■第9回会員総会開かれる

 東京・神田の明治大学会館で、協同総合研究所の第9回会員総会が6月26日、記念研究
集会が、翌日の27日に開かれました。今回の会員総会・研究集会では、21世紀を目前に
して、新しい世紀の社会経済システムと労働・協同のあり方について議論が深められ、
労協法の実現に向けて、大きく前進する意識を固めあう場となりました。

 協同総研総会の翌日、6月27日には、「21世紀の労働、協同の21世紀」をテーマに研
究集会が開かれました。
 第一部では、宮本憲一氏(立命館大学教授)が、 記念講演。「維持可能な社会と協
同部門」について、社会サービスの分野で協同セクターの活動が期待されている現状を
示しながら、維持可能な社会をどうつくりあげていくかを中心に、話が展開されました

 そのなかで、環境と福祉の分野での社会サービスの充実が必要なことを強調し、「経
済的効果、とくに雇用効果からいって、日本の財政は基本的に公共事業を縮小し、社会
サービス、とくに環境と福祉に財源を配分すべきだ。その場合に、公共部門を増やすだ
けでなく、時限的に基金として協同部門に出資または融資をすべきで、さらに協同部門
が経済的に成り立つような法改正が必要である」と述べました。
 第二部では、新しい世紀の社会経済システムと労働、協同のあり方について、問題提
起と報告をする形式で議論が進められました。
 最初に、野川忍氏(東京学芸大学教授)が、「働き方の知恵│21世紀の労働を考える
」をテーマに問題提起。「働き方の知恵」刊行の経緯や、雇用社会における協同労働の
位置づけについて述べたのち、アメリカやヨーロッパとの国際比較のなかで、新しい働
き方をどう考えていくかついて掘り下げました。
 さらに、岡安喜三郎氏(大学生協事業連合副理事長)が、「21世紀の協同の構図」を
テーマに、「協同の21世紀」は現在の生協経営・運営の困難性の克服とどう連続してい
るか、という視点から、大学生協での実践を交えて、問題提起をしました。岡安氏は、
「体験的協同論│私の21世紀ビジョン」として「コミュニティベースでの協同」と「多
様な協同組合の存立」を重要視し、協同組合の再生・蘇生にどう取り組んでいくか、ど
こから始めるのか、課題を投げかけました。
 このあと、各パネラーが、それぞれの研究と実践のフィールドから、新しい世紀の労
働と協同の視点、実践が論じられました。
 はじめに、後藤尚美氏(東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合理事)が、15年の取
り組みと、現時点でどんな問題を抱えているかを中心に報告。ワーカーズ・コレクティ
ブが労働・起業・事業形態の選択肢になるには、次世代育成、事業経営力強化、労働環
境整備、適正な労働対価、社会システムの改革、法制度の制定・改正などの課題がある
と指摘しました。
 さらに、田中羊子氏(生活協同組合東京高齢協専務理事)から、高齢協での実践から
感じていることを中心に報告がされました。「厚生省や東京都、各自治体から協同組合
に期待や共感が相次いでいること」「高齢協の活動を支える担い手をワーカーズコープ
方式で立ち上げている、その実践から見えてきたこと」「21世紀に市民の成熟がいっそ
う進む時代と協同組合が果たす役割」について議論を展開しました。
 続いて、佐藤洋作氏(文化学習センター代表)が、学校外での子育てと教育に25年間
かかわった経験から、「子ども・青年の自立をどうささえるか、働くことと学ぶことを
どうつなげていくか」を中心に持論を展開。「学校から社会をつなぐ〈コミュニティス
クール〉」をつくり、広げていく必要性、青年が職業アイデンティティを獲得し自分を
発見していく場所づくり、青年の〈仕事づくり〉の重要性などについて述べました。
 また、池田徹氏(生活クラブ生活協同組合・千葉理事長)は、「高齢社会における生
協の役割と新しい生協像」について述べ、現在の生協が、地域に広がる必要性を指摘し
ました。とくに、生協の、助け合いネットワーク事業においては、大勢の組合員が多様
に働き合う生協像が求められると強調しました。
 討論の最後に、橋本吉広氏(地域と協同の研究センター事務局長)から、「生協再生
」の視点から21世紀の労働、協同の21世紀をどう考えるかについて提起。生協が再生す
るための課題として、「協同組合とは?組合員とは?」との再定義運動、協同組合資本
の再結集運動、生協市場の民主主義の徹底、企画・提案能力の向上の必要性などを強調
しました。
 討議終了後、会場から、「協同組合基本法の必要性についてどう思うか」「ワーカー
ズコレクティブで働く若者の働き方の実態はどうなっているのか」「生協が組合員外利
用を推進していくことによって、協同組合原則がくずれ、生協本来の姿が薄れるのでは
ないか」等の質問が出され、活発に議論がなされました。(労協新聞編集部・野口)