5月19日「市民研究会」のご報告
5月21日 菅野 正純(協同総研副理事長)
この研究会は、「市民事業促進のための協同組合」法制定がいよいよ求められている という状況認識のもとに、@「労協法第一次案」を全面的に見直して、幅広い組織に
よる統一的な法案作成に向けて“たたき台”を提案するとともに、A法制化を推進す
る実践母体と、Bこれに共感する団体・個人を大きく広げながら、C法制化のための 「市民会議」結成への見通しをひらくことを趣旨としたものでした。
幸い、当日は、ワーカーズ・コレクティブ(東京・埼玉の連合会)やNPO、協同組 合、労働組合、政党(社民党と民主党)、さらには民間企業の人びとと、協同総研・ 労協連のメンバー、全体で130名以上が一堂に会し、法制化に向けた協同の取り組み
について共感と合意を得ることができました。通産省・加藤サービス産業課長の講演 と、厚生省・青木地域福祉課長補佐の出席をいただいたことも、大きな成果でした。
とりわけ大学生協連(会長・田中 学・東京大学名誉教授)は、この日に向けて、 理事会で@労協法案に対する賛同を(全国210単協、10地域センターの)教職員から
募り、A各地で労協と交流して協同の場づくりを進めることを決議していただきまし
た。これは、狭い意味での労協だけでなく、市民事業とその協同組合全体にとって、
重要な意味を持つものと、私たちは受け止めています。
今後この研究会の成果を受けて、@7月20日に法制化のための「市民会議」の準備会 を設定し、Aこれに向けて、呼びかけ人を広く募り、B統一的な法案検討のプロジェ
クトを並行して進め、C総選挙に向けてできるところから各政党・議員・候補者に働
きかけ、D市民会議準備の事務局をさしあたりは協同総研に置きながらも、広く個人 ・組織の参加のもとに準備を進めることを、主催者として提案させていただきました。
5月19日の研究会を経て、「市民事業の協同組合」の法制化が差し迫って求められ ているとともに、その好機が訪れていることについて確信を深めることができました。
第1に、「市民事業」に取り組む人びとが、急速に増え、その中で協同組合方式が新
たな注目を集め始めていることです。とりわけ公的介護保険の施行と前後して、ケア
ワークを営利企業に委ねず、ワーカーが利用者・家族と結んで、自ら出資し、組織を
つくって立ち上げる動きが強まり、このまわりにさまざまな仕事が「福祉のまちづく
り」をコンセプトにネットし、商店街や中小企業、さらに大企業も含めて連携する気
運が高まっていることです。「労協」や「ワーコレ」だけでなく広く「市民事業」という視野から見れば、すでに多数の人びとがこの領域で活躍しています。
第2に、自治体から中央省庁にわたって、就労政策と福祉、環境、地域政策がリンク
する新たな公共政策が求められており、その実現のために、「市民事業の協同組合」 を位置づけ、これを促進することが、不可欠の要請となっていることです。
しかし、「企業=営利企業」「労働=雇用労働」という古い法制と政策枠組みのため
に、また市民の中での「協同労働の協同組合」を通じた市民事業というパラダイムが
これまで普及していなかったために、市民事業が潜在的には多数に上りながら、大き
く合流し発展することを阻まれています。法制化の運動は、そうした状況に大きな風
穴をあけるに違いありません。