研究所たよりWEB版(15)
2000年8月9日
執筆:坂林哲雄(協同総研専務理事)
昨日、自立生活センター、ヒューマンケア協会訪問(8月8日)、中西庄司代表、中原えみ子事務局長、先月の所報に論文を寄せてくれた鄭さん、武蔵野市の会員、前川禮太郎さんも一緒に話を伺った。
今回の訪問は、「自立生活センター」自身が、今後の組織のあり様を模索する中で考えられたものであり、労協法の提起を受け止めていただくためにも意義があると思い出かけた。
自立生活センターは、1986年からはじめて全国に93ヶ所作られている。障害者の自立生活(地域の中で生きる)のためのプログラムを開発、研修を通じてそれらを提供している。
今のところ、第一世代の頑張りで組織が存在しているというのが、代表の中西さんの話。(中西さん自身は57歳: NPO法の審議では国会に参考人としても呼ばれている)
これに協同組合的な仕組みをビルトインしないと、次の世代にうまくこういった組織を残して行けないという危機を感じている。それを初代の人が元気でいるうちに実現しておきたいということ。組織が向かう方向性については、93のそれぞれの自立生活センターの間で合意はできている。
目指している組織形態は、利用者優位のコンシューマ型コープであり、労協法では複合型として受け止めるべきものだった。組織の公共性やそれを民主的に管理し世代を超えて継続させるという言った点では、自立生活センターとも共感でき、そういった意味で労協法案の意義については理解していただけたと感じている。
それにもまして、強く思ったのは彼らが高齢者の運動に注目し、その活動との「合流」を望んでいることだった。障害者だけの運動力量では限界あるということ。特に、2005年には公的介護保険制度に障害者介助も組み入れられることになり、現状の
ような公的介護保険であってはならないという思いが強い。これまで彼らが築いてきた運動を高齢者運動にも生かしていって欲しいという思いである。私自身が話を伺っていて、その運動に大いに共感し、高齢協運動に取り込むべき内容が豊富にあると思った。
以下、中西さんらの話から〜〜
この運動は日本の障害者運動を大きく変えてきたということができる。サービス提供者つまり介助者の立場でのサービス提供ではなく、あくまでも利用者優先が大前提だというこ。 この自立生活センターでは、サービスの運用面では自立のために24時間サービスをすでに実現している。
ちなみに、この八王子の自立生活センターでは、市内の重度障害者63人が全て会員で、24時間介助体制の中、それぞれが在宅で生活を行っているそうである。これ以外に140人ぐらいの障害者のいて、全体で400人ぐらいの介助者が登録されている。職員は6名、これまでの活動の中で、介助に関わった人は4000人ということで、これらの人々にヘルパー教育をあわせて実施してきている。
重度の障害者に限らず、施設介護など本人は望んでいない。スエーデンでは全ての施設が既に廃止されている。必要だとすればグループホームのようなものだろうが、それとて障害者本人は望んでいない。みんな自宅で最後まで暮らしたいと願っている。
それを介助できる制度が必要だ。しかも、その内容は他人が決めるべきものではない。本人自身が選択して決めることができなけらばならない。
24時間介助などやれば財政的に大変だという意見もある。しかし、24時間介助を利用する人はいない。必要な時に必要な時間だけいてくれればいいのである。24時間べったりということを望むはずがない。自らの尊厳を守るためにも介助は最低限を望んでいる。
このセンターのプログラムの一つに、「障害者自身が介助者とどう接するか」というプログラムがある。自分をどう介助したら良いか一番知っているのは自分自身である。また、介助者の中には遅刻をしたり、言った通りにしてくれない介助者もいる。
このような介助所者とどう接するかがプログラムを通じて教育される。介助をいいものにするためにはそれを受ける障害者自身の主体性、自立を育てることなしにはありえない。
これは高齢者の介助においても同じことが言えるだろう。「ヘルパー講座」の講師にも介助を受けている障害者や高齢者自身が立つということがもっと行われるべきではないか。
公的介護保険は、在宅(地域)サービスを重点においたという点で評価できる。施設にいる人よりも利用者の声がはるかに強く出てくるから、改革のテンポはずっとははやまるはずだ。
障害者の場合は先天的なものもあるが、一気に障害という事態が襲ってくる。このセンターでは、精神的な衝撃が大きいのでこういった事態に対処するカウンセリングも行っている(ピーカウンセリング)。高齢者の場合はこれが徐々にやってくるのだ
が、従来の効率優先という価値観の中で生きてきた人にとって、自分の活動能力が劣って行くことは、社会に無用の存在になっていくことと同値で、こういった価値観を逆転させることがとにかく必要だ。これが生きる力を再びよみがえらせることにな
る。主体的に介護を受け入れ、最後まで地域の中生きようとする力を生み出すことになる。高齢者の意識改革は障害者以上に進んでいないようだ。障害をもっても生き生きと活動するロールモデルが必要となっているのではないか。
以上のような話を伺って、
先ずは、高齢者運動、とりわけ高齢者協同組合運動にとって、ここの活動が大いに参考になると感じた。中西さん自身の話を聞く場を設定する必要があるし、彼らが障害者の自立のために作ってきたプログラムを研究する必要がある。また、障害者の自立を促進する運動とも協同する必要があると感じた。
鈴木勉先生、この運動をどう見るかコメントが頂ければ幸いです。