『協同の發見』2000.5 No.96 総目次

<特集> 挑戦 ケアワークドライバー


地域福祉とケアワークドライバーの研究会
協同総合研究所

 研究会開催の企画

 「福祉の新時代」のもと、在宅福祉を基本に、「高齢者も障害者も地域の中で住み続けられるような生活のあり方」を構想するとき、大きな課題の一つとして「高齢者・障害者が、いつでも・どこへでも出かけることができる移動支援サービス」の実現があげられます。それは、人間にとって、自由に移動できる保障がなければ、在宅福祉といえども限りなく「収容」に近い「福祉・介護」でしかないからに他なりません。自由に移動できてこそ「ノーマライゼーションを基盤とする生活のあり方」と呼ぶに値する、というべきでしょう。高齢者・障害者の移動それ自体をどのように介護し、支援していくかは、これからの福祉社会を見通すとき、まさに「新しい地域福祉事業」として社会的な必要性が高まっていく不可欠の福祉分野だといってよいでしょう。こうした中で、従来のタクシー事業の枠を超えた(株)メディスの「介護タクシー」の事業化、あるいは、タクシー労働組合である自交総連・大分地連による「ケアワークドライバー」運動の展開など、「移動の自由=交通権」の担い手となるべく新しい胎動が始まっています。また、NPO等からの「移動・移送サービス」への参入も話題を呼んでいます。
 協同総合研究所では、現在はまだ介護保険の対象とはされていない「移動そのものを介護し、支援するサービス(ムーブケア・サービス)」の将来像を、「人と地域が必要とする仕事おこし」という視点から考えるために、去る4月15日、「地域福祉とケアワークドライバー──『新しい福祉事業』としての『ムーブケア・サービス』をめぐって──」をテーマとする公開研究会を開催いたしました(研究会の記録、後掲)。


 研究会の課題

 研究会当日はケアワークドライバーへの関心の高まりを反映して、数多くの皆さんからご参加をいただき、また東京交通新聞の取材もあって盛会の研究会となりました。協同総合研究所では、今回の研究会の成功をうけ、ぜひとも研究会を継続して開催していきたいと考えております。研究会における課題設定は、参加者の皆さんとの討議に基づいて行っていく予定ですが、さしあたりの課題としては、以下の通り予定しております。
(1)研究会を継続させることによって、ケアワークドライバー運動の社会的な普及を図ること(2000年秋に第2回研究会を予定)。タクシー関連、NPO関連、協同組合関連等、「移動・移送サービス」をめぐっては、新聞報道等も連日のように行われ、ケアワークドライバーの社会的必要性を強く感じさせられます。まずは、全国にどれくらいの運動・事業としての取り組みがあるのか、その情報を集積することが必要でしょう。
(2)ケアワークドライバー運動あるいはケアドライバー事業に関する全国的な経験交流を図り、運動および事業における「ノウハウ」を集約すること。そのために、現場からの実践報告を多く取り入れたいと思っています。とりわけ、事業として成立させるための経営論的な検討、行政との関係の研究等、ケアワークドライバーをめぐる運動と事業に関するこれまでの経験に学びながら、介護保険の適用可能性の検討をも視野に入れて、将来に向けての戦略構想を練ることが必要でしょう。
(3)ケアワークドライバーだけではなく、以前からある「福祉タクシー」、近年になって注目されるようになっている「ユニバーサルデザイン・タクシー」等を含め、たとえば商店街との連携等地域の活性化との関連で「地域における公共交通手段」としての可能性を探る研究も必要でしょう。
(4)ケアワークドライバー運動・事業を、地域福祉とのつながりもった運動・事業のネットワークに位置づけていく方向性を研究すること。とくに、高齢者協同組合や地域福祉事業所等々と連携し、総合的な地域福祉事業の一環に位置づける可能性を検討する必要があるでしょう。

『協同の発見』5月号目次ケアワークドライバー研究会の企画と課題 | 河内則夫「新たな仕事おこし メディスのとりくみ」
高野修「自交総連大分のケアワークドライバー運動」

協同総合研究所(http://jicr.org)