『協同の發見』1999.12 No.92 目次

協同のつどいin九州&山口
 
イタリア・レガコープ第35回大会
――協同組合法制の改革を中心に
 

吉田 省三 (長崎県/長崎大学 mail

1. はじめにーレガコープ第35回大会
  1-1 大会参加者の発言
1-2 レガコープ第35回大会時の運動の到達点
2. レガコープ第35回大会の主要な議題
2-1 協同組合法制の改革
2-2 協同組合の資本調達
2-3 小協同組合 Psc
2-4 新マルコラ法
2-5 組合員労働者法案
2-6 協同組合の企業統治
3 協同組合全国連合の統一問題
4 南部、失業問題と協同組合
5. おわりに
資料 「協同組合、とくに組合員労働者の地位に関する法制の改正」1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
労働者憲章(称)1|8|14|15
表1. 2大全国連合 Legacoop, Confcoorerative
表2. レガコープ加入の企業: 事業高、雇用、組合員
表3. 上位412協同組合
表4. 中小企業の定義

1. はじめに――レガコープ 第35回大会

 イタリア最大の協同組合の全国連合である協同組合・共済全国連盟(略称、レガコープ Legacoop)は、今年4月14日から16日までローマで第35回全国大会を開催した。大会テーマは、「自由市場と連帯社会で成長するため協同組合を再考する」である。「自由市場」化に対しては、協同組合の資本調達の強化を含む協同組合企業の競争力強化により対応する。急速なグローバリゼーションによる社会的弱者の排除に対しては連帯、社会的解放、参加民主主義などの協同組合の社会的機能の強化により対抗する。という戦略が大会テーマの設定からは読み取れる。欧州統一通貨の発足、戦後最悪の失業率という今日的状況の中での選択であるとともに効率性と社会性、自律と統合の両立という協同組合運動の古典的課題に対する挑戦でもある。大会決定が提起した南部問題、福祉改革、協同組合法制、協同組合の全国連合の統一などの問題のうち協同組合法制の改革を中心に検討する。

1-1 大会参加者の発言

 大会には、537人の代議員の他、政府、労使、政党、開催地自治体、協同組合の全国連合の代表者が参加し発言した(1) 大会での発言者。政府: 首相、労働次官、経済相、農業相、制度改革相、環境次官、労働相、財務相。労使: イタリア工業連盟(Confindustria)副会長、イタリア労働総同盟(Cgil)書記長。政党: 左翼民主 (Ds) 書記長、国民同盟(An)労働政策責任者。自治体: ローマ市長、ラツィオ州知事。協同組合: Confcooperativo理事長、Agci理事長、Unci理事長。大会へのメッセージ: 共和国大統領、上院議長、下院議長、イタリア銀行総裁、イタリア司教会議議長。(1)。初日14日にイヴァーノ・バルベリーニ理事長が大会報告を行い、それに続けて代議員および閣僚など大会参加者が発言した。最終日は、バルベリーニ理事長が議論の総括をおこなった。また大会は、同理事長を再任した。

 大会でのダレーマ首相の発言は、旧イタリア共産党員である首相がカール・マルクスを引用して赤い協同組合の大会で演説したと、Corriere dell sera など一般紙に報道された。日本の日本経済新聞にあたる Il Sole-24 Ore は大会の開催中毎日詳しい関連記事を載せた。

 第35回大会は、96年に発足した左翼民主(党)が入閣した中道左派政権の下で初めて開催された大会となった。1995年3月に開催された第34回大会は、菅野論文(2) 菅野正純, レーガの「社会的経済戦略」イタリア協同組合運動の展開過程, 富沢賢治・中川雄一郎・柳沢敏勝編著『労働者協同組合の新地平』, p.213.(2)によれば、新自由主義の立場に立つ政府(テクノクラート内閣のディーニ内閣)に対し、「新自由主義」に対する対案の提示の大会であった。第35回大会は、政府との対決よりも協調が基調の大会となった。政府からは、首相を含む6人の大臣が参加し発言し、大会のテーマとくに外部資本の導入についての新しい提案に賛意を表明した。首相発言の翌日には、発言の一部が閣議決定されるという連携が見られた。上記 Il Sole-24 Ore は、出席代議員自身のこんなにタイミングよく決定されると期待していなかったという発言を報道している(3) Il Sole-24 Ore, 17 aprile 1999, p.11.(3)。他方、野党国民同盟(An)の労働政策責任者がレガコープの大会に初めて参加したことも注目される。地方自治、制度改革での共同、協同組合および相互扶助の観念は、新憲法においても維持されるべきであると発言している(4) Legacoop, 35^ Congresso - Intervento del Responsabile Politiche del Lavoro Alleanza Nazionale, Giovanni Alemanno.(4)

1-2 レガコープ第35回大会時の運動の到達点

 現在イタリアには、約7万7千の協同組合がある。約50万人の従業員が働いており、これはイタリアの全労働の約2%、民間の雇用労働の約4%に相当する。このうち4大全国連合(Legacoop, Confcooperative, Agci, Unci)に属しているのは約30%である。2大全国連合の1998年の事業高等を比較すると表1.のとおりである。小規模企業が多いConfcooperative の方が加盟企業数は多い。

表1. 2大全国連合 Legacoop, Confcoorerative の比較
Legacoop Confcooperative
企業数: 10.210 17.501
組合員: 4.519.145 2.622.000
従業員: 226.700 237.019
事業高: 51兆0600億リラ 47兆リラ
1リラ=0.07円 (3兆5700億円) (3兆3000億円)

 2大全国連合の組合員に Agci, Unci および人民銀行の組合員を加えると約9百万-1千万になりイタリア人の6人に一人が協同組合の組合員ということになる。表2.により レガコープの1997-98年の事業をみると農業と生産労働の組合員数を除いて全分野で事業、雇用、組合員が増加している。とくに小売商、サービス・旅行、消費者の部門での伸びが著しい。表3. からは、首位412企業で25兆8170億リラの事業高がありレガコープ加盟企業全体の50%を超えている。

表2. レガコープ加入の企業: 事業高、雇用、組合員 1997-98
雇用 組合員 事業高(10億リラ)
部門 1997 1998 1997 1998 1997 1998
農業 8.206 8.600 4.8 19.050 19.260 1.1 280.000 277.145 -1.0
漁業 1.141 1.180 3.4 2.800 2.900 3.6 20.500 20.500 0.0
生産労働 8.788 9.060 3.1 34.273 34.650 1.1 31.320 30.850 -1.5
サービス・旅行 6.818 7.500 10.0 117.261 125.000 6.6 108.491 115.000 6.0
消費者 13,801 14.560 5.5 34.060 36.000 5.7 3.364.399 3.610.000 7.3
小売商 5.427 6.350 17.0 3.135 3.240 3.3 5.450 5.650 3.7
文化 604 610 1.0 2.450 2.500 2.0 14.500 14.500 0.0
住居 2.126 2.190 3.0 1.660 1.700 2.4 432.00 435.000 0.7
その他 927 1.010 3.9 1.430 1.450 1.4 10.000 10.500 5.0
合計 47.838 51.060 6.6 216.119 226.700 4.9 4.266.660 4.519.145 5.9
Fonte: Lncm, Ripensare la cooperazione per crescere in un mercato libero e in una societa' solidale. Temi per il XXXV congresso nazionale.

表3. 上位412協同組合
1997 1998 1999(予想)
雇用(人) 80.282 85.874 90.210 5
事業高(10億リラ) 24.513 25.817 27.612 7
投資(10億リラ) 1.536 1.869 5
Fonte: Lncm, Ripensare la cooperazione per crescere in un mercato libero e in una societa' solidale. Temi per il XXXV congresso nazionale.

 このような運動の到達点に対し、『協同組合の一世紀』(5) Giuliano Muzzioli e Alberto Rinaldi, Un secolo di cooperazione, La Cpl Concordia dal 1890 al 1999, il Mulino, 1999, p.397.(5)の著者たちは、'90年代イタリアの協同組合は、新たな発展段階を切り開きつつあり、「資本主義企業に対する『協同組合の挑戦』は今や重要で困難な歴史的時期に直面しつつある。」(ジュリオ・サペッリ)と評価している。


2. レガコープ第35回大会の主要な議題

2-1 協同組合法制の改革

 レガコープ第35回大会は、「新しい」協同組合と国家の協定として協同組合法制の改革を要求した。新協定という意味は、1947-48年のバゼービ法、憲法第45条による協同組合法制の枠組みが協同組合運動と国家との最初の協定であり、それに代わる新しい枠組みが、その後の50年の社会経済の変化に対応して求められているということである。

 社会的協同組合法(L. 381/1991)の制定、協同組合新規定(L.59/1992)の制定など90年代前半の協同組合法制の改革に続いて、90年代後半に1997年8月7日法律266号「ベルサーニ法」が制定され「小協同組合」の法制化、マルコラ法の改正が行われた。また組合員労働者の地位に関する法案が審議中である。法務省に設けられたアントニオ・ミローネを委員長とする委員会は、協同組合を含む民法の会社法部分の改正を検討してきたが、ようやく法案要綱が決定された。同法案要綱は、いわゆるコーポレート・ガバナンスに関する改正も含んでいる。

2-2 協同組合の資本調達

 1992年法律第59号「協同組合に関する新規定」は、賛助組合員など協同組合が外部の資金を調達する手段を設けた。今回の大会ではさらに進んだ立法の提案が行われた。協同組合の資本調達に関して次のような提案をしている。

 不分割積立金は、協同組合の本来的な原則であり堅持する。新法案では、(1)主要部分を内部および外部の相互扶助にあてる不分割積立金とする。(2)残りの小部分を分割可能積立金とし賛助組合員に対する配当にあてる。(1)に対しては、非課税を求める。(2)は、課税の対象とするというものである。この提案が、大会テーマの自由市場に対応する部分である。

 Legacoop が1998年10月にボローニャで開いた協同組合セミナーでのアマルティア・セン報告「協同組合とグローバルな倫理」は、協同組合と参加の問題、資本主義内部の社会主義的要素としての協同組合、エミリア・ロマーニャ州の協同組合経済などの興味深い問題提起を含むものである。理事長報告は、セン報告の次の部分を援用し大会の提案を補強している(6) Legacoop, 35^ Congresso Nazionale, Relazione del Presidente, Ivano Barberini, p.18.(6)

「拡張過程に入る協同組合企業の資本形成の困難を見ると、企業が規模の面で大きな成功を収めた場合にも、その成長には限界がある。それゆえ、協同組合企業が、自らの固有の性格を失うことなく、契約を結んで外部からの投資を実現する可能性が検討されなければならない。」(7) Cooperazione e etica globale: la relazione del premio Nobel Amartya K. Sen al seminario Legacoop. アマーティア・セン「協同とグローバルな倫理」(菅野正純訳),協同の発見, 1999.5, p.8(7)

 大会2日目に参加したダレーマ首相は、株式会社は所有の社会化であるというマルクスをひいて、協同組合の外部市場からの資本の導入というバルベリーニ理事長の提案に同意を示した(8) Legacoop, 35^ Congresso - Intervento del Presidente del Consiglio, On.Massimo D'Alema(8)。アマート制度改革相(当時)およびヴィスコ財務相も大会提案を承認する発言を行った(9) Legacoop, 35^ Congresso Nazionale Intervento di Giuliano Amato, Ministro per le riforme istituzionali e Intervento di Vincenzo Visco, Ministro delle Finanze.(9)

 協同組合の資金調達の容易化は、上記ミローネ委員会で検討中の民法第5編第6章の協同組合法制の改正により行われる予定である。ミローネ委員会の法案要綱は全11条からなり第5条の協同組合法制に関連する部分は以下のとおりである。

第5条 協同組合
第1項 民法第5編第6章及び関連法による協同組合の規則の改正は、第2条に定められた一般原則に適合しさらに次の一般的原則に依拠する。
a) 協同組合の組合員による相互扶助目的の追求を保障する;
b) 協同組合企業の資本市場へのアクセスを融資組合員の適正な保護により支援する;
c) 組合員の総会討議への参加及び経営に対する内部の統制の機構の強化を支援する;
d) 憲法の規定に従って、助成協同組合に対する政府当局の統制を制限する。

第2項 改正はとくに以下の原則及び指導基準に依拠する:
a) 協同組合に、指示された規則に適合する限りにおいて、株式会社及び有限会社に関する法規を協同組合企業の性格及び主体数の増加を含むその能力に応じて適用することを規定する。
b) 株式会社に関する法規を、両立するかぎり、融資組合員が参加する協同組合又は債券を発行する協同組合に適用することを規定する。法規は、資産計画及び経営計画により、協同組合組合員により追求される相互扶助目的を保全しながら、融資組合員に適正な保護を保障しなければならない。このため、協同組合組合員及び融資組合員の利益に対する権利並びに積立金の分配に対する制限、協同組合組合員に対する割戻しを定款による自律性に可能なかぎり十分な領域を留保し、規制する。
c) 資本市場に対する割戻しを奨励する目的で、現行法に規定された相互扶助目的及び積立金の特性はいかなる場合においても除外することとし、資産及び経営の諸法により与えられる融資、持株及び非持株の手段の可能性、制限及び条件を規定する。
d) 法律で協同組合の構成及び相互扶助目的から課される制限にもかかわらず、投票権の行使の委任の可能性の拡大を通じて、社会的組織の開放及び総会の討議に対する組合員の参加を支援することを規定する;
e) 定款で理事会の職務の兼任及び再任に対する制限を定めること、また非組合員に対する同様の制限を可能にすることを規定する;
f) 1人1票の投票の一般原則は、協同組合の組合員の相互扶助的利益と融資組合員の性格を考慮して、例外とすることができることを可能にする;
g) 協同組合に民法第2409条の司法的統制を規定すること、1993年9月1日立法政令第385号第70条第7項及びその修正は例外とすることを規定する。
h) 助成協同組合を定義すること及び業種の連合会の機能を評価し監督の機構を整備すること;
i) 非助成協同組合に対する政府当局の統制を廃止する;
l) 協同組合の法規を銀行業務を行う協同組合の法規と調整すること。
(Il Sole-24 Ore, 29 ottobre 1999, pp.26-27.)

2-3 小協同組合 Psc

 ベルサーニ法(法律1997年8月7日第266号)は、中小企業・協同組合にたいする支援を中心とした緊急経済対策法であり、起業支援に重点をおいた新自由主義的立法である。同時に、協同組合法制についても重要な改正点を含んでいる。

 ベルサーニ法は、第21条で小協同組合 Piccola societa' cooperativa, Psc という協同組合形態を最終的に認めた(10) ベルサーニ法第21条 小協同組合
1. 小協同組合は、簡略化した協同組合形態であり、3人以上8人以下の自然人だけにより構成される。
2. 社会的呼称には、いかなる場合にも「小協同組合」を含まなければならない。この表示は、相互扶助目的を持たない会社による使用は認められない。
3. 小協同組合には、本条の規定と両立するかぎり協同組合に関する法律が適用される。
4. 小協同組合において、経営権が総会にある場合は、法的に代表権を有する理事長を任命しなければならない。
5. 小協同組合には、民法第2488条以下の有限会社の監査役会の規定が準用される。
6. 小協同組合の責任は、組合の財産のみをもってあてる。
7. 法律の定める要請により小協同組合は協同組合への転換を決定しなけらばならない。小協同組合は協同組合にだけ転換することができる。
8. 小協同組合の転換および合併に際しては民法第2498条以下が適用される。(10)。Pscは、1993年暫定措置令(Decreto legge, D.l.)第232号で設置が認められその後も暫定措置令により延長されてきた。しかし D.l.1996年第405号は法律に転換されないまま失効したため、1996年12月1日以降は Psc の設立が不可能になっていた。ベルサーニ法は第21条で、Psc を新しい協同組合の形態として法的に承認した。Psc は3人以上8人以下の自然人のみにより構成される。8人という組合員の上限を設けたことにより協同組合の開放原則を修正した。しかしこの点については、Psc の設立の容易性及び小協同組合の協同組合への転換(会社への転換を認めていないこと)を考慮すれば協同組合の原理から逸脱した修正とはいえない。ベルサーニ法は、Psc の設立と関連して同法第25条で生産労働協同組合に関する規定の改定、第24条で専門職による会社設立を禁止していた1939年法律第1815号を廃止した(11) ベルサーニ法第25条 生産労働および消費協同組合
1. 臨時国家元首令1947年12月14日第1577号および修正法第22条は以下のように修正する。
a)第3項「公共入札を許可される生産労働協同組合は、15人を下回ってはならない」は廃止される。
b)第4項は廃止される。
c)第5項は以下のように修正する。
「しかし労働・社会保障省は、協同組合のための中央委員会の意見を聴いて、組合員50人に満たない消費協同組合で、そのサービスの特殊な性質を考慮し、その組合員にだけ特別のサービスを提供するものの登録を許可することができる。」(11)

 その他ベルサーニ法ではマルコラ法の修正、協同組合公報(Busc)の簡素化、女性企業家支援法、商業および観光業にたいする基金、中小企業の機械にたいする投資の支援法(サバティーニ法の修正)などについて定めている。このうちマルコラ法の修正については次項で述べる。


2-4 新マルコラ法

 マルコラ法(L.46/1985)は、協同組合に対する有利な融資を定める第1部(第1条-第13条)と、倒産企業の協同組合による再建を支援する第2部(第14条以下)からなっている。同法は、1987年から1993年の間に6000人の労働者の直接雇用と3000人の間接雇用を可能にしたという実績をもっている。第2部の目的のために、三大協同組合の連合は、三大労組と共同で産業融資会社 Cfi を設立している。

 マルコラ法は、上記ベルサーニ法(L.266/97)第17条で改定されたが政府の施行令は公布されていなかった。1999年7月10日付 Il Sole-24 Ore によればイタリア政府は以下の措置を行い新マルコラ法の施行令を公布すると報道されている。

 協同組合企業(事業連合を含む)にたいしてのみ有利な融資をするマルコラ法の第1部(1-13条)は、欧州連合の競争当局から競争政策上の問題を指摘されていた。そこでイタリア政府は、法律上は全協同組合企業が対象となっているが、中小企業の定義に合致する協同組合企業のみ Foncooper 基金から融資を受けることができるようにすることで欧州連合と合意した(欧州連合の中小企業の定義は表4.のとおりである)。

表4. 中小企業の定義
製造業 サービス業
小企業 中企業 小企業 中企業
従業員 50人 250人 20人 95人
売上 7 40 1,9 7,5
総資産 5 27 0,75 3,75
売上, 総資産の単位はユーロ(百万)
中小企業の定義に関する1996年4月3日欧州委員会勧告; 中小企業の特定基準に関する欧州委員会規則への適合のための1997年9月18日工業商業職人業省令

 協同組合法と競争法、国内法と Eu 法の関係が問題になっているのであるが、イタリアの協同組合および職人企業=小企業は憲法上の規定(第45条)を基礎にしている。憲法上の権利を基礎にした措置が質的基準から量的基準へと政府と欧州連合の合意により修正されたことになる。

 同法第2部の雇用水準を維持するための特別基金についての改正で、旧法と異なる点は、産業融資会社 Cfi などの金融持株会社が出資する協同組合の持株の上限(49%)が設定されたことである。

2-5 組合員労働者法案

 生産労働協同組合などで働く組合員労働者(socio-lavoratore)の権利保障に関する法案「協同組合、とくに組合員労働者の地位に関する法制の改正」(イタリア共和国上院 法案 第3512号、末尾の資料)が1998年9月16日に閣議決定され、現在上院で審議中である。法案作成の過程では、協同組合および労働組合の全国組織と労働省の間での協議、首相が任命したステファノ・ザマーニ・ボローニャ大学教授を委員長とする委員会での検討が行われた。

 法案は7条から構成され(第1条 協同組合の組合員労働者/第2条 協同組合の組合員労働者の労働組合の自由/第3条 組合員労働者の経済的待遇/第4条 社会保障規程/第5条 組合員労働者に適用されるその他の規程/第6条 協同組合における規則及び労働関係の認証/第7条 協同に関する監督)、組合員労働者にたいし1970年5月20日法律300号及びその修正(通称「労働者憲章」Statuto dei lavoratori)の条項等を適用する内容となっている。協同組合とは市場で得られるよりも有利な条件での労働機会を提供するものであるという考え方によれば、「労働者憲章」第36条(組合員労働者の経済的待遇)を適用し、最低賃金以上の報酬を保障することは当然である。また「労働者憲章」の第1条(意見の自由)および第8条(意見の調査の禁止)を適用して企業内部における政治的自由の保障も同様である。しかし、第14条(組合結成及び組合活動の権利)および第15条(差別的行為)の適用については検討が必要である。法案はすでに上院の労働委員会を通過している。大会は法案について本質的な変更を加えることなく早期に成立させることを促している。しかし、成立までにはまだ時間を要する。

2-6 協同組合の企業統治

 協同組合のコーポレート・ガバナンス、イタリア流に言うと buon governo dell'impresa の検討は、上述のミローネ委員会の民法の会社法部分の改正の中に含まれている。大会ではこの問題を考えるに際して、組合員の役割、組合員と協同組合との関係の強化、開放原則、組合員の参加、指導部に対するコントロールの強化、監督機関の資格付与を指摘している。


3 協同組合全国連合の統一問題

 レガコープの設立は1886年で大会時に113年の歴史を持っていた。1919年にカトリック系のConfcooperativeが分裂した。戦後は、Agci(1952年)、Unci(1975年)が設立され、現在のイタリアには4つの協同組合の全国連合が存在する。大会は、相違や相互の競争にもかかわらず、改良主義的思想に基づく一致による協同を評価し、全国連合の運動の統一に向け状況分析と具体的な提案をするプロジェクトを発足させることを確認した。


4 南部、失業問題と協同組合

 失業問題の解決は、ユーロ参加後のイタリアの最も重要な課題となっている。大会議案は、南部問題について独立の章を設け協同組合としてこの問題に取組む姿勢を示している。

 9月27日までモデナで開催された全国ウニタ祭に参加したダレーマ首相は、今年4月から7月の統計を示して2日毎に1500の雇用が生まれているという楽観的な見方を示した(12) Il Sole-24 Ore, 26 settmbre 1999.(12)

 しかし、Eurostato 欧州統計局が8月10日に発表した調査で、イタリアの25歳未満の青年の失業率は32,1%('99年4月)で欧州連合中最悪となった(13) Il Sole-24 Ore, 11 agosto 1999, p. 15(13)。また、9月8日、欧州委員会は、報告書・雇用計画'99を発表し、失業問題解決のため加盟国の雇用政策に対する提言を行った。欧州委員会報告書によるとイタリアの労働実行政策はベルギーおよびギリシアとならんで最下位グループに属している。イタリアには6項目の提言を行った Il Sole-24 Ore, 9 settembre 1999. Il Rapporto congiunto sull'ocupazione 1999 e l'aggiornamento delle linee guida per il 2000. 欧州委員会が2年前の97年10月に欧州労働政策の調整の事業を開始してから、勧告をするのは初めてのことであり、報告書は加盟国を4グループに分けて提言を行った。第一グループ(スウェーデン、イギリス、デンマーク、アイルランド)、第二グループ(フランス、スペイン、ポルトガル、フィンランド、オーストリア)、第三グループ(ドイツ、オランダ、ルクセンブルク)、第四グループ(イタリア、ベルギー、ギリシャ)。イタリアは、第四グループに分類されている。欧州委員会のイタリアに対する6項目の勧告は次のとおり。
1. 青年および成人の長期の失業を予防するための一貫性があり測定可能な行動に着手すること。実行政策を改善するためとくに職業紹介のサービスの改革を完成させること。
2. 測定可能な目標を設定した政策により職業教育を促進するための統合戦略を定め実行すること。
3. 法的および税制的に企業の経営負担を軽減することを可能にする手段を採用し実現すること。
4. 税の負担を労働から税収の他の源泉に転換することを目的とする改革を継続すること。
5. 男女間の雇用の格差を縮小するための一般的な政策を採用すること。
6. 2000年に政策の効率性および効果の計測のための指標を得ることができるように統計的モニター監視を改善すること。(Il Sole-24 Ore, 9 settembre 1999, p. 16.)(14)。この勧告は、失業率についてではなく失業にたいする実行計画についてのの評価であった。イタリアは失業率においてもその対策においても欧州最悪という不名誉な評価を得ることとなった。

 大会議案は、失業問題、南部問題を協同組合の優先課題としてとらえ、(1)既存の南部の協同組合企業の安定化、(2)南部への新しい協同組合の設立、(3)中北部協同組合の南部への立地という南部問題に対する方針を決定している。南部における新規起業に支援についてレガコープは、自治体、学校・大学、青年企業家会社(Ig)などとの関係で積極的な役割を果たしてきている。とくに中北部の協同組合と南部の協同組合の結合の強化には、南部の協同組合的発展の牽引車としての役割を与えている。また新設のイタリア開発(Sviluppo Italia)には、南部における起業の支援と投資の誘致の役割を求めている。

 政府も協同組合の役割を認め、大会でアマート制度改革相(当時)は、協同組合は、国家とならぶ雇用問題解決の重要な制度であると発言した。

 Istatの調査によれば、1991年から1995年にかけ小企業は、2.9%雇用を増加させた。しかし、中企業は 0.3%、大企業は14.9%雇用を減少させた。小企業は雇用を正常に維持している。大企業は否定的な傾向を示している。また1991年から1995年の間に、小企業の45.1%が雇用を増加させたのに対し、中企業では43.7%、大企業では32.7%が雇用を増加させている(15) Istat, Rapporto sull'Italia, edizione 1998, il Mulino, pp.65.(15)。大企業が雇用創出力を失う中で、中小企業、協同組合の役割がいっそう重要になっている。大会は、中小企業と協同組合の提携という視点も提案している。


5. おわりに

 本稿は、協同のつどい in 九州&山口(7月4日・福岡)での報告をもとにした。紙幅の関係で、報告の「レガコープ第35回大会とイタリア情勢」は省略し、協同組合法制度の改革の紹介を中心に報告後の経過を'99年10月まで追加して内容を更新した。2週間遅れで届く新聞とインターネット情報により新しい動向を反映させるようにしたつもりであるが、協同組合法制の改革はなお流動的であり、紹介した法案および法案要綱などはすでに資料的価値も持たないものとなっているかも知れない。レガコープの大会が提起したこれらの法案の今後の動向について注目して行きたい。


(1) 大会での発言者。政府: 首相、労働次官、経済相、農業相、制度改革相、環境次官、労働相、財務相。労使: イタリア工業連盟(Confindustria)副会長、イタリア労働総同盟(Cgil)書記長。政党: 左翼民主 (Ds) 書記長、国民同盟(An)労働政策責任者。自治体: ローマ市長、ラツィオ州知事。協同組合: Confcooperativo理事長、Agci理事長、Unci理事長。大会へのメッセージ: 共和国大統領、上院議長、下院議長、イタリア銀行総裁、イタリア司教会議議長。

(2) 菅野正純, レーガの「社会的経済戦略」イタリア協同組合運動の展開過程, 富沢賢治・中川雄一郎・柳沢敏勝編著『労働者協同組合の新地平』, p.213.

(3) Il Sole-24 Ore, 17 aprile 1999, p.11.

(4) Legacoop, 35^ Congresso - Intervento del Responsabile Politiche del Lavoro Alleanza Nazionale, Giovanni Alemanno.

(5) Giuliano Muzzioli e Alberto Rinaldi, Un secolo di cooperazione, La Cpl Concordia dal 1890 al 1999, il Mulino, 1999, p.397.

(6) Legacoop, 35^ Congresso Nazionale, Relazione del Presidente, Ivano Barberini, p.18.

(7) Cooperazione e etica globale: la relazione del premio Nobel Amartya K. Sen al seminario Legacoop. アマーティア・セン「協同とグローバルな倫理」(菅野正純訳),協同の発見, 1999.5, p.8

(8) Legacoop, 35^ Congresso - Intervento del Presidente del Consiglio, On.Massimo D'Alema

(9) Legacoop, 35^ Congresso Nazionale Intervento di Giuliano Amato, Ministro per le riforme istituzionali e Intervento di Vincenzo Visco, Ministro delle Finanze.

(10) ベルサーニ法第21条 小協同組合
1. 小協同組合は、簡略化した協同組合形態であり、3人以上8人以下の自然人だけにより構成される。
2. 社会的呼称には、いかなる場合にも「小協同組合」を含まなければならない。この表示は、相互扶助目的を持たない会社による使用は認められない。
3. 小協同組合には、本条の規定と両立するかぎり協同組合に関する法律が適用される。
4. 小協同組合において、経営権が総会にある場合は、法的に代表権を有する理事長を任命しなければならない。
5. 小協同組合には、民法第2488条以下の有限会社の監査役会の規定が準用される。
6. 小協同組合の責任は、組合の財産のみをもってあてる。
7. 法律の定める要請により小協同組合は協同組合への転換を決定しなけらばならない。小協同組合は協同組合にだけ転換することができる。
8. 小協同組合の転換および合併に際しては民法第2498条以下が適用される。

(11) ベルサーニ法第25条 生産労働および消費協同組合
1. 臨時国家元首令1947年12月14日第1577号および修正法第22条は以下のように修正する。
a)第3項「公共入札を許可される生産労働協同組合は、15人を下回ってはならない」は廃止される。
b)第4項は廃止される。
c)第5項は以下のように修正する。
「しかし労働・社会保障省は、協同組合のための中央委員会の意見を聴いて、組合員50人に満たない消費協同組合で、そのサービスの特殊な性質を考慮し、その組合員にだけ特別のサービスを提供するものの登録を許可することができる。」

(12) Il Sole-24 Ore, 26 settmbre 1999.

(13) Il Sole-24 Ore, 11 agosto 1999, p. 15

(14) Il Sole-24 Ore, 9 settembre 1999. Il Rapporto congiunto sull'ocupazione 1999 e l'aggiornamento delle linee guida per il 2000. 欧州委員会が2年前の97年10月に欧州労働政策の調整の事業を開始してから、勧告をするのは初めてのことであり、報告書は加盟国を4グループに分けて提言を行った。第一グループ(スウェーデン、イギリス、デンマーク、アイルランド)、第二グループ(フランス、スペイン、ポルトガル、フィンランド、オーストリア)、第三グループ(ドイツ、オランダ、ルクセンブルク)、第四グループ(イタリア、ベルギー、ギリシャ)。イタリアは、第四グループに分類されている。欧州委員会のイタリアに対する6項目の勧告は次のとおり。
1. 青年および成人の長期の失業を予防するための一貫性があり測定可能な行動に着手すること。実行政策を改善するためとくに職業紹介のサービスの改革を完成させること。
2. 測定可能な目標を設定した政策により職業教育を促進するための統合戦略を定め実行すること。
3. 法的および税制的に企業の経営負担を軽減することを可能にする手段を採用し実現すること。
4. 税の負担を労働から税収の他の源泉に転換することを目的とする改革を継続すること。
5. 男女間の雇用の格差を縮小するための一般的な政策を採用すること。
6. 2000年に政策の効率性および効果の計測のための指標を得ることができるように統計的モニター監視を改善すること。(Il Sole-24 Ore, 9 settembre 1999, p. 16.)
(15) Istat, Rapporto sull'Italia, edizione 1998, il Mulino, pp.65.


資料 「協同組合、とくに組合員労働者の地位に関する法制の改正」イタリア共和国上院 法案 第3512号
Revisione della legislazione in materia cooperativisca, con particolare riferimento alla posizione del socio lavoratore.


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第1条 (協同組合の組合員労働者)
1. 本法の諸規程は、協同組合内の相互扶助的な関係が目的として組合員の労務の給付(prestazione di attivita' lavorative)を有する協同組合に関するものである。労務の給付は、組合員の労働組織を定める第6条による承認を受けた規則に基づいて行われる。
2. 協同組合の組合員労働者(soci laovoratori)は:
a) 協同組合の機関の形成並びに管理構造の決定及び事業の指導に参加し、企業経営に協力する;
b) 開発計画の作成及び戦略的選択に関連する決定、企業の生産活動の実現に参加する;
c) 組合の資本形成に貢献すること及び事業の危険を分担し、経済的結果及びその目的にの決定に参加する;
d) その専門的能力を、活動の種類と状態、労働給付の量に応じてその協同組合に使用させるようにする。
3. 協同組合の組合員労働者は、自分が参加所属することで又は連帯関係の設定に続いて、さらなる個別の労働関係を結ぶ。これは従属労働(lavoro subordinato)の場合も独立労働(lavoro autonomo)の場合もあり、調整的形態及び継続的形態のこともあり、その労働により、第6条で承認された規則による制限内でその方式及び形態に従い、社会的目的の達成に貢献する。上記の労働関係の設定により税制及び社会保障上の関連効果を獲得する。

第2条 (協同組合の組合員労働者の労働組合の自由)
1. 協同組合の組合員労働者に、1970年5月20日法律300号及びその修正第1条 *第8条 **第14条 *** 及び第15条 **** を適用する。特別な権利行使について、協同組合運動の全国連合と相対的代表権のある労働者の組合組織の間との団体協約中に特定することができる。

第3条 (組合員労働者の経済的待遇)
1. 1970年5月20日法律300号第36条の規程を有効とし、協同組合は、組合員労働者にたいし、組合員労働者の給付した労働の量と質に比例した経済的待遇及び少なくとも類似の給付につき部門又は業種の全国的団体協約に定める最低限又は同一労働部門で通用している平均報酬を下回らない支払いを維持する。
2. さらなる経済的待遇は総会で決定し以下のものに当てることができる:
a) 第2条により締結された合意で定められた方式に従った報酬増大の債権;
b) 実行予算の承認中の割り戻しの債権は、第1項及びa)の報酬待遇の30%を超えない大きさで、報酬の補完により、1947年12月14日臨時国家元首立法政令1577号及びその修正第24条に定める制限の例外として記名で引き受けられた資本の無償増額により、あるいは1992年1月31日法律第59号第5条に定める債権の無償の配布による。

第4条 (社会保障に関する諸規程)
1. 社会保障及び保険の拠出金は、第6条の定める制限内で協同組合の規則により採用される種類の労働関係に関する法律を基準とする。
2. 従業員的組合員労働者(soci lavoratori dipendenti)の経済的待遇は、第3条第2項b)の規程を例外とし、社会保障に関する効果については、雇用労働(lavoro dipendente)の所得と看做される。
3. 政府は、本法の施行の日から6ヶ月以内に、1970年4月30日共和国大統領令602号及びその修正・統合の改革の具体化に関する規程の公布を委任される。さらに1991年11月8日法律第381号及び修正の社会的協同組合の社会保障に関する規程を当事者間の合意に留意し公布することを委任される。

第5条 (組合員労働者に適用されるその他の規程)
1. 第3条1項及び第2項a)の経済的待遇について、民法2120条、1982年5月29日法律297条第2条、1992年1月27日立法政令80条1項及び2項の諸規程が適用される。
2. 民法第2751条の2, 1)号に定めのある労働の提供者に応じた報酬及び待遇の基準は、労働の協同組合の組合員労働者に対しても、第3条1項及び2項a)の定める経済的待遇の制限内で適用することとする。本規程は、同様の諸規程について公的な解釈とする。
3. 雇用の維持、賃金の保障及び雇用の促進のための法律は、第1条1項の定める協同組合の従業員的組合員労働者(soci lavoratori dipendenti)について、従業員的組合員労働者についての現行の規程の制限と条件で、適用することとする。
4. 組合員労働者と協同組合の間の労働関係に関する内部の紛争は、民事訴訟法第409条3)号の定める紛争に含まれる。定款は、民事訴訟法第806条以下の仲裁手続への委任を定めることができる。仲裁組織の構成は、当事者の同数の代表者で構成される代表権をあらかじめ定める必要がある。

第6条 (協同組合における規則と労働関係の認証)
1. 政府は、本法の施行の日から6ヶ月以内に、協同組合が組合員労働者と以下の原理及び指示基準に依拠し設定した規則、労働関係の認証に関する規程の公布を委任される。
a) 協同組合は、総会で承認された適切な規則により、組合員の労務の給付につき、その労働関係の型と方式について定める。規則は次の事項を定めなければならない。
1) 従属労働(laboro subordinato)の場合には、適用される団体協約、資格又は職務の所属の方式を定める基本的な法律上の制度、労働時間及び休息時間に関する規則、処罰制度、関係からの脱退のケースに従い、組合員の地位の喪失又は維持を定める定款あるいは法律の規程に留意する。最後に、組合員の地位に留意し企業所在地で適用される特別な方式を定めることができる;
2) 他の形態の労働関係の場合には、適用される団体協約、労務の給付の対象となる資格、報酬決定の基準及び給付の期間、費用の割戻しの規則、労働給付の実行に関る協同組合の権限と統制の形態、関係からの脱退の場合に留意し、組合員の地位の喪失又は維持を定める定款あるいは法律の規程に留意する。
b) 雇用水準を守るために、企業の危機の計画を決定する協同組合総会の可能性;
c) b)号の計画の策定の承認手続及び第3条の組合員の経済的待遇の一時的縮小の可能性。
1989年10月9日暫定措置令及びその法律への転換、1989年12月7日法律389号による修正の第1条による待遇の一時的縮小の発効。計画の全期間にわたる組合員の間での企業によりもたらされた利益の配分の禁止。危機の期間中、経済的待遇の縮小と雇用維持及び賃金保障のための法律による利益の利用の二者択一;
d) 新しい企業家の振興を目的とする協同組合の新規設立では、協同組合の総会が第2条による合意により決定された方式に従い発足の計画を決定する可能性。
e) 県労働局での承認にあたる機関を協同組合運動の全国連合と相対的代表権を持つ労働者の組合組織の同数の出席による決定、あるいは、第2条による合意により設立された双方向の機関において特定すること;
f) 承認の場所の編成及び関係書類の記帳及び保存の基準の方式の承認に関する規程の明記;
g) 現行の職務及び給付の実際の方式の対応についての係争で書類による承認の対象の結果に関する場合又は関係の資格に関する係争の場合、証明についての義務的な仲裁申立を所管する機関に助力を求める当事者に対する義務。民事訴訟法410条以下及び806条以下の規程の例外とし、仲裁申立中の当事者のとる行動に留意することを定めている民事訴訟法409条3)号の規程に関係する司法当局に属する権利は有効とする。
h) 労働関係の証明の証拠となる計画の価値は、第三者にたいしても、規則によるものと労働給付の展開により実現されたものが一致する場合のみである。
i) 発効から12ヶ月後の労働・社会保障省による、e)の連合及び労働組合組織の意見を聴取した、認証に関する現行規程の審査。
2. 第1項の立法政令案は少なくとも委任権の行使の失効の40日以前に共和国下院及び上院に送付される。議会の本件関係委員会は、送付の日から30日以内にその見解を表明するものとする。万一、委員会の見解に予定されている期限が、第1項に委任権の行使に予定されている期限の失効に先行し30日内に失効した場合には、60日間に延長される。
3. 第1項の規程の施行の日から18ヶ月以内に政府は、第1項i)号により実施された検査にも基づき、第2項の方式により修正及び訂正の諸規程を公布することができる。

第7条 (協同組合に関する監督)
1. 政府は本法の公布の日から6ヶ月以内に、a)からp)の目的に関しまた以下の原理及び指示基準に基づき、協同組合及びその事業連合の管理に関する規則の現代化及び再編のための1またそれ以上の立法政令を公布することを委任される。
a) 小協同組合(piccola societa' cooperativa)に関する1997年8月7日法律266号及びその修正及び1998年2月24日立法政令58号の規程に留意した協同組合の監査役会(collegi sindacali)の規制の見直し;
b) 協同組合の普通監査の実施は、協同組合の検査を通じて、次のことを目的とする。
1) 協同組合の理事者及び従業員に対し、経営を改善し協同組合民主主義を高めるための指示と助言を与える。
2) とくに社会的基礎及び組合員と協同組合の相互扶助的交換の現実性に関連し、協同組合に関する意義と規則に留意し協同組合の相互扶助的性格を確認する。また決算書ならびに理事会及び監査役会の報告、規程がある場合には貸借対照表の承認書を入手し実質的な財産状態を評価する。
c) 1947年12月14日臨時国家元首立法政令1577号第5条の協同組合運動の代表、支援、保護の全国連合による監査の実施は、本法の原理及び指示基準により協同組合運動の支援、自己防衛、自治を目的とする。
d) 1947年12月14日臨時国家元首立法政令1577号及び修正による協同組合運動の代表、支援、保護の全国連合に属していない協同組合に対する協同組合の検査による監査は、b)及びc)と同一の目的で、労働及び社会保障省の監督により行われる。労働省は、その監査の実施を協定により、承認された全国連合に、協同組合総局の定めた2年毎の実施計画の範囲で、その連合との合意により委ねることができる。現在の融資機構は有効である。
e) 労働及び社会保障省の特別査察を命じ実施する部門は、サンプルを査定のために又は協同組合の検査による深化の実施を基礎としその機会を認め、以下を原則的に承認することを目的とする:
1) 法律、規則、定款及び相互扶助の厳格な審査;
2) 税制上及びその他の性格に由来する優遇措置を享受する一般法及び特別法により要請される要件の存在;
3) その団体の会計上及び経営上の通常の機能;
4) 技術的に厳格な課税及び団体により促進され採用される特別活動の規制;
5) 団体財産の存在及び収支の状態;
f) 協同組合の経済及び財産の実質に関する承認の義務の実質的妥当性の証拠に関する貸借対照表の承認のための1992年1月31日法律第59号第15条の指標の調整
g) 協同組合運動の代表、支援及び保護の全国連合による協同組合の検査のための形態の決定。全国連合は、公共サービス及び1947年12月14日臨時国家元首立法政令1577号第5条の一覧表への登録要件の決定を委任されている;
h) 協同組合の検査、特別査察及び貸借対照表の承認についてその目的、権限及び機能の明確化。種々のタイプの規制さらに企業一般についての法律で定められた監督の間の重なり合い及び二重化を避ける;
i) 憲法第45条第1項に調和した協同組合の発展を促進するための規制の強度と負担及び優遇措置の実態との間の対応;
l) 協同組合運動の代表、支援及び保護の全国連合の承認の要件の調整は、d)の1947年12月14日臨時国家元首立法政令1577号第6条の全国連合に委任することができる監査の権限に留意し、協同組合の検査の効率的かつ効果的な実施を最大限に保障することを目的とする;
m) 県に分節化され県の労働部に置かれる協同組合全国登録簿の設置は、利用の便宜及び税制の性格を目的とし、商業・工業・職人業・農業会議所の特別な権限とこの登録簿の保持の役割と方式を連結する。登録簿は、b)の相互扶助的関係を基礎として定義された部門毎に別個に保持される;
n) 単位協同組合の全ての識別コードの統一;
o) 協同組合の全国登記簿の廃止、及びそれによる登記に関連する便宜、監督活動を逃れる協同組合の失効;
p) 1947年臨時国家元首立法政令1577号及びその修正の第2部の廃止及び本法により導入された改正と不整合な廃止すべきその他の法令の特定。
2. 第1項の立法政令の法案は共和国下院及び上院に委任権行使の失効期日の少なくとも40日以内に送付される。議会の本件関係委員会は送付から30日以内にその見解を表明する。万一、委員会の見解に予定されている期限が、第1項の委任権の行使に予定されている期限の失効に先行し30日内に失効した場合には、60日間に延長される。
3. 新法の施行から最初の2年の期間から3ヶ月以内に、政府は第2項の方式により必要な改正及び修正の規程を公布することができる。

(注 法案第2条により適用される労働者憲章の各条)
1970年5月20日法律300号及びその修正(労働者憲章)
* 第1条 意見の自由
 労働者は、政治的、組合的見解及び宗教的信条の差別なく、労務を給付する場所において、憲法の原理及び本法の規定に則り、自由に自己の意見を表明する権利を有する。
** 第8条 意見の調査の禁止
 使用者が、第三者を介する場合においても、採用のために労働関係の継続中と同様、労働者の政治的、宗教的又は組合的見解、さらに労働者の職業上の態度の評価に関連しない事実について調査を実施することは禁止される。
*** 第14条 組合結成及び組合活動の権利
 労働組合を結成する権利及び組合の自由に属する権利は、労働の場所内においてすべての労働者に保障される。
**** 第15条 差別的行為
 第1項 以下を目的とする協定又は決定はすべて無効とする:
a) 労働者の雇用を、労働組合へ加入すること又は加入しないこと若しくは脱退を条件とすることに従属させること;
b) 資格又は職務への配置、人事異動、懲戒処分において差別し労働者を解雇すること、あるいは労働組合への加入又は活動若しくはストライキへの参加を理由として不利益を与えること。
 第2項 前項の規定は政治的又は宗教的差別を目的とする協定又は行為にも適用される。


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