研究所たよりWEB版(23)

2000年9月22日

執筆:坂林哲雄(協同総研専務理事)

前回の「たよりML版(22)」が16日発でしたから、はや1週間がすぎようとしています。この間、協同集会ニュースを5号まで出してきました。その中から、労協連の仲間に知って欲しかったロバートソンさんの紹介記事を掲載します。


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第3回協同集会実行委員会
9月28日(木)午後2時〜5時
東京学芸大学 むさしの第2ホール 2階食堂
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協同集会ニュース(2)
「ロバートソンさんってどんな人」


協同集会にジェイムス ロバートソンさんが記念講演をすることになりました。

ロバートソンさんを最初に知ったのは、今から10年前(1988年)に勁草書房から出版された「未来の仕事」を通じてでした。「雇用から<自身の仕事>へ-------雇用が主要な仕事の形態ではなくなる脱産業時代の仕事と暮らしを展望して」と、当時バブルの全盛時で猫も杓子も株や土地に浮かれていた時に「額に汗する労働」を叫びつづけた労協にとって、大変な励ましとなる書物でした。その内容は今読んでも新鮮な感動を伝えます。

ロバートソンさんは、「これからの資本主義社会の発展方向は今までとは違い、二つに別れる。一つは技術革新をやりながら成長を維持するこれまでの延長であり、これが一つの主流である。そしてこれとは対抗的に、今まで見落としてきた経済が復活する。それは地域経済の原理であり、これが復活する。その際、特に雇用労働以外の雇われない労働、自分自身のための労働ガ広がる。これまでの市場価値では計れない新しい労働の価値が登場する」と、私たち労働者協同組合が理念としてきたこと、そして現実に取り組む福祉や介護といった地域にとっての必要な労働が生まれることを予想され、そのような経済発展の方向に必要な政策提起されています。

最近、石見尚さんらが翻訳された「21世紀経済システム展望」(日本経済評論社)の中で、ロバートソンさんは「人間は持続可能な生活の基盤としての自らの地域経済をもち、… またその一方で、世界規模で互いに広く連携する必要があ(り)」、「わ
れわれ人間は自然を人間の行動様式に適合させるのではなく、われわれの経済行為を自然界と両立するように調整しなければならない」とされ、未だに根強く残る経済発展を追い続けようとする経済に対して、新たな経済価値、つまり有限とされる自然環境や資源、搾取の対象ではない労働や地域で必要とされる労働の価値などを大切にした経済を対置させ、持続可能な社会のために様々な現実的政策を提起されています。

記念講演では「未来の仕事」に関してやさしくお話し頂きます。分科会では「協同が息づく地域社会」を築くための経済政策について議論を深める予定です。研究者にとっては大いに知的刺激を受ける内容になるでしょうし、実践家にとっても自らの確
信となる経済政策を学ぶ機会になるでしょう。

ロバートソンさん(1928年生)は、環境問題の専門家でもある夫人のアリソン・プリチヤードさんと共に来日されます。



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