研究所たよりWEB版(78)
2002年1月30日
執筆:菊地謙(協同総研事務局長)
1/26のシンポジウムは、いずれ学会から正式な報告集等は出ると思いますが、とりあえず、菊地の報告&感想を。
ちなみに、シンポの資料集(「協同の發見」1月号)の原資料は、英文目次からリンクしています。
http://jicr.roukyou.gr.jp/hakken/2002/01/e-index.htm
●日本協同組合学会シンポジウム 1/26
「『協同組合の促進』に関するILO勧告案をめぐって」報告
去る1/26(土)青山学院大学渋谷キャンパスにて、上記シンポジウムが開催されました。
「協同の發見」等でも何度か報告をしていますが、1966年に採択されたILO第127号協同組合の促進勧告の見直し作業が現在ILOで行われています。新しい勧告は昨年の総会での討議に続き、今年6月の総会での政・労・使3者討議をへて、採択される予定です。
今回のシンポは、ILO総会に向け、協同組合学会、ILO、厚生労働省、日経連、連合、協同組合(労協)それぞれの立場から、第一次討議で出された勧告案に意見を述べるものでした。
経済のグローバル化、大規模なリストラや失業といった厳しい社会状況の中で、協同組合をどのように位置付け、発展させていくべきか、というテーマを世界と連動させて日本の中で考えていくための機会として、非常に有効であったのではないかと思います。
特に、質疑応答の中では、連合の田中氏が「協同労働の協同組合」法について組織として正式に取り上げ、政策要求を行っていく旨の発言もあり、政・労・使いずれにとっても大きな「雇用・失業問題」の解決に、協同労働が役割を果たし得るという認識は高まったのではないでしょうか。
一方で、政府への(一般)協同組合法の制定を求める発言に対して厚生労働省の森實氏は、日本の協同組合法制が縦割りであり、統一するな官庁がない問題に触れながらも「それぞれの協同組合の方々は、その法制を必要としているのか?」と問いかける場面もありました。
寒い日にもかかわらず、参加者は130人。研究者だけでなく、各協同組合、労働組合からの参加者もあり、非常に触発されたシンポジウムでした。準備をされた方々、ご苦労様でした。
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【参加者の感想】(抜粋)
●日本労協連 古村氏
この手のシンポでは近年最大級の面白さだった。大島茂男さんが言っていた「もっと各協同組合がこのテーマでシンポすべき」という意見は大賛成。
コープこうべの方の、「(法的に認められた)協同組合はむしろ雇用の減らしており、厚生労働省が言っている法的な規定がある協同組合に限定すべきという意見は、労協なども対象とすべき」という言葉も印象的。
総じて、ILO勧告を通じた、協同労働法制定のうねりが沸き起こる予感がしたシンポだった。
●センター事業団 坂林氏
法制を進める立場で見た場合、かなりの成果を納めることができた、と評価しています。
連合の田中光雄国際政策局長が、兵庫の山本さんの端的な質問に答えて「事務局段階では労協法の支持を決めている」と公式の場で明言したことが最大の成果です。経済社会局という部門が担当しているようですが、「公式の文書になるのはもう少し先」としながらも、「通常国会の2月に行う政府への政策要求項目はいる」ということでした。
神戸の山本さん(学者&生協の理事)はもう一回話をされています。「正規の協同組合はリストラをやっており、雇用をつくる力はない、労協を含むインフォーマル組織の促進が必要だ。『正規の協同組合に限れ』という政府見解は雇用が問題になっている勧告に対しては意味がない」 「コープ神戸では600人の解雇をおこなった。その後全員が再就職できたのか知らない。そのとき労協で仕事をおこしを提起できていれば違っていたかもしれない」という話も、コープ神戸の理事の一人の発言としては秀逸だったと感じる。
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◆参加された皆さんの感想をお待ちしています。◆