連合会だより 

                   富田 孝好(日本労協連・事務局長)

 
 
 「労働の人間化と地域の人間的再生」はここ数年、私たち労働者協同組合の重要なテーマとしてかかげてきてる視点です。4月からの介護保険制度でも、新たな仕事おこしを検討する場合でも、このテーマを実践的に追求していく一つひとつの活動だと考え、その上に立って具体的課題へ挑戦する必要性を強く感じています。 全国事業推進会議(2月20〜21日開催)は、21世紀を展望してどのような事業戦略を持ち、私たちが推進していくのかということを基調として開かれました。会議では、2000年初頭を想定した中期計画の確立の必要性を共通認識の上に、昨年のICAケベック大会で示された世界の協同組合運動の到達点と1980年のICAモスクワ大会におけるレイドロウ報告を再確認し、活発に学び、交流し合いました。特別講演では、「サポートハウス年輪の実践から」(介護コーディネーター・安岡厚子氏)ということで安岡さんからお話をいただき、さらには「コミュニティ・ビジネス」(ヒューマンルネッサンス研究所・細内信孝氏)を演題に細内さんに講演をいただきました。お二人からのお話や会議全体を通して改めて私自身考えたことは、冒頭に紹介させていただいたテーマです。そこに今日的なテーマをつけ加えるとすれば、「グローバル時代の経済と地域」ということにもなるのではないかと思います。
 今、この間連合会加盟の中で中心的役割をはたしてきたセンター事業団が設立以来の厳しい経営状況に立ち至っています。そして、現在「転機―危機突破から真の労協へ」をスローガンに理事会を先頭に改革と改善のための努力が続けられています。連合会もこの事態を深刻に受けとめ、センター事業団と一体となりながら、各事業本部ごとの対策をとり全力をあげています。この事態を生んだ原因にはいろいろなことがありますが、(1)理事会の経営責任(2)労協らしい組織運営と組合員の意識の衰退(3)経済環境の悪化とそれへの対応の不十分さ(4)協同組合原則からの乖離。以上の4点に集約されるのではないかと思います。そして、全組織あげて改革に取り組んでいます。センター事業団は、私自身の労協人生そのものと言っても過言ではなく、再生のため仲間といっしょに努力する決意です。
 さて、「高齢者は平均でみると、現役世代よりややゆとりがあります」(矢野朝水・厚生省年金局長)。解散・総選挙がはらむ通常国会でこんな言葉が交わされていると先日新聞で報道されていました。しかし、同時にその紙面では「実態は貧富の差が大きく、基礎的な生活に必要とされる年収250万円を下回る層が65歳以上の13%を占めるともいわれる。」として「一律に年金給付を抑える削減案では、少なからぬ貧困層が打撃を受ける。」と述べ、年金改革関連法案の審議でゆれる国会の議論にするどく警告を発していました。確かに、実態は“高齢者/悠々自適ばかりじゃない”の見出しのとおり、明日の生活に不安を持って生活する高齢者がたくさんおりその姿が無視されかねない政治の現実があると言えます。社会の根本から問題を問い直し、新しいあり方や制度を考えなければならないし、高齢者自身も生活者として足もとを見つめ、社会の主人公としてもっともっと活躍していくことが求められています。

協同総合研究所(http://jicr.org)