『協同の發見』2000.4 No.95 総目次
JICR.ORG通信
手島 繁一(協同総研常任理事/法政大学)
『協同の発見』第95号(2000年4月)

■「春爛漫」のトップページへ

 新学期が始まりました。4月の声を聞いた途端に、大学のキャンパスに賑やかさが戻ってきました。わがJICR.ORGも新学期を機に、トップページを春バージョンに模様替えしました。満開の桜の写真画像をタイトル・ロゴの背景に貼り付けました。精々、Web上でも陽春の華やかさを味わって下さい。

 トップページの模様替え対して、さっそく反応がありました。わがサイトの範としている大原社会問題研究所のサイト=OISR.ORG(オイサーオルグと呼ばれています)の初代主宰者である二村一夫名誉研究員からでした。

 「拝見しました。カラフルで、Benettonならぬ United Colors of JICRですか。イタリアン・スタイルとでもいうのかな。ハデハデですが、なかなかの色使いです。季節感にあふれ、一足早く満開の桜を見せてくれるのも心憎い。ただ、これだけのものを、それぞれの季節にあわせて行くのは容易ではないでしょうね」

 また現主宰者である野村一夫研究員からは、見栄えの面だけではなく、トップページの機能面でも、評価を受けました。「・・・たえず動いている生産的な組織のサイトとしては、むしろ動態的なトップの方がいいかもしれません。説明もシンプルではなく饒舌にするべきでしょう。・・・その点、勢いのあるイトーヨーカドー的なJICR.ORGはいい感じです」。「協同総研のいいところはなによりもそのホスピタリティにあります」。

 以上の意見は大原社研のメーリングリスト(ML)で頂いたものですが、このMLではわがJICR.ORGのトップページに関する意見のやりとりを契機にして、トップページを構造的なものにするのか、動態的なものにするのかといった点について活発な議論が戦わされています。結論的には、大原社会問題研究所のサイト=OISR.ORGのトップページも動態的なものに変えようという方向になってます。JICR.ORG的な要素を取り入れていこうということです。

JICR.ORGの改善点

JICR.ORGは動態的トップページの典型として評価されたわけですが、まだまだ改善の余地があります。

 例えば研究所の重点課題である労協法制定にむけた活動、あるいは地域福祉事業所の確立と展開への取り組みなど、いわゆる運動情報が直ちにとはいわないまでも、適宜掲載されるということにはなっていません。「労協法制定推進本部の活動」というコーナーを設けたのですが、このコーナーは今のところ空白です。

 これらの活動が停滞していて情報がないのではなく、情報を集約する体制やそれを流通させるシステムに問題があるのです。

 実践組織である労協連、センター事業団、地域事業団、高齢協などとの間で、日々の活動を集約、交流し、情報を整形し、流通させるシステムを作り上げる課題に本格的に取り組むべき時期にきています。

 その第一歩というわけでもないのですが、わたしの手が空き次第、労協連関連組織を横断した、インターネット活用講座の実施に取りかかりたいと思います。

■「インターネット元年」から 「Eコマース元年」へ

 インターネットに関する最近の話題を二つほど紹介しましょう。

 一つは、インターネットの活用水準と内容が一段とバージョンアップしたという話題です。 ある調査によれば、わが国の上場企業のうち8割がホームページ(HP)をもっているそうです。その多くは1995年に立ち上げられたもので、そういう意味では95年が「インターネット元年」であったと言えるでしょう。

 ところがインターネットの技術革新や社会的浸透は予想を超えて進み、1999年は「電子商取引(Eコマース)元年」と呼ばれれるようになってきました。

 つまり、HPを持つことで満足し立ち止まっているのではなく、それをいかに活用するか、企業の場合だと、どのように事業活動に結びつけるか、ということが問われる段階にきたということです。

 電子商取引(Eコマース)の興隆は、97年夏に発表された米国商務省報告『グローバルな商取引の枠組み』ですでに予言されていました(この報告については拙稿「インターネットが変える労協運動(上)」『仕事の発見』第37号、で簡単に紹介しています)。驚くべきことは、二年半ほど前に描かれた近未来像は、「いまここにある現実」になっているということです。IT(情報技術)革命の最中にあることが実感されるこのごろです。

 もちろん問われているのは企業組織だけではありません。わたしどものような社会的運動組織あるいは研究機関の場合でも、IT(情報技術)革命の成果をどん欲に取り入れ、組織と運動の抜本的更新をはかることが求められています。

■「iモード」の爆発的拡大

 わたしたちが今、IT(情報技術)革命の最中にあることを実感させられるもう一つの事例は、「iモード」の爆発的拡大です。

 「iモード」とは、NTTドコモが98年2月に発売した携帯電話の端末です。従来の携帯電話端末にインターネット利用機能を付加したものです。つまり、携帯電話でもHPの閲覧(ブラウザ機能)やメールの送受信が出来るようにしたものです。

 3月に発表された統計によると、発売以来1年で加入者が500万人を突破したということです。ドコモ自身、発売当初は「3年で1000万人」という見通しであったのですから、まさに爆発的拡大といってもよいでしょう。日本最大の商用プロバイダーである「@ニフティ」の加入者が360万人といわれていますから、「iモード」は立ち上がりからわずか1年で日本最大のインターネット接続業者になってしまったわけです。

 「iモード」の爆発的拡大に追随して、ドコモ以外の通信各社もインターネットを利用出来る携帯端末を市場に投入した結果、4月にはついに携帯電話、自動車電話、PHSを合わせた移動電話の加入者数は固定電話の加入者数を追い抜いてしまいました。電話が誕生して以来の大事件です。

 携帯電話でインターネットが利用できるとなると、インターネットを利用する人はさらに増えるでしょう。そうすると、インターネットの利用の仕方にも大きな変化や進化がもたらされることは確実です。「誰でも、いつでも、どこでもインターネット」の時代が見えてきました。

■COPACにリンクされました

 さて、大きな話はともかくJICR.ORGの進化はどうなっているんでしょうか。

 本誌前号以来の最大のニュースは、COPAC(協同組合振興推進委員会、ILOなど3国連機関とICAなど4国際NGOで構成)の運営するサイトに、「労働者協同組合法第1次案」が掲載された、ということでしょう。

 3月21日、吉田省三会員(長崎大助教授、この間「COPAC - Cooperative Legislationに労協法案をリンクしてもらおうプロジェクト」ボランティア委員として活躍していただきました)から嬉しいメールが入りました。

 「ようやく、Maria Elena Chavezさんから返事がきました(^^)。3月20日の更新で、労協法案をリンクしたとのことです。さっそく行ってみましたら、以下の4個所(ページ)でリンクしてもらっていました。JICRのトップページもソースとしてリンクされています。

Workers' Cooperative Law (in Japanese)Commentary to the draft law in English - in Japanese

Source: Japan Institute of Co-operative Research(JICR)

http://www.copacgva.org/legislation.html

COPAC - Cooperative Legislationというサイトは、各国の協同組合法を網羅するリンク集であるのですが、わが国ではこれまで、どういう訳か漁協法しかリンクされていなかったのです。したがって、農協法、生協法という先輩協同組合の根拠法より先に、労協法が、しかも「法案」段階で国際的リンク集に載っかることになりました。研究所のインターネット活用作戦の勝利でもあるんですが、国際的認知がもう一段と進んだということですから、それこそ「グローバル・スタンダード」に見合ったサイト制作や運営に心がけなければと、身を引き締めております。

 折しも、労協法案は第1次案の不十分な点を更新した「第2次案」を作成する作業が進んでいるところです。「第2次案」作成作業にとっても、大きな励みとなるでしょう。

 改めて、COPACThank you very much

 仲介の労を執られた吉田さんにTante Grazie

■この間の更新情報

 本誌前号以降の、主な更新情報をお知らせします。

(1)「石塚秀雄の海外ワーカーズコープ漫遊記」に、「中国」「ドイツ」「イスラエル」「アイルランド」の各労働者協同組合の紹介記事を追加掲載しました(3/8)

(2)スペイン語版の協同総合研究所の案内を掲載しました。吉沢明さんのご協力を頂きました。技術的問題がありまして、ネットスケープ・コミュニケーターでは一部文字化けします(3/24)

(3)第4回理事会(3月19日)の議案書を掲載しました。労協法制定のための活動、地域福祉事業所に関わる研究活動、第10回総会・研究集会、協同集会などについて検討しました。各項にリンクが付いており、前回理事会以降の研究所の活動が立体的に眺められます(3/26)

(4)公開研究会「21世紀協同経営論研究会」(3月19日)で岡安喜三郎・前全国大学生協連副会長理事が行った報告を全文掲載しました。(4/1)

(5)『協同の発見』2・3月合併号が発刊されました。特集は「労働者協同組合法をいまこそ」で、そこには11の労働者協同組合、高齢協、ワーカーズコレクティブの実例が掲載されています。それがすべてWeb上で読むことができます(4/1)

(6)「労働者協同組合法の部屋」に「労協法文献リストー労働者協同組合と労協法を考える」を掲載しました。労協法だけではなく、広く労働者協同組合に関する国内出版物や論文を採録しています。労働者協同組合について関心のある方にとって、必須の文献リストです(4/7)

 なお、「協同総合研究所のインターネット活用の経験と現況」と題した「JICR.ORG通信」のオンライン特別版を掲載しております。第4回理事会に提出された別紙報告です。これまでの経過をまとめたものであり、またJICR.ORGの「サイト案内」になっていますので、ご参照下さい。


4月号目次協同総合研究所(http://JICR.ORG)