研究所たよりWEB版(56)

2001年9月19日

執筆:菊地 謙(協同総研事務局長)

9/17に「協同労働の協同組合法」をめざす市民会議の幹事会に出席しました。詳しくは市民会議のHPで報告されると思います。この2ヶ月の活動方針を議論したのですが、いくつか、興味深い内容がありましたので、ご紹介します。



【1】労働者協同組合の実態把握へ――福岡県

●9/10付の時事通信によると、「福岡県は2002年度、中高年らが、共同で出資し、自ら働いて経営する「ワーカーズ・コレクティブ」(労働者協同組合)の実態を調査し、新規雇用につながる施策を検討する方針を固めた。」ということです。

●さらに労働者協同組合については「会社や民間非営利団体(NPO)と違って、労働者同士が対等の立場で出資・管理し働く形態」と紹介し、雇用の受け皿としての期待を高めています。また、労協連等の法制化の動きも紹介しています。

●県は、全国組織傘下にある70団体の存在を把握しており、これらに対し事業内容等のアンケートを実施、さらに行政への要望をヒアリングする予定。また、調査結果を元に、1)財務や税務、人事管理のアドバイザー派遣、2)各団体代表を集めた経営セミナーの開催、を検討する方向だということです。

●また、福岡の労協関係者が直接県庁に問い合わせたところ、担当部署は「福岡県生活労働部新雇用開発課」であり、すでに担当者が、ヨーロッパ等へ視察にも行っており、積極的に推進する旨、説明を受けたそうです。県レベルでこのような方針を打ち出しているのは、おそらく初めてのことでしょう。



【2】「農村女性ワーカーズ」をつくろう

●9/12付日刊・協同組合通信によると、JA全中は、報告書「JA女性組織の活性化と農村女性ワーカーズ育成の方向」をまとめたそうです。これは全中が協同組合経営研究所に委託して、研究員の十河英侑さんや茨城大学の河野直践さんらがまとめたものだそうです。

●報告書では、食や農の分野で農村女性のアイデアや意欲を生かした起業活動が活発化している中で、「メンバー一人ひとりの平等な参加や協同の精神を大切にしながら、全員参加型の運営が行われている」ワーカーズが協同の理念やしくみを基本にした協同組合運動の延長・一環として起業することこそ、「地域社会で必要とされ、皆が望んでいることなのである」としています。

●また、ワーカーズの法人格問題にも、「法案を自主的に作成して制定を国会に働きかけようとする動きも始まっている」と触れています。

●このような報告書が出された背景には、1958年には344万人いた農協婦人部員が2000年には131万人へ減少し、高齢化も進んでいる実態があり、これを克服し活性化する起爆剤として、ワーカーズという形態に着目しているのです。

●今後、JAが支援をし、農村にワーカーズづくりの波が広がっていくと、これまでとまた大きく異なった、日本の生産・サービス協同組合の運動となることでしょう。また、法制化に向けても大きな影響力を持つことは間違いありません。

●報告書は非売品のようですが、JA全中で取り扱っているのではないかということです。協同総研では、協同組合経営研究所にお願いして、2部ほど分けていただくことにしています。


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