JICR.ORG通信
『協同の発見』第109号(2001年7月)掲載
手島 繁一(協同総研常任理事/法政大学)

■「Lモード」が本格始動

 かねてから関心が持たれていた「Lモード」サービスが、6月29日から始まりました。
 「Lモード」とは、家庭にある固定電話(いわゆる電話です。携帯電話の普及によって、従来の電話がこういう呼び方をされるようになったのです)から、インターネットに接続できるサービスのことです。NTT東日本とNTT西日本がサービスを提供しています。
 両社が6月20日に発表した資料によると、「Lモード」サービスの概要は以下のようになっています。
 (1)約200の公式コンテンツが提供される。
 Lモードで閲覧できる公式コンテンツは、天気予報、マネー、グルメ/タウン情報、子育て/教育、健康/医療/介護など、地域に密着した情報を中心に17分野、約200サイト。20日の記者発表会では、事例として第一勧業銀行、すかいらーく、東芝けあコミュニティ(東京都港区)のサイトのデモを報道陣に公開しました。第一勧業銀行はLモードのサイト上で預金残高の照会、振込・振替のほか、宝くじの購入、当選番号照会などをできるようにしています。すかいらーくは同社が経営する各レストランのメニューの出前を、これまでの電話とWebサイトに加え、Lモードからも受け付けるようにするということです。また、東芝けあコミュニティは世帯主が30代〜40代の家族を対象にした情報提供サイト「たんぽぽママ」と、老人介護についての情報を提供する「けあコミュニティ」を開設すると発表していました。
 NTT東西では今後約2ヵ月に1回程度の割合で公式コンテンツを追加していく計画であるということです。
 (2)メールも使える。
 また、ユーザーは自宅の固定電話から電子メールの送受信もできるようになります。Lモードでは、最大2000文字のメールの送受信が可能になります。メールアドレスは初期設定では「電話番号@pipopa.ne.jp」ですが、サービス開始後はユーザーが自分で固定電話から変更可能です。なお、現在、iモードなど携帯電話によるインターネット接続サービスで問題になっている迷惑メールへの対策として、Lモードでは30件までアドレスを登録し、メールの受信を拒否できる「迷惑メールおことわり機能」(無料)を用意した、とのことです。
 (3)ICカード公衆電話でもサービスを利用できる。
 さらに、Lモード加入者は街頭に設置されているICカード公衆電話からもサービスを利用できます。ただし、テレホンカードのほかに専用のLモードカード(1枚500円)が必要ですが。ユーザーはICカード公衆電話にこれら2枚のカードを挿入し、暗証番号を入力すれば、Lモードのコンテンツや自宅の電話宛のメールを見ることが出来ます。
 (4)さて、料金は?
 サービス利用には、月額利用料300円と接続時間に応じた通信料のほか、各コンテンツの情報料(月額/無料〜300円)が必要です。
 気になるのは利用者の動向ですが、NTT東西両社によると、サービス開始2週間後の7月12日に加入者が約6000件となった、とのことです。「順調な滑り出しだ」と自己評価していますが、果たしてどうでしょうか。
 「Lモード」が注目されていたのは、インターネットへの接続に新しい可能性が開かれるのではないか、という期待があったからです。確かに固定電話は今ではほぼ全ての家庭にあるわけですから、これがインターネットの接続端末になれば、ネットの普及は一挙に進むことになります。
 わたしも新しもの好きですから、さっそく近くの家電量販店に出かけて、「Lモード」対応電話機をアレコレいじってみました。店員さんの話だと、NTTの自己評価とは裏腹に「売れてません!」との冷たい反応でした。
 「Lモード」対応電話機は、FAX対応の大型電話機に10p四方程度の液晶ディスプレイが付いたものとイメージされればよいでしょう。サービス内容(HPを見ることができる、電子メールが使えるなど)は従来のインターネット対応の携帯電話とほぼ同じです。料金設定も同じような水準です。ということは、インターネット対応の携帯電話(iモード、EZweb、J-sky)で利用していたサービスが固定電話でもできるようになったと言うことです。インターネット対応の携帯電話よりも液晶ディスプレイが大きい、入力するためのボタンが大きい、などの利点がある反面、固定電話であるために「その場」でしか使えない、という弱点もあるわけです。
 「これじゃ、ちょっとなぁ」というのが率直な第一印象でした。
 メールはともかく、サイトやHPを見るためには、画面の大きさが決定的な条件です。パソコンは操作性には難点があるものの、その点ではすぐれています。携帯電話の画面が小さいという難点をクリアーする機器としては、最近PDA(ポータブル・デジタル・アシスタント=携帯電子端末)が注目されています。ザウルス、パーム、バイザー、クリエ、カシオペアなどの商品名で販売されている機器のことです(名前が漏れたメーカーの方、ごめんなさい)。こういうライバル機器の急増を見るに付け、「Lモード」にはあまり大きな期待を抱くことは出来ません。やはり、家庭用インターネット接続機器の本命は、テレビではないでしょうか。

■ブロードバンドの新動向

 このコラムでも度々取り上げてきたブロードバンド(高速大容量通信)に衝撃的なサービスが登場しました。ヤフーとソフトバンクは6月19日、ADSL接続サービス「Yahoo!BB」を開始することを発表しました。ADSL接続料金は、下り最大8Mbpsで月額990円(+NTT回線使用料187円)、プロバイダー料金は月額1290円。合計でも月額2280円(+187円)との「価格破壊」的サービスになっています。
 ADSL接続サービスで先行していたNTTとのサービス内容と料金の比較を下表でご覧ください。

事業者 ヤフー NTT東西
サービス名 Yahoo!BB フレッツ・ADSL
下り最大速度 8Mbps 1.5Mbps
上り最大速度 900kbps 512kbps
月額料金 2280円+187円(NTT回線使用料) 4050円(別途プロバイダー接続料が必要)

 「Yahoo!BB」は、6月下旬から都内で試験サービスを始め、8月1日から本サービスが開始される予定です。
 ADSLはCATVと並んで、ブロードバンドサービスの本命と目され期待されてきたのですが、最近では景気の悪い話が増えていました。ADSLサービスのベンチャー企業であった東京めたりっく通信が経営危機に陥ったり、三井物産がADSL事業への参入を断念したり、あるいはアメリカではADSL事業者の倒産や退出が相次ぐなど。
 そこで、「Yahoo!BB」は大丈夫なのかと心配してしまうのですが、新サービスの主役であるソフトバンクの孫正義社長は、「(8MbpsのADSLサービスを月額2000円台で提供するのは)たしかに思い切った経営判断だ。接続サービスだけでなく、ポータルサイトの有料コンテンツ、新しい広告などで、総合的に収益を成り立たせる」つもりだと強気の姿勢を貫いています。ちなみに、「Yahoo!BB」は経営危機に陥った東京めたりっく通信を買収しました。したがって、今後ADSLサービスは、「Yahoo!BB」とNTT東西の両雄の闘いになることが確定しました。寡占化によるサービスの低下も懸念されなくはないのですが、なにしろ、ADSLにはCATV という同一領域におけるライバルが存在するほかに、FTTH(光ファイバー)という強力新人が踵を接して追いかけてきていますから、その懸念は無用でしょう。
 ともかく、昨年11月に「IT基本法」が成立し、「超高速ネットを5年以内に全国1千万世帯に普及させる」という国家目標が掲げられて以来、インターネットの速度競争は「戦国時代」に突入したと言ってもよいでしょう。わずか1年前にはISDNがもてはやされていたことを考えると、その展開の速さには驚愕の感を禁じ得ません。ISDNはもはや「中速」あるいは「低速」ネットになってしまいました。
 現在利用可能なインターネット接続種別の速度は以下のようになっています。

接続種別 接続速度
アナログ電話回線 56kbps
デジタル電話回線(ISDN) 64kbps
ADSL 1.5Mbps 〜8Mbps (会社によって差)
CATV 1.5Mbps 〜8Mbps (会社によって差)
FTTH

■韓国のブロードバンド事情

 話は変わりますが、韓国は世界きってのADSL先進国です。韓国の情報通信省は7月13日,ブロードバンド・アクセス・サービスの普及率についての速報値を発表しました。参考までにその内容をかいつまんで紹介しましょう。それによると,ADSL、CATVインターネット、マンション内LAN接続を合わせた総数は6月末時点で625万世帯で、普及率は全世帯の約4割。2000年末に約400万世帯,2001年3月末に500万世帯と,3カ月ごとに100万世帯のペースで増え続けている、とのことです。
 625万世帯の内訳は、ADSLが約350万世帯、CATVインターネットが約195万世帯、マンション内LAN接続が約78万世帯。
 韓国政府もわが国と同様に「IT立国」をめざす政策を推進していますが、政府・民間の資金を合わせて20兆ウォン(約1兆9000億円)を投資し、2005年までに全世帯の84%に当たる1350万世帯に平均20Mbpsのブロードバンド・アクセス環境を普及させる計画が進行中です。現時点で、米国のブロードバンド・サービス世帯普及率は約10%で、日本は約3%ですから、その意欲と到達点は驚くべき水準といわなくてはなりません。恐るべし、韓国!といったところでしょうか。

■ウイルスに注意

 最近、メール悪用型ウイルスの被害が増えています。5月23日には花王が、整髪料サ ンプルを提供するサイトの登録会員約1万名にウイルス添付メールを配信して、大き な騒ぎになりました。これ以外にもパイオニア、河合塾、ワコール、東京証券取引所などが、やはり会員向けメールサービスでウイルスを配信する事故を起こしています。
 わがJICR.ORGでも、研究所のメーリングリストでウイルス配布の警告が出されたこともあります。幸いなことに、関係者の適切な措置によってウイルス汚染は水際で防がれましたが、今後こうした問題が起こることは充分予測されます。
 こうした事件が増えたのは、メール機能を悪用するウイルスが流行しているからです。このタイプのウイルスは、感染するとメールソフトのアドレス帳に登録されているメールアドレス宛に、ウイルスの複製を添付したメールを自動送信するそうです。つまり、感染すると自分の知人や友人にもウイルスを送ってしまうわけで、ウイルスの被害者が、今度は加害者になり、玉突き式に被害が広がるということになってしまいます。
 ウイルス感染を防ぐには、まずウイルス対策ソフトをインストールして使うのが基本です。さらに二重三重の防衛策として、プロバイダーのサーバーでウイルスチェックをしてくれるサービスを利用することを強くお薦めします。この種のサービスでは、ウイルスが添付されたメールが自分宛に届くと、サーバーで関知して配信をブロックしてくれます。さらに、どこからウイルスが届いたかを知らせる警告メールも送信してくれます。
 以下に代表的なウイルス対策ソフトと主なプロバイダーのウイルスチェックサービスを紹介します。まだ利用なさっていない方は、この機会に導入・利用されることを考えて下さい。
●代表的なウイルス対策ソフト(価格は、メーカー希望価格。実際はもっと安く買えます)
▼トレンドマイクロ ウイルスバスター2001
http://www.trendmicro.co.jp/product/vb2001/product.htm
常駐して監視するリアルタイム検索、メールの添付ファイル監視に加え、悪質Webサイトのブロック機能もある。価格:8500円
▼シマンテック ノートン・アンチウイルス2001
http://www.symantec.com/region/jp/products/nav2001/
常駐機能とメール内容監視機能に加え、スクリプト型ウイルスを未然に防ぐ「スクリプト遮断機能」を搭載。価格:6500円
▼マカフィー(発売元:ソースネクスト) ウイルススキャン Ver.5.1
http://www.sourcenext.com/products/vscan/
常駐機能、メール添付ファイルの監視など標準的な機能を網羅。スクリーンセーバー作動時に検索する機能もある。価格:8500円

●主なプロバイダーのウイルスチェックサービス
▼BIGLOBE
http://email.biglobe.ne.jp/vcheck/
シマンテックと提携して「メールウイルスチェックサービス」を提供。料金は1メールボックスあたり、月額料金300円。7月31日まで無料サービスを実施
▼OCN
http://www.ocn.ne.jp/announce/2001/0606a.html
トレンドマイクロと提携して「ウイルスチェックサービス」を提供。OCNダイヤルアクセス、OCN ADSLアクセスユーザー向けで、1メールボックスあたり月額200円
▼DION
http://www.dion.ne.jp/dialup/service/okonomi/chakushin.html
インフォサイエンスと提携して「お好み着信サービス」を提供。初期登録料は1メールボックスあたり150円、月額150円。スパムメールの着信拒否設定もできる

●ウイルス情報サイト
▼IPAセキュリティセンター
http://www.ipa.go.jp/security/
情報処理振興事業協会のセキュリティセンターサイト。最新のウイルス情報や流行の警告、対策法などをいち早く掲載している。

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