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ハンス H・ミュンクナ教授(*)による
ILO127号勧告の改正案に関するコメント (*)ドイツ、マールブルク大学 訳:島村博(協同労働法制化市民会議)
コメントを為すにあたり下記を情報ソースとした。 1.協同組合開発および協同組合立法に関する専門家会議(ILO主催、於ジューネブ、1993〜1995年) 2.ICA立法顧問団会議(於ソウル、2001年10月14日) 3.報告集「協同組合開発」IV(1)(ジューネブ、2001年) 4.2002年ILO第90回会議準備文書 総括的コメント 1. ILOは、その淵源からして、協同組合の開発促進権限を有するものであるが、留意されてしかるべきは本来ILOは労働者の機構であって、その基本的使命によって決定された固有のアイデンティティと目標とを有するということである。これが意味する所は、ILO勧告中の協同組合定義は、協同組合の価値と原則の守護者の役割を有するICAによる定義と仮にも同一でなければならないということを要さない、ということである。ILOが為す協同組合の定義はICAのそれに比べて、より構造的で、価値指向性のより少ないものでありうるし、さようなものであってしかるべきである。されば、パラグラフ2のサブパラグラフ1の提案本文は適切であって、自助組織たる真正の協同組合の構造を規定する規範的諸契機を含むものである。パラグラフ2で提案されている定義が保存されるとして追加されるべきは民主的コントロールである。さすれば、当該パラグラフの末尾は「民主的運営およびコントロール」と記されることになる。こうすれば、現代のマネジメント理論においても、一定のケースにおいて、厳格な階統的構造よりも参加型の運営構造が優ると解明されている事実を斟酌するものとなる。ICA理事会が提案したバージョンは定義をより短くする点で長所を有するのであろうが、組合員と株主とを識別する自主管理と自己責任という重要な部分を省くものになりかねない。 2. 勧告127号を地理的に、あらゆる分野の人間的な努力において、協同組合に関心を持つあらゆる人々のために普遍的に適用することについては、一般的同意が存する。協同組合組織のすべての類型、形態は平等に保護されるべきである。本当の所を言えば、ILO勧告は労働者協同組合を格別に強調する主張のための論拠として利用されるべきではないのである。 3. 同じく一般に受け入れられていることは、立法、行政命令、政策において協同組合に対するいかなる差別もあってはならない、ということである。とはいえ、協同組合の便宜を図るいかなる人為的なインセンティブもあってはならない、ということを強調することも同じく重要である。さようなものは、かかるインセンティブから利益を得ようとする理由だけで偽の協同組合を設立することを鼓舞しかねないからである。協同組合の平等処遇要求は、協同組合の内外における協同組合人の平等処遇と差別の禁止をも含むべく拡張されてしかるべきである。 4. ICA立法顧問団の一員として私は勧告127号に関するICA理事会情報集本文(2001年10月15日ソウルにて配付済み)の作成に関与したので、当該文書の記載内容を完全に裏書きするものである。 5. 勧告案のフルテキストは内容および言語をより一貫した、より明瞭なものとする見地から完全に手直しされる必要がある(参照のこと。資料IIおよび2001年10月15日のICA理事会情報集の脚注2および4)。 6. 勧告案では、現行の(1966年の)勧告127号のパラグラフ10および12は削除されている。これは勧告文書の明白な後退である。新しいテキストにはこのオリジナルテキストの旧パラグラフ10、11、12を載録することが強力に勧告されている。協同組合立法の概念と内容とは、(民法、商法のシステムが良く発達している)デンマーク、ノルウェーといった国々で協同組合がいかなる特有の協同組合立法も持たずに繁栄をみせているとはいえ、協同組合が正常に発展する上で決定的である。ILO勧告127号が存した35年にわたり有用たることを立証して来た当該のパラグラフを削除しなければならない納得の行く理由は全くないのである。 ILO報告集IV(1)(ジュネーブ、2001年)に記載された提案中の若干のものについてのコメント 勧告案のパラグラフ2 「.社会的及び文化的.」は適切であろう。 勧告案のパラグラフ8 就労上の安全、健康と生産性との連関をわざわざ設定する必要は全くない。かかる連関は明白であるからである。 勧告案のパラグラフ10 法律に行政命令を追加する必要は全くない。法律への言及で十分である。法律は、行政権力に対して、何を規制することができるのかについての限度を定め、かつ、遵守すべき手続を規定する行政命令の作成を定めるものである。過度の規制が多くの国で協同組合の発展を妨げて来ている。安全策を講じることなく過度の規制に道を開くことは賢いとは言えまい。 勧告案のパラグラフ15(e) 生産性と平等の機会との連関をわざわざ設定するには及ばない。関連があるともないとも言えないからである。 勧告案のパラグラフ16(d) ICA原則で規定されているように、被庸者および役員を含む組合員のいずれについても人的資源開発に投資を為すことは協同組合の使命である。 かかるいささかのコメントがあなた方に述べるに足るものであれば幸甚とする次第です。 敬具 マールブルク大学教授 DR.ハンス H ・ミュンクナ 出典 Prof.Dr.Hans-H.Mnkner,am Schlag 19a,35037 Marburg,Comments on the proposed reform of IKORecommendation 127,22 Dec.2001 |