動

 まだ5年ほどの活動実績なのだが、各国のNGOと提携したその活動範囲は広く、主に中米のグァテマラ、ニカラグア、サルバドル、ホンデュラス、カリブ地域のキューバ、ハイティ、そして南米の2,3の国、更に中東のパレスチナ、ヨルダン、北アフリカのチュニジアなどでプロジェクトを行っているそうである。

 活動分野は、学校建設や教員養成、保険、医療、農業支援、啓蒙活動など各国の実状に応じて様々なものがある。400人のスタッフのうち有給は15人程度、あとはボランティアだそうである。しかし、現在、国外には専従スタッフはおらず、すべて各国のNGOなどの協力者(最近ではカウンターパートなどといいます)との協同プロジェクトであるということ。なかでも女性の問題には力を入れている。お金の援助ではなく、現地のNGOの支援という形を取っているとのこと。

A平和教育

 もう一つの活動分野はスペイン国内での平和教育。具体的には主に子供たち(10〜14歳)の描いた人種差別に反対する絵の展示会を行ったり、「Schools without Racism」(人種差別のない学校)という活動では、学校と提携して演劇やゲームを通じて差別や偏見について教えており、各学校に「人種差別反対宣言」を採択してもらう。このほかにも常時、このような教育コースを行っている。

B移民関連

 また、マグレブ諸国(モロッコなど)や東西アフリカ、東ヨーロッパ(ポーランドなど)、中南米諸国などからの移民の問題にも取り組んでいる。スペインの入管は、比較的緩く、ヨーロッパの不法移民の玄関になっている。(実際、地下道なんかでアフリカ系の人がよくタバコを売っているのは大抵不法移民だそうである)。それらの人々へスペインでの生活に必要な情報を提供したり、スペイン語の教室を開いたり、女性向けの生活情報講座(買い物の仕方やスペインの習慣など)を開いたりしている。また、就労許可や難民認定、ビザなど各種の法律的な相談も専門の法律家がいて対応している。

 これら活動の資金はほとんどスペインの外務省や文部省、地方政府(スペインには17の自治州があります)から出ていて、活動内容ごとに様々な書類や資料を作らなければならないので大変であるとのこと。スペインの海外援助政策は、政府が直接行う援助とNGOを通じて行う援助と2本だてになっているらしい。また、他のヨーロッパの国に比べるとスペインでは、民間企業が資金援助をしたがらないので、パンフレットなどの広告料として集めているとのこと。

 活動費はどのくらいかかっているのか聞いたら100もプロジェクトがあるのでよくわからないとのこと。ただ、事務所と専従スタッフの給料はだけで言えばそうたいしたことはないそうである。この組織はスペインの中では大きい方なのかと聞くと、小さい方だとの答え。国際的なNGOのスペイン支部(英?のOXFAMなど)は本当に大きい規模でやっているとのこと。それでも、マドリードの中心地に5〜6部屋の事務所を持ち、その他にも国内4個所に事務所があるのだから、日本のNGOお寒い現状を知る身としてみれば、やはり羨ましい環境といえる。

 このような活動は以前は教会が中心となっていたが現在はその影響が薄くなってきている。フランコ後は左翼活動の影響もある。ちなみにこの組織は、政党党派からは独立しているとのこと。

 なぜ今回私が、協同組合組織ではないここの話を聞くことになったか?という疑問は最後まで晴れなかったのであるが、結局、マドリッド連合会の事務局長ミゲル・アンヘル氏がこの組織のメンバーで、しばしば活動に協力しているということらしい。

 一番最後に、あなた方の組織の最大の目的は何ですか?と聞くと、「南の国々との連帯」と「民主主義の推進」との答え。シンプルで美しい答えだと思う。しかし、半世紀にわたる侵略の歴史への贖罪の意識があるのかどうかについては、ついに聞けずじまいだった。

 事務所を出たらすでに午後9時半。でもまだ空は明るい。スペインの人々にとってはこれからが夕食の時間だ。繁華街のバスセンターまで歩き、バスで帰途についた。

][<>][<>][ 菊地 謙 ][<>][<>][


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