研究所たよりWEB版(81)

2002年2月15日

執筆:菊地謙(協同総研事務局長)

菊地です。
 協同総研のブロードバンド化(ADSL)がとりあえず完了しました。
 それにしても、NTTや各プロバイダが盛んにADSLを売り込んでいますが、何かスッキリしない気持ちです。実際、各社がISDNをキャンペーンしていたのは、ほんの2〜1年位前のことなのですから。
 技術革新といってしまえばそれまでですが、安易に目先を変えて儲けることしか考えていないと言われても仕方ないでしょう。(すでにADSLは光ファイバー通信普及までの”つなぎ”などとも言われています。)
 今回も手続きや工事について、プロバイダやNTTと連絡をとりましたが、そもそも窓口の電話がほとんどつながらない。yahoo!などのベンチャーに押された激しい値下げ拡大競争のツケは、結局利用者が払わされているのです。

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○ちばNPOフォーラムに参加
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/e_kansei/npo/forum1.html

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○ちばNPOフォーラムに参加

 2002年2月12日(火)、千葉県主催の「ちばNPOフォーラム―NPOと行政とのパートナーシップづくりをめざして」に菊地が参加しました。堂本暁子知事が就任して以来、「NPO立県千葉」を掲げ、NPOの促進を前面に打ち出している千葉県が、どのような政策を打ち出してくるのかに、興味を持っての参加でした。

 会場は千葉駅前の「ぱ・る・るプラザ千葉」でしたが、直前になって300人の会議室から700人のホールに変更になり、その席もほとんどが埋まっていました。

 少し遅れて行ったため、冒頭の知事の挨拶は終わっており、日本NPOセンター山岡義典さんの基調講演から聞くことができました。

 非常に簡単にまとめると、NPOは個人のパッションから始まり明確なミッションをもつ組織体まで、4段階(ボランティア―グループ―任意団体―法人)の形に分類した上で、行政が具体的に対等なパートナーシップを組めるのは、後の二者(任意団体、法人)であり、パッションと対等なパートナーシップを組むことは難しい、としています。
 また、行政との「協働」のために必要な7原則というのも掲げていました(ここでは長くなるので知りたい方は山岡氏の著書を参照のこと)。
http://www.jnpoc.ne.jp/book-frame.html

 つづいて山岡氏、県内のNPOの代表者3名と、我孫子市長を交えたパネルディスカッションを知事のコーディネートで行いました。

 印象に残ったのは、我孫子市長の福嶋氏の報告でした。我孫子市は、NPOに対する補助金を公募し、市民の検討委員会による審査で決定したり、NPO法人への市民税均等割を免除するなど、独自のNPO支援策を展開しています。
http://www5.ocn.ne.jp/~shimin-c/newpage8.htm

 福嶋氏は流行の行政とNPOの「協働」について、きちんと定義をするべきとし、「自主活動・連携型」「市事業への参画型」「共同事業型」と三類型を示して、まずは行政とNPOそれぞれが事業を自分の責任で行いながら、共通の目標に向けて連携する「自主活動・連携型」が基本であると述べました。

 市長自身もNPOの活動を行ってきた経験として、よく批判される行政のタテ割の問題はNPOの中にも存在し、そこを乗り越えていかなければならない、と提起しました。

 後半は、堂本知事の独壇場となり、舞台から客席に降りて参加者への発言を促し、まるで直接対話集会のようでした。

 全体の印象として、NPOと行政の協働といっても、まだ実態があるわけでなく、我孫子市長の言を借りれば、これまでの市民参加型の行政とどう違うのかもあまり明確でないように思われます。

 一方で、参加していたNPOも活動暦が浅いところが多く、「活動する事務所を提供してほしい」等の意見は出るものの行政と対等なパートナーとなるには組織的、財政的にまだ脆弱である印象でした。

 現在千葉県内のNPO法人は50。法律施行後3年でこの数は多いのか少ないのか何ともいえませんが、いずれにせよまず、NPO自身がもっと力をつけていかなければ、いきなり行政との「幸せな結婚」はできないでしょう。
http://www.jnpoc.ne.jp/focus/jihyo.html#katou

 私は堂本知事の「NPO立県」構想には、期待をしています。しかし一方で、「2畳の部屋を借りて女性のカウンセリングのNPOを立ち上げた」(参加者の一人の発言)ことを持ち上げる知事の姿勢に不安がないわけではありません。

 これは千葉に限ったことではありませんが、まともな社会サービスの基盤がない、もしくは後退している現在の状況の中で、NPOに過剰に期待(と責任)を押し付けることになりはしないか?という一抹の不安がよぎるのです。

 予想以上に多くの人がこのフォーラムに集まったということは、堂本県政に対する期待の現れと言えるでしょう。また、参加者のかなりの部分をスーツを着た男性が占めていたのを見ると、各市町村の担当職員も時間外(午後6時〜8時30分)であっても参加していたのではないかと思います。

 市民事業組織が発展していくためには、行政との連携が不可欠とずっと考えてきたのですが、同時に「行政とは、公共とは何か」を真剣に考える必要に迫られているように思います。(2002/02/15)

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(参考)
●NPO立県千葉の実現
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_kikaku/6/juutenshisaku/shisaku31.pdf

●我孫子市市民公益活動・市民事業支援指針
(「市民活動支援課」を設置したそうです)
http://www5.ocn.ne.jp/~shimin-c/newpage8.htm

●NPOサポートセンターによる各省庁の支援策一覧(便利!)
http://www.npo-sc.org/Establishment/Introduction.html

●日本NPOセンターのHPへの投稿より
「NPOの業界団体化を憂える」
http://www.jnpoc.ne.jp/focus/jihyo.html#katou


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