大量失業克服・地域再生――「協同労働の協同組合」に法の裏づけを
 

「労働者協同組合法」国際フォーラムのご案内


欧州における労働者協同組合と 社会的企業のめざましい発展

菅野正純(協同総合研究所副理事長)

◆CECOPの目ざましい発展

 CECOPは、「欧州労協連」と言いますが、正式には、「欧州労働者協同組合・社会的協同組合・労働者参加企業総連合会」(The European Confederation of Workers Cooperatives' Social Cooperatives and Participateve Enterprises)です。すなわち、伝統的な労働者協同組合だけでなく、「新しい協同組合」の大きな渦をなしている社会的協同組合、そして労働運動の新たな流れとしての労働者自主管理企業を、その主体と戦線に包含する連合組織となっていることがまずもって注目されます。
 その会員は、31の連合組織、61の地域組織、200の協同組合開発機関から構成され、その傘下には、全体で6万企業、150万人の労働者が所属しています。企業の内訳は、工業・手工業33%、サービス38%、建設14%、社会的協同組合(社会サービス供給ないし社会参加支援のための協同組合)13%、文化・教育活動2%です。 「行動計画」は、次のような欧州労協・社会的協同組合の挑戦課題を提示しています。
ーー情報とコミュニケーション:会員組織が欧州の建設に加わり、自らに関わる政策や計画に参加し、行政的・法的な環境を変え、欧州基金にアクセスすることを保証するための情報の提供と、会員の優れた実践の欧州規模での交流
ーー研修・教育:「協同労働」企業経営者のための欧州研修センターの創設や、組合員に対する協同組合の歴史と原則の教育
ーー企業ネットワーク:一つ一つの企業の民主的で柔軟な側面を維持しながら、競争力や規模の経済を保証するための企業のネットワークや事業連合の形成
ーー地域開発:地域の協同組合開発支援機構を発展させ、自治体と結ぶとともに、支援機構を欧州規模でネットワーク化する
ーー女性企業家と平等な機会:女性の研修と新しい協同組合づくりを支援するとともに、その前提として各機関での「ジェンダー・バランス」を確立すること
ーー伝統的部門を固めつつ、文化、旅行、ニューメディア、環境などの新しい分野を開発すること
ーー環境と持続可能な発展:資源の利用を減らしながら、その効率的利用を通じて、持続可能な環境の発展を達成し、適切な生活の質を享受する権利をすべての人びとに保証すること

◆欧州の「社会的経済」の広がり

 CECOPの挑戦は、これを広く包み込む欧州規模の「社会的経済」の中に置くとき、いっそう鮮明にすることができるでしょう。 「*REVES憲章」によれば、欧州の社会的経済は、640万人の人びとの仕事(総雇用の4.4%)を生み出しています。その内訳は、「アソシエーションないしボランタリー部門」59%、「協同組合部門」34%、「共済部門」7%です。これら社会的経済の総セクターは、他の公共・民間の経済セクターよりも雇用を急速に伸ばしており、欧州委員会が「新たな雇用源」と見なす分野ではとくに伸長が著しいと言われています。

*註:REVES=「社会的経済のための欧州都市・州ネットワーク」

◆EUのパートナーとして、 社会的企業が勃興

 大事な点は、これらの躍動が、欧州連合=EUとのパートナーシップとして、「より民主的で社会的な欧州、より開放的で連帯を基礎とした、より市民に目を向けた欧州の実現」という点から位置づけられていることです。とりわけ政府に相当する欧州委員会が、新たな雇用政策の枠組みの中で、社会的経済の重要性を認めるに至ったことは重要です。  事実、この間、CECOPのパイロット事業と、その調査研究によるフォローアップ、事業のいっそうの展開という一連の循環が、EUの資金提供を受けて進められています。  欧州委員会第5総局(雇用・社会・教育)の後援による「社会的企業と欧州における新たな雇用」「欧州におけるコミュニティに根ざした都市再生」、第11総局(環境・核安全・市民保護)の後援による、環境と仕事おこしを結び付けた「グローバル・エコロジー││環境と社会の再生」、第12総局(科学・研究・共同開発センター)の後援による「社会的経済の勃興││欧州における社会的排除に対する新たな回答」をテーマとする欧州ネットワーク(EMES)の立ち上げなど、欧州の経済・社会政策の立案・実行主体としてCECOPは確実に地歩を築いているようです。それは、21世紀的な協同組合と公共政策の新たなあり方を予兆するものであると言えるでしょう。

◆「協同労働者」の定義と 法制化をめざして

 もう一つ驚いたのは、日本で私たちが「協同労働の協同組合」の法制化に取り組んでいるまさにその時に、欧州でも「協同労働者」に関わる定義と統一的な法制化への模索が行われていたことです。  CECOP会員組織の共通のアイデンティティは、「労働者の参加と所有」に置かれますが、この「参加と所有」は、今日では「企業のリスク、経営、運営、および付加価値の分配」に及び、参加する人びとが社会のニーズに責任を持って応える、「知的で適応可能な構造」の企業創造の挑戦に至っていること。それは、賃金労働者とも、自営業者とも異なる「第三の労働モデル」であり、こうした「協同労働者(associated worker)」の地位と「それに照応する義務、リスク、権利と原則を定義する憲章」の制定が求められていることが述べられています。


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