研究所たよりWEB版(17)

2000年8月23日

執筆:坂林哲雄(協同総研専務理事)



シューマッハ著の「宴のあとの経済学」、原題は「Good Work」を読む。
監訳は長洲一二さん(元神奈川県知事)である。
出版はダイヤモンド社1980年。娘と行った「古本屋」の片隅で見つけました。


第3章に、イギリスの現在の労協の源流であるスコットベーダー社に関わった話が登場する。
スコットベーダー社に関しては、何度も紹介されいるが、私が特に興味をもったのは、利潤の一部がどう地域に生かされているのかという点である。

その記述を簡略に記すと、「地元の老人への贈り物、少年野球クラブのグランドづくり、点字図書の寄贈など行ってきたが、いろいろ知恵を出すがこれ以上いいアイデアが出ない。国の福祉機関にわたすのでは知恵がない。」

仕事以外の時間(これは週に100時間にもなる)を、「コミュニティに有益な活動を育てて、余暇を活用すればよいではないか」そのための資金として、利潤の一部を利用しようということになった。最初の例は自動車修理工場。週末になるとバイクを分解したりする腕の確かな趣味人がいる。個人では買えない自動車の修理の資材を買い入れ、年金生活者に運営を任せた。修理代金は部品代だけ。次が庭の手入れをする仕事に必要なちょっとした機械の購入と貸し出し。

私は、この取組を読みながら、広島の集会で出会った千葉県習志野市の「秋津コミュニティー」の岸さんたちの取組を考えていた。新興住宅地で、地域のつながりを小学校の施設を利用することで、というのが出発点だったと記憶している。

先日ここを取材した佐藤洋作さん(当研究所理事)によると、「学社融合」という名のもとで、文部省も奨励する活動に発展してきているそうである。学校の工作室を利用して木工作りを楽しむお父さんたち。校庭の一部に池を作っているお父さんたち。
このために運送の仕事を朝の4時から始めて時間をつくるお父さんもいるそうだ。学校に入るための「カギ」もそれぞれ持っているというから恐れ入る。ここに集っているお父さんたちは、ここで活動することが楽しくてしょうがないようだ。スコットベーダーのようなスポンサーはいないが、今のところは趣味の延長が少しづつ社会性を持ってきたというところのようだ(実際見ていないので、誤解だったらごめんなさい)。今後どのように活動が地域の中で広がるのかが、楽しみである。



もう一つこの本で気になったのは「中間テクノロジー」である。
発展途上国に持ち込まれる多くの設備は、西洋型の効率を考えたもので、例えば現地の狭い農地の事情などを考えたものではない。必要なのは「中間テクノロジー」、例えば一昔前に使われていたものを現代の技術で改良したような技術が必要だという。

或いは英国におけるセメントについても話題がでてくる。外国から買うというのが常識だが、地元で使うものぐらい地元で生産できないか。大規模な機械は不要だろうからそれに見合った機械設備が必要だ。それが中間テクノロジーである。化石燃料のような、彼のことばによれば資本エネルギーを大量に使うような大量生産型工場、そして超遠距離輸送は止めて、所得エネルギー(これは太陽光などの自然エネルギー)の利用した小規模工場で生産できるような技術である。

こういった技術開発がもっとなされるべきで、ここに、政府の役人や大企業に勤める技術者にも参加を呼びかける。可能なところから、現在の産業社会を変えてゆこうという提起である。シューマッハー自身がその実践者である。

日本の地域おこしや仕事をおこしを考える場合、このシューマッハがいう「中間テクノロジー」とはどういったものだろうかと、考えている。一つの例だと思えたのは、ユーズである。

カンパネルラの4号に、(株)ユーズという企業が紹介されている。社長は染谷ゆみさん(30)である。
仕事は廃食油の回収とその燃料化。
化学は不案内だが、廃油がVDFという燃料にリサイクルされ、軽油となって循環する。
この仕組みをその製造プラントの作成から手がけた人である。これなど多分「中間テクノロジー」の一つであろう。
これがこの人自身の環境ビジネスとして仕事おこしとなっている。さらに、本のリユースや一種の地域マネーの利用、緑のオーナー制度などを会津の「たもかく」と提携して行っている。
株式会社だが、間違いなくコミュニティビジネスである。

ぜひ、協同集会にお招きしたいと思っている。
ノウハウの公開を含めて協力願えれば、あたらな地域おこしで、化石燃料の使用削減と大気汚染防止に一役買えることになる。


所報の8月号でとんでもないミスをやらかし少々落ち込んでいます。


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