研究所たよりWEB版(83)
2002年2月28日
執筆:菊地謙(協同総研事務局長)
協同総研の菊地です。
先日、ワーカーズコープ・アスランの杉村さんより、東京新聞に取り上げられたというお知らせがありましたが、記事を送っていただいたので、ご紹介します。
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東京新聞2002年2月26日(火)首都圏版
TOKYO
NEWS
「そこが聞きたい」
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「働く=雇われる」というこれまでの前提とは異なり、働く人たち自身が出資し、対等の立場で経営にあたるワーカーズ・コープ(労働者協同組合)が、新しい働き方として各地で増えている。倒産した編集プロダクションの社員たちが2000年8月につくったワーカーズコープ・アスラン(千代田区三崎町)もその一つ。不況にあえぐ出版業界の中で、フリーの編集者らの仕事おこしなどに悪戦苦闘している理事の杉村和美さんに、目指すものなどを聞いた。(聞き手・石井敬)
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ワーカーズコープ・アスラン理事 杉村和美さん(49)
■アスランをつくったきっかけは
勤めていた編集プロダクションが、不動産投資の失敗などがもとで倒産したことです。会社側は組合員7人全員を解雇したのですが、一方的な休業に抗議して、私たちは五年間、社屋ビルを占拠して争議と仕事を続けました。
結局、役員たちが未払い賃金など二千万円の解決金を支払うことで和解しました。その時の解決金をもとにしてつくった組織です。
■どんな組織なのですか
フリーの編集者、ライター、イラストレーター、デザイナーら十二人を含む個人三十七人と労組など八団体が出資して組合員となり、書籍、パンフレットなどの企画・編集、執筆、イラスト制作などをしています。常勤は二人で、あとは仕事があるときにフリーの人とチームを組みます。単行本はこれまで「リストラに負けない100の知恵」(東洋経済新報社)など八冊を手掛けました。
会社組織と違い、働く人自身が資金と知恵を出し合い、運営していく組織で、年に五回の理事会などで経営方針を定めます。会社にすると苦しいときに社員を切ったり、フリーにしわ寄せしたりしないとも限らないですから。
■出版業界の状況は
週刊誌や月刊誌がどんどん廃刊になり、少ない仕事の取り合いになっています。建設業界のように「版元(出版社)―編集プロダクション―フリー(自由契約で仕事を受ける個人)」という三重構造になっており、日雇い労働者とフリーの編集者は似ているなと思います。受注単価が引き下げられたり、いきなり仕事を切られるなど半失業状態に置かれ、やむなくアルバイトで食いつないでいる人も多い。私たちは、フリーの人たちをネットワーク化して仕事の創出を目指そうと考えています。まだ赤字ですが、今年はなんとかトントンまでこぎつけたい。
■労働者協同組合の認知度はまだ一般に低いですね
欧米では地域に密着して雇用の場をつくり出す事業体として、古い歴史があります。しかし、日本では労働者協同組合法がないため、法人格のない任意団体となってしまい、税制面での優遇措置もありません。行政との連携や仕事の受注などにも障害があり、法制定を求める運動が高まっています。協同組合づくりに行政が助成していくような雇用対策を望みたいですね。
・キャプション:
「倒産編プロ社員が出資」「フリーの雇用創出目指す」
「法整備など行政に期待」
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