『協同の發見』1999.11 No.91 目次

会員レポート・活動紹介

杉本 時哉(協同総研前理事長) 
 

  
■ここ2回程特集号の関係で、 この欄をお休みにしました。この間生協総研が組織された協同経済研究会(座長川口清史)が主催し、 協同総研も支援・参加した国際コンファランス(1998年9月)の成果が『福祉社会と非営利・協同セクター――ヨーロッパの挑戦と日本の課題――』と題して日本評論社から出版(1999・7、 3500+税)され、 また同じ川口清史さんによる「ヨーロッパの福祉ミックスと非営利・協同組織』が大月書店から続いて出版(1999・8、 1500+税)されました。私自身も参加させて貰った前記コンファランスには諸外国の学者研究者(ドゥフルニ、 マロッキ、ストルイヤン、カバレロ、ペストフ、ヴィダルの諸氏)とともに、協同総研の会員である川口、富沢、石塚、藤田、的場の先生方が中心的なレポーターや解説者として加わっておられ、すでに『協同の発見』誌上でも紹介済みかと思います。後者はこの共同研究の副産物として、川口さん自身が調査され、後書きにも記されているように「介護保険を前にして、模索し、試行錯誤する人々へのメッセージ」として纏められたものです。両書の併読をお勧めします。
■会員の佐賀大学・蔦川正義、大分大学・阿部誠の両先生が九大久野国夫教授とともに編者となっておられる『ちょっとまて公共事業』(1999・9、大月書店、2800+税)の寄贈を戴きました。内容は諫早干拓事業をはじめとした九州地域の事例を中心に、公共事業の自然環境破壊の現状と問題点、公共事業をめぐる戦後日本の政治経済体制のしくみ、そこからの脱却の展望を探る意図で、日本科学者会議九州地方区支部の1997〜98年の2回のシンポジウム報告を纏められたものです。構成は、第T部 公共事業依存型の地域政治経済、第U部 事例にみる公共事業の問題点、第V部 公共事業を支える社会経済の構造、第W部 オールタナテイブを展望するとなっていて、17人の方の報告が収録されています。蔦川さんは冒頭の総論、第1章「公共事業の転換をめぐる諸問題」を、阿部さんは第5章、大分県スポーツ公園の事例を取りあげ「都市の環境を破壊する施設建設型の公共事業」について、里山の破壊、財政への影響、市民の議論の三つの角度から論じておられます。協同総研にとっても従来からの追求課題の一つであり。関心の深い課題です。
■中小企業家同友会の『中同協30年史』については、 先にも紹介しましたが、 今回は、 その30周年記念・第31回定期総会の記録集『拓こう21世紀! 日本再生をわれわれが』の寄贈を受けました。中同協の総会報告は、 形式的な年1回の総会セレモニーの単なる情報でなく、 ここには、「小さな企業の大きな役割」と題した、 内橋克人さんの講演と、 それを受けた「日本経済再生のシナリオはわれわれがつくる」という表題でのパネルディスカッションをはじめ、 20にわたるテーマ別分科会のレポートとそれを巡る討論が収録されていて、 大変勉強させられる内容になっています。協同総研会員でおなじみの平石裕一さんが、 第12分科会で「地域金融機関との関係をどう深めるか、 ――中小企業、金融機関、 自治体との新しい連帯をめざして――」のテーマで、 極めて今日的で実践的な問題提起をされています。内容的にも今日の焦点になっている金融再編成下の融資実態に、 中小企業の立場から如何に対処すべきか、 刺激的な問題提起をされていて、 大いに同感させられました。

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