研究所たよりWEB版(50)

2001年5月7日

執筆:坂林哲雄(協同総研専務理事)

連休はいかがお過ごしだったでしょうか?
私は家族と能登半島をめぐってきました。
天気にも恵まれ、この時期にしては珍しく日焼けした顔で連休明けの初日を迎えています。

 「母親の三人に一人が育児に困難を感じ、さらに五人に一人は「子供を虐待しているのでは」と悩んでいることが二日、日本小児保健協会の幼児健康度調査でわかった」と、5月3日の読売新聞に記事にある。
 調査によれば、「「子どもを虐待しているのでは」と悩んでいる母親は18・1%、「何とも言えない」が15・7%。「虐待」内容は複数回答で、「感情的な言葉」が80・2%、「たたくなど」が48・5%、「しつけのし過ぎ」が17・4%だった。また、「育児に自信を持てないことがある」と答えた母親は27・4%にのぼり、「育児に困難を感じる」と答えた人が33・4%もいた。」ということだ。

 5月6日の毎日新聞「余禄」には、児童自立支援施設に入所している児童について、「入所者の約6割に何らかの被虐待経験があった」という。
 「食べ物を万引きした子は、親から食事を与えられぬネグレクト(怠慢)という心理的虐待の被害者だった。子の罪を責めて、子は真っ当に育つのか。暴力に泣かされた子が、暴力を振るうのは当然ではないか。」
 「やり切れぬ話だが、鼻の骨を折ったり、鼓膜を破ったりした親でも、子どもは機嫌をとろうとする。その親もまた、親の暴力の被害者だった様子がうかがえるという。・・・・虐待の連鎖を断ち切るには、親の自立支援こそ必要」である。

 連休中に「地域から生まれる支えあいの子育て」著者:小出まみ(太郎次郎社2000円)を読んだ。読後の第一印象は「保育や子育ての本を超えている」ということであろうか。
 筆者、小出まみさんは、本書を脱稿後2週間余りたった1999年10月25日に永眠されている。遺稿となった「地域から生まれる支えあいの子育て」は、カナダの子育て家庭支援(ファミリー・リソース・センター)の仕組みと札幌にある「むくどりホーム」の実践を題材にしながら、「子育て」という切り口を通じて、人はどう育ち、どう生きるのか、そして地域をどうしていくのかをという今日私たちが直面している問題を、本当に丁寧に教えてくれる良書である。
 子育てに取り組む人々だけでなく、地域にかかわり様々な活動に取り組む方々に読んでいただきたいと思う。


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