『協同の發見』2000.4 No.95 総目次
巻 頭 言

福祉をになう〜生活クラブ千葉の取り組み

池田 徹(生活クラブ千葉・理事長)

 私が当研究所と交流するようになったのは、そう古いことではありません。直接的には、千葉県高齢者協同組合の設立に際し、私が責任者をしている生活クラブ生協・千葉と労協が協力しあったことによります。労協と協同総研にとって最大の課題が労協法制定ですが、生活クラブ生協が母体になって発展したワーカーズコレクティブ運動にとっても、法制化問題が課題です。「協同労働」を発展させるためには、日本におけるこの分野での大勢力が連携し合うことが必要だと考えたことが、理事をお引き受けした理由の一つでした。もっとも、この件で私が何らかの役割を果たせているわけではありません。というよりも、まだ何のお役にも立っていないというのが正直な現状で、大変申し訳なく思っております。
 生活クラブ生協・千葉は、6年前から「たすけあいネットワーク事業」と名づけた福祉事業を行なってきました。労協が進める地域福祉事業所構想とも共通するものがあると思いますので、この稿では、その紹介をさせていただきます。
 生活クラブ生協・千葉は、自らを「食の不安と老いの不安に応える生協」と位置付け、高齢社会における地域生協の新たな役割を模索してきました。
 98年には厚生省の「生協のありかた検討会」が、生協の福祉事業への参入を促し、介護保険事業の員外利用が認められることになりました。しかし、地域生協では総じて、関心が薄いか、あるいは、事業展開の見通しが見えにくいとして、積極的な事業参入は見られません。千葉県では平成12年3月1日現在848の居宅介護サービス事業所と570の居宅介護支援事業所が指定されていますが、生協はそれぞれ9ヶ所とヶ所にすぎません。しかも、この9+8=17ヶ所のうち1件を除く16ヶ所は生活クラブ生協・千葉の事業所です。全国的にも、指定事業者として介護保険事業に参入した生協は数えるくらいしかないのが現状です。生活クラブ生協・千葉は、組合員数32000人の小さな生協ですが、介護事業の規模としてはおそらく全国最大の地域生協であり、私たちの事業の成否は今後の地域生協のこの分野への参入に大きな影響を及ぼすことになるだろうと感じています。
 措置制度から契約制度に移った福祉業界においては、「公」でなく「私」でもない「共」領域たる協同組合の役割が極めて大きいと思います。高齢協、労協ともども、協同組合の介護事業成功例を積み上げることで、全国の生協の積極的な参入を呼びかけていきたいと考えています。
 生活クラブ生協・千葉の福祉活動は以下の3項目に要約できます。

(1)バリアフリーの街づくり
・福祉資源調査から福祉相談窓口へ
・地域のボランティア活動
・ボランティア支援の福祉基金
・子育て支援活動

(2)在宅ケア事業
・訪問介護事業所 9ヶ所  2000年度24万時間目標
・居宅介護支援事業所 7ヶ所  ケアプラン数150件
・単独型在宅介護支援センター 1ヶ所
・単独型デイサービスセンター 2ヶ所

(3)関連事業
・高齢者施設「風の村」(千葉県八街市)  特養ー全室個室、6〜8人のユニットケア
・生活クラブアビリティーズ  介護、リハビリ用品の販売・レンタル

(1)の福祉基金は、組合員一人あたり月額40円を拠出(年間総額1400万円)し、在宅ケア事業や「風の村」などのほか、県内の福祉ボランティア団体への助成活動を行なうものです。 在宅ケア事業は、直営方式であり、常勤、非常勤のケアワーカーは全員、生活クラブ生協・千葉と雇用契約を結んでいます。自治的な組織として「ケアグループ」という組織を立ち上げたのが6年前、現在21のケアグループがあります。1つのケアグループで1つの事業所を構えている場合もあれば、複数のケアグループで1つの事業所を運営している場合もあります。「ケアグループ」による直営という方式が、おそらく他にはない独自のもので、事業の自立的な展開が見とおせるところまで介護事業を発展させることができた原動力だったと考えています。
 特別養護老人ホーム「風の村」は全室個室、6〜8人のユニットケアの施設であり、日本に例がありません。見学のみなさんから全国1のハードとお褒めをいただいております。生活クラブ生協・千葉の組合員が6年の歳月をかけて心をこめて「自分が入りたいと思える施設」を合言葉に準備してきた成果が実りました。是非、一度見に来て下さい。
 というところで、紙面が尽きてしまいました。
 「福祉」は、協同組合運動にとって自らの社会的な存在価値を問う最重要分野だと思います。当研究所を通して、積極的な交流が生まれることを期待しています。


4月号目次協同総合研究所(http://JICR.ORG)