イベントが続く秋ですが、研究所たよりはほぼ3ヶ月以上更新していませんでした。申し訳ありません。
■躍進する農村女性ワーカーズ
大分以前の「研究所たより(56)」でJA全中が「農村女性ワーカーズ」について取りまとめをしたことをお知らせしましたが、その後JA関連では農村における女性の仕事おこしについて特に目立った報告等は出ていないようです。しかし農村における女性の自発的な仕事おこしの活動は、着実に進んでいることを裏付ける調査が発表されました。
「社団法人農山漁村女性・生活活動支援協会」は、最近の調査の結果をホームページで公開しています。
http://www.weli.or.jp/Entrepreneur/W_outline/index.html
それによると、農村在住の女性が中心となって行う、農林漁業関連の起業活動で、◆使用素材は主に地域産物であること◆女性が主たる経営を担っているもの◆女性の収入につながる経済活動であるもの、という条件を満たす事業は全国で約7,700にものぼり、その内容は、食品加工が70%、朝市などの流通・販売が41%を占めています。
一事業あたりの年間事業高は300万未満が60%と小規模事業が多数を占めていますが、1000万以上の事業も増加しています。団体に5人が関わっていると仮定しても、すでに約40,000人の就労がそこに生み出されています。これらの団体・グループは、自治体やJAの指導等をきっかけに立ち上がったものもありますが、半ば自然発生的に拡大しているようで、法人化されている事業は少なく(2%)働き方は多様で、必ずしも協同組合を意識したものではありませんが自分たちで出資し集団的な経営を行っているところがかなりの割合(7割)にのぼるようです。
ここ1年間の協同総研が関わった地域でのシンポジウム等にもこれら「農村女性ワーカーズ」の方々に多く参加していただいています。
一例を挙げると、
●「農事組合法人モアハウス」(福岡)
●「高家領水車母さんの会『森のそば屋』」(岩手)
●「かみつえ食房」、「耶馬の里グルメネット」、九重町「華芙蓉」、「ももは工房」、玖珠町「ふれあい良心市組合」、「かあちゃんの元気茶屋『一番列車』(大分)
●「くりさわ手造りみそグループ」、「豆ではりきる母さんの会」、「味菜工房」(北海道)…。
いずれ劣らぬ豊かな仕事おこしの実例で、地域の活性化に貢献している自負と誇りにあふれた報告を聞かせていただきました。
前述の調査によれば、特に起業件数の多い県としては、1.秋田2.熊本3.大分県4.宮城県5.長崎県ということで、九州勢が圧倒的です。今年2月に前述の社団法人から業種別に2巻で刊行された『農山漁村の女性起業200選』を見る限り、やはり九州・東北に多くの仕事おこしが広がっていることがわかります。
そんな中、12/13(土)に埼玉県の大宮で「女性起業の『みんなおいで!』フェスタinさいたま」が開催されます。これは農家の女性やNPO、JAグループ埼玉、埼玉ワーカーズコレクティブ連合会などが協賛して実行委員会形式で準備されたもので、多くの埼玉の女性企業家やグループが集まる催しです。首都圏でも元気な女性が沢山いることを示してくれそうです。その中の一企画「農山漁村女性起業講座」では、労協センター事業団の岡本かつ子さんもゲストで参加します。http://www.oide-fest.com ご興味のある方はぜひ、ご参加下さい。
11/1(土)の十勝のシンポジウムで報告した味菜工房の神谷かつえさんは、「〜農村女性ワー力一ズこの言葉を知ったきっかけはシン
ポジュウムの事務局の吉田さんに知り合えた事によります。〜ILOの堀内さんによる前回の講演で戦争による難民の人たちも、協同組合を導入することで職を得る事により活性化がもたらされ安定した生活が保障されるようになったと云う内容をお伺いすることにより原点に戻れと云う投げかけの様に思いました。過疎化の一途をたどる町にも、雇用の投げかけをすることによって地域になにかが動く、そんな発想でしょうか。〜」と発言されています。
http://www.globetown.net/~ysdytk/03-11-1kamiya.htm
法律や制度に先行して、農村では静かに、そして力強く協同の仕事おこしが広がっているようです。
菊地 謙