|
||
コミュニティケアを担う(3)
介護サービス「もみじ」の立ち上げと
その後の展開 星邦彦(神奈川県/さがみはら介護・生活支援センターもみじ)
1.設立の背景と経過
昨年の今頃介護保険導入にあたっての種々のニュースが新聞・テレビを賑わしていた。ちょうどその時期に開催されていた、労協主催の「2級ホームヘルパー養成講座」」の受講生たちが直面した現実は、習得したことを活かして仕事をしたいと思っていても働く場がないということであった。介護保険のスタートを目指して急造された特別養護老人ホームやデイサービス等や既存の施設は多数あるが、雇用にあたっては非常勤・年齢制限(50歳以下)という条件があり、受講生の大半を占める中高年層には厳しい状況であった。 そのような折り、研修講座事務局のほうから「いっそのこと自分達で、介護サービスの事業を立ち上げてみませんか」という提案があり、以前行われた3級の講習会受講者も含めて多くの人たちに呼びかけ、11月の中旬に第1回の会合をもったところ約15名ほどが集まった。その後頻繁に会合を持ち、お互い忌憚のない意見交換を行いながら設立に向けて動き始めた。 12月初めには労協神奈川ブロックのからも出席があり「保険などを含めた事業体としてのノウハウ」は労協センター事業団のバックアップを受けられるという説明があった。それにより、資金も経験もない人たちの集まりで本当にできるだろうかという疑問も氷解し、そのうえ事務所にはワーカーズコープ「はじめ工房」の一角を電話付きで借りられるということで急速に事態は進展していった。さらに高齢協・県央相模原幹事会に代表が説明に行き協力をお願いし快諾を得た。その頃には共に設立に向けて行動しようとする仲間も8名に決まり、関係者も含めて「はじめ工房」に一同顔を揃え、代表者、所長など選出し開所式を2000年2月1日とすることを決めた。 明けて2000年の初頭には、開所式招待状やパンフレットの作成、挨拶回り、事務所の調度品の搬入など早急に行うことを申し合わせ、高齢協・県央相模原支部長ならびに幹事の方々の協力を得てお正月過ぎには行政・報道関係への挨拶回りを済ませた。ここにきて発起人一同「もみじ」設立への期待をおおいに高めていった。 2月1日、念願の開所式を迎えた。幸い好天に恵まれ、労協からのサポートの方々が早朝より駆けつけ会場設営も素早く行われた。労協ブロック本部長を始め、市社会福祉協議会、高齢協県央・相模原支部長、市内施設の施設長の方々、高齢協副理事長、神奈川建設ユニオン執行委員長のご出席を得。さらにホームヘルプサービス事業では先輩格の「けやき」、「であいの家」、「おやどり」、障害者ケア住宅「シャローム」「パステルファーム」の皆様や現職ケアマネージャーの方々から実活動を通じてのアドバイスを頂いた。また、相模原市長、高齢協理事長より祝電があった。 ここにめでたく「もみじ」は発進したのである。 2.事業所設立の基本方針 設立にあたってのコンセプトは、「利用者の立場にたった、真心もったおてつだい」と「高齢者を寝たきりにさせない、ならない。元気な人はもっと元気に!!」を合言葉に高齢者や障害者の役に立つような、地元に密着した地域福祉事業所として介護・生活支援センター「もみじ」を位置づける。「皆が雇用者であり、労働者であり、所有者である」というワーカーズコープの方式で運営し、一般の企業のように経営者の言いなりに仕事をするのではなく、皆が意見を述べ合い最良と思われる方法で事業を軌道に乗せていく。ということで全員が合意した。これを踏まえて利益追求の企業論理のみで介護の仕事を行うのではないということを基本方針に据えた。 3.事業展開と地域での立場 当初は仕事はほとんどなかった。しかしデイサービスからのヘルパー応援の依頼があり、自分たちのためにもなるので希望者数名が実務研修を行った。その間他のメンバーは糊口をしのぐためそれぞれ仕事をしながら人間関係を頼りに病院や施設へ挨拶回りを重ね、当事業所のコンセプトを説明し理解を得る努力を重ねた。そのためか自由契約の仕事がボツボツと入ってきてささやかながら介護・支援サービスセンターとしての活動が始まった。 あっという間の2ヶ月であった。指定訪問介護事業所の認可も受け、4月1日の介護保険の実施に向けて準備万端整っていたが、果たして仕事の依頼があるのかどうか非常に不安であった。しばらくは介護のボラティアなどをやりながら2〜3ヶ月は自己研修でもやろうかと思っていた矢先、介護保険対応の依頼が来始めた。最初は適切な対応が出来るか試すような感じであったが、基本方針に沿って誠意ある仕事を心がけていたところすぐに11件程になった。ところが家事援助がほとんどであり介護保険請求額も多くはなかった。それでも依頼が来たことに感激しスタッフは一生懸命ケアに努めた。しかし事業収入はわずかで本部からは「桁がひとつ違っていないか?」と問い合わせがあったほどである。他の事業所では同様な件数で3〜4倍の数値であったから無理もない。 そのうち、皆で練り上げた事業所の方針と、労を惜しまず介護サービスに打ち込むメンバーの仕事ぶりが、あるケアマネージャーのネットワークに評価され、次々と依頼が舞い込み始めた。某ケアマネさん曰く、「困ったときの「もみじ」さん」。これは、諸事情により困難が予想されるケースでも、とりあえず「もみじ」に電話すれば、すぐさま利用者宅に足を運び素早く状況判断をして介護体制を組むという「迅速さ」が嬉しい。ということである。ケアマネを置く余裕のない我々にとっては誠に嬉しい評価であり、現に次々と依頼の舞い込む日々で、徐々にではあるが複合型や身体介護の比率が増えているようだ。さらにそれがもとでへルパーが不足し始め、その確保のため訪問介護員養成研修会(2級)を開催した次第である。 相模原市は比較的若年層が多く、市行政は民間活力を推し進めるという積極性に欠け、介護事業の展開には条件が厳しい面もあるが、当事業所は市主導の集まりや行事に積極的に参加し意見を出しながら将来のよりよい介護保険制度の構築ために役立ち、一方では、民間がリーダーシップをとる社会保障推進協議会にも加わって各団体と連携を取りながら、地域福祉の発展の一端を担いたいと願っている |