『協同の發見』1999.12 No.92 目次

研究所だより

坂林 哲雄(協同総研専務理事)


■6月末の総会から半年が経過したのだが、9月と12月のイベント準備に追われてしまい、総会で決めた方針をほとんど進めることができない状態であった。体制を立て直して研究所の活動を位置付け直さないと給料泥棒と誰かに指弾を受けそうである。会員も少しづつ増えている。半期の総括をおこない2000年の新年度から気持ちを新たにして行きたい。

■12月の高齢者活動の企画(世界をつなぐシニアシチズン)を通じて、イタリアのアウゼルを知ることができたことは大きな収穫であった。1月号に改めに紹介させて頂く予定だが、マリア会長の話にすっかり惚れ込んで来年のイタリア旅行を決め込んだ人もいたようだ。企画者の一人としては大変嬉しいことである。特に注目を集めたのは「世代間の連帯」である。国際高齢者年のスローガンにも「全ての世代のために」とあるのだが、アウゼルは単に理念としてではなく具体的な活動を通じて体現していた。当日の参加者が少なかったことが残念だが、紙面を通じてできる限り表現してみようと思っているので、楽しみにして頂きたい。

■9月の労協法国際フォーラムで使用したビデオの副読本を長崎大学の吉田先生と共同作業で作っている。その中で、私が興味を持って勉強を始めた「Employee Share Ownership Plan」であるが、最も複雑といわれるだけあって法律制度の理解にてこずっている。しかし、嬉しいことにメールの交換でそんなことを話題にしていると、角瀬保雄先生や富沢賢治先生らから教えて頂くこともあり、何とか副読本の完成にはこぎ着けそうである。注文に応じて1月から販売したいと思っている。しかし、労働者協同組合やESOPなどの税制が現在進行形で議論されているのが気にかかる。その議論の延長で、秋に訪問したサンダーランドのケアコープが現在の法人を株式会社に転換すると言っていた。つまり、従業員への持株譲渡に税制優遇措置が認められるので、転換した方が有利だということなのだ。一般の会社は煩雑だから多数利用することはないという見通しのようで、むしろ労働者参加を基本にする労働者協同組合こそ利用するべきだという具合だった。従業員所有制のテキストの中には株式会社を利用した労働者協同組合といったものが登場する。日本では「一株一票に反するので違法」というのが通説だと思うが、どうやらそんな常識?よりも運営の中身を問題にするということが基本だと教えられたような気がしている。

■ 11月に児演協で講演する機会があった。協同組合化へ向けた準備中とのことで、単に法人格や事業目的に特化した協同組合の設立ではなく、事業と運動のバランスを持った協同組合に向かって頂きたいという思いを込めて話をしたつもりだが、少しはお役に立ったか気にかかる。講演の準備をしながら思ったのは、労働者協同組合の運営が分かるテキストがないということだ。最近他の方からも教科書に関する問合せがあった。計画の一つだが手についていない。反省もしつつ下半期の研究所の活動を充実したもにしたいと思っている。

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