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協同組合アイデンティティに関するICA声明(1995)
出典:「21世紀の協同組合原則」日本協同組合学会訳編
定義
協同組合は、人びとの自治的な組織1であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体2をつうじて、共通の経済的、社会的、文化的ニーズと願いをかなえることを目的とする。 価値 協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。協同組合の創設者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直3、公開、社会的責任、他人への配慮という倫理的価値を信条とする。 原則 協同組合原則は、協同組合がその価値を実践するための指針である。 第1原則 自発的で開かれた組合員制4 協同組合は、自発的な組織であり、性による差別、社会的、人種的、政治的、宗教的な差別を行わない。協同組合は、そのサービスを利用することができ、組合員としての責任を受け入れる意思のあるすべての人びとに開かれている。 第2原則 組合員による民主的管理 協同組合は、組合員が管理する民主的な組織であり、組合員は、その政策立案と意思決定に積極的に参加する。選出された役員5として活動する男女は、すべての組合員に対して責任を負う。単位協同組合の段階では、組合員は平等の議決権(1人1票)をもっている。他の段階の協同組合も、民主的方法によって組織される。 第3原則 組合員の経済的参加 組合員は、協同組合に公正に出資し、その資本を民主的に管理する。少なくともその資本の一部は、通常、協同組合の共同の財産6とする。組合員は、組合員になる条件として払い込まれた出資金に対して、利子7がある場合でも、通常、制限された利率で受け取る。組合員は、剰余金を次のいずれか、またはすべての目的にために配分する。 準備金を積み立てて、協同組合の発展に資するため覧-その準備金の少なくとも一部は分割不能なものとする覧 協同組合の利用高に応じて組合員に還元するため 組合員の承認により他の活動を支援するため 第4原則 自治と自立8 協同組合は、組合員が管理する自治的な自助組織である。協同組合は、政府を含む他の組織と取り決め行う場合、または外部から資本を調達する場合には、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自治を保持する条件のもとで行なう。 第5原則 教育、研修および広報 協同組合は、組合員、選出された役員、マネージャー、職員がその発展に効果的に貢献できるように、教育と研修を実施する9。協同組合は、一般の人びと、特に若い人びとやオピニオンリーダーに、協同することの本質と利点を知らせる。 第6原則 協同組合間の協同 協同組合は、地域的、全国的、(国を超えた)広域的10、国際的な組織をつうじて協同することにより、組合員にもっとも効果的にサービスを提供し、協同組合運動を強化する。 第7原則 地域社会への関与11 協同組合は、組合員が承認する政策にしたがって、地域社会の持続可能な発展のために活動する。 (訳注) 1 associationについては、「人と人の結合体」という意味で「組織」の訳語をあてた。 2 enterpriseについては、「事業を行う実体」という意味で「事業体」という訳語を採用した。 3 honestyについては、「誠実」と「正直」に訳語が分かれたが、組合員の倫理的価値として後者をとった。 4 membershipについては会員制組織という意味で「組合員制」の訳語をあてた。 5 elected representativesについては総代も含めるが、主として理事を指していることから「選出された役員」という訳語をとった。 6 common propertyについては法律上の共有、合有、総有を含むことから「共同の財産」の訳語が適切であると考えた。 7 compensationについては「配当」と「利子」に訳語が分かれたが、マクファーソン博士のバックグラウンド・ペーパーを踏まえて後者をとった。 8 autonomyとindependenceについては定義との関連も含めて「自治と自立」の訳語を採用した。 9協同組合で使用されている慣行から、trainingは「研修」、managersは「マネージャー」、employeesは「職員」の訳語を採用した。 10 regionalについては、アジアなど複数の国を含む概念であるとともに「環日本海圏」のように近隣の「地方」を含む、国を超えた概念であることから「(国を超えた)広域的」という訳語を採用した。 11 communityについては、これが地理的概念より広がりをもったものであることについてはコンセンサスがあったが、主として地域社会を指していることから「地域社会」とした。Concernについては「関心」では弱いという指摘もあり、「関与」の訳語を採用した。 |