アマルティア・セン教授からのFAX

 日本労働者協同組合連合会はかねてから、1998年度ノーベル経済学賞受賞者、アマルティア・クマール・セン教授へのインタビューを申し入れてきたが、このほど、セン教授よりインタビューに応じるとのご返事をFAXで頂いた。
 セン教授とのご縁は、教授が98年10月に、イタリアのレガコープ(イタリア全国協同組合・共済組合連盟)主催のワークショップで行った講演記録「協同とグローバルな倫理」の存在を、長崎大学の吉田省三教授に教えられたことに始まる。研究所では早速この講演記録をインターネットで入手し、菅野正純・副理事長がこれを訳し、レガコープの許可を得て、所報『協同の発見』85号(1999年5月)に掲載した。同時に、日本労協連がセン教授に連絡を取ったのである。
 セン教授は、1933年、インドのベンガル地方に生まれ、イギリスのケンブリッジ大学で、貧困問題の解決を中心課題に、経済学の研究を続けてきた。こうした業績に対して、1998年度のノーベル経済学賞が与えられたのである。現在は、ケンブリッジ大学トリニティーカレッジ学部長を務めるとともに、レイモント大学、ハーバード大学から名誉教授の称号を贈られている。
 主な著書に、大庭健・川本隆史訳『合理的な愚か者 経済学=倫理学的探求』書房、1989年などがある。
 なおインタビューは、FAXにもあるように9月下旬以降、ケンブリッジ大学で行われる予定で、現在鋭意準備中である。
日本労働者協同組合連合会設立20周年に際するインタビューに関連して


親愛なる永戸 様

 貴方のお手紙と心のこもった貴方のお手紙に大変感謝しております。貴方の言動を私は高く評価するとともに、私がイタリアのレガ・コープの会議でで配布した私の報告をご参照いただいた由、大変嬉しく思います。もちろん私は協同組合の可能性に偉なる信頼を寄せていますし、貴方がたの活動と貴方がたの業績に非常に親近感を抱いています。

今からインドに参るところで、イギリスへの帰国の途上でイタリアにも休暇で行くことにもなります。運悪しアメリカにも行かなければならず、イギリスを9月末まで留守にすることになります。貴方が企画しているインタビューは、貴方にとって遅すぎるというのでなければ9月末ということでいかがでしょうか。私は、ケンブリッジには9月25日までに戻れることを期しています。

インタビューに関しては、私の述べる事柄について、それを正確にきちんと整理するつもりですし、私にインタビューする方が英語が流暢であれば大変に助かります。後日、日本語訳で出版することを意図しておいでならば、英文で私の発言をチェックできればとても有り難いと思います。

 私がイタリアのレガ・コープの会議で提出した報告を貴方に親切にも参照していただきましたので、この手紙の写しをステファン・マルコーネ氏に失礼ながら送付するつまりです。

ご多幸をお祈りします
敬具

A・セン 署名

訳:島村 博(日本労協連国際部)