『協同の發見』2000.9 No.100 総目次
JICR.ORG通信
『協同の発見』第100号(2000年9月)掲載
手島 繁一(協同総研常任理事/法政大学)

5000アクセスを突破
 
 長い夏休みも終わりました。とは言っても大学などによってはまだ休みのところもあるようですが・・・。でもそろそろ新しい学期の準備に忙殺されていることでしょう。
 さて、JICR.ORGのアクセス件数が5000を突破しました。わたしはボヤーとして「歴史的瞬間」を見過ごしてしまったのですが、熱心な閲覧者である友人からの指摘があって気がつきました。どうやら、9月7日前後のことのようです。サイトの立ち上げは99年7月ですから、14ヶ月目での達成ということになります。月平均360件弱、日平均10件強というペースです。このペースは、前にも報告したように、99年11月以来一貫しています。着実といえば着実なんですが、「ドッグイヤー」と形容されるインターネットの驚異的普及スピードからすればヤヤもの足らないというのが率直な感想です。別にNTTドコモの「iモード」のような爆発的普及を期待しているわけではないのですが・・・。
 
『iモード事件』の面白さ
 
 「iモード」といえば、その開発者の一人である(「iモードの生みの親」という称号もある)松永真理さんが書いた『iモード事件』(角川書店、2000年7月)が面白い。『事件』と銘打ってはいるがミステリー小説ではありません。「iモード」というメガヒット誕生秘話、つまりノンフィクションです。「感動のリアルビジネス・ドキュメント」(「腰巻き」のキャプション)とは言い過ぎにしても、なるほどと思わせるエピソードには事欠かない。
 ちなみに、松永真理さんは女性向け求人・転職情報雑誌『とらばーゆ』(リクルート出版)の編集長であったが、NTTドコモの「iモード開発プロジェクトチーム」にリクルートされて、文字通り「とらばーゆ」(転職)してしまったのです。それはともかく、自称「HTMLも書けない、典型的アナログ人間」がIT最先端現場に飛び込んで、成功体験を築いてしまうところが凄い。時代が後押しをしたのでしょうか、勢いとはこういうことを言うのでしょう。
 
IT革命が崩す「二項対立図式」
 
 考えてみれば、「素人でもできる」というところが、「IT革命」のポイントかもしれません。
 「IT革命」などというと、IT理論(実はそんな理論なんぞはありはしないのだが)で武装し、技術研鑽に励み、高度で複雑な専門能力を身につけたプロフェッショナル・パーソンがその主体であるかのような印象を与えてしまいます。「デジタル・デバイド(情報格差)」が懸念されるのは、「IT革命」をそういうものとして捉えているからではないでしょうか。
 実はこうした「商品・サービスの開発者・提供者vs商品・サービスの受容者・利用者」という固定的な役割分担図式、あるいは「二項対立図式」を破壊することにこそ、IT革命の意義があったのではないか、との思いを松永さんの本を読んで改めて思ったのでした。
 別の視点からいうと、生産者主導型開発ではなく利用者主導型開発の成功があり得ること、そのために必要なプロセスと闘いはどうあるのかということを見事に実証して見せたのが「iモード事件」の真相であったのではないかと思うのです。
 「技術の日産」、「ラリーの三菱自動車」(ご存知ない方のために言っておきますと、パリ・ダカなどの世界的自動車耐久レースでは三菱の名は燦然たるものがあるのですよ!)の落日を見るにつけ、その思いを強くします。
 
JICR.ORG改革の課題
 
 さて、JICR.ORGの改革課題も自ずから見えてきます。これまでの文脈からいうと、「労働者協同組合」「労働者協同組合法」など、従来型雇用社会へのオルタナテブとして数々の「技術発明・開発」を世に問うてきた研究所であったわけですが、やっぱり「開発者側の論理の一方的押しつけ」になっていたののではないか、という自己反省が必要になってきているように思われます。
 直ちに取り組むべき課題を列記します。
(1)「労働者協同組合法の部屋」については、制作スタッフを独自にグループ化し、抜本的な改革をはかります。
 この間、菅野副理事長、岡安常任理事、島村労協連国際部員のトリオが国会へのロビー活動で、めざましい前進を見せています。こういう情報は、速報性と明示性が必要とされるものですから、サイト制作もお任せし、その成果や到達点をその都度ごと公開したいと思います。
(2)同様に、労働者協同組合法に関する電子掲示板(BBS)を立ち上げたいと思います。応答性を強化することはJICR.ORGの懸案であったのですが、とりあえず「労働者協同組合法に関する電子掲示板」という形で実験を始めてみたいと思います。
(3)研究所の「売り物」である「いま、協同を拓く2000全国集会」(略称:協同集会)への取り組みが本格化してきました。まさにフローの情報が中心になるのですが、サイトがどういう形で取り上げていくか、検討します。期間限定で掲示板を立ち上げるのも一法なんですが、何かよい智恵があればお貸し下さい。
 
この間の更新情報
 
 9月12日付で、更新しました。トップページのフェースを少し変えました。また、『協同の発見』8月号の目次および主要記事を掲載しました。ご覧ください。
 嬉しいお知らせです。日本労働者協同組合連合会(労協連)のHPがリニューアルしました。特にトップページは、軽快かつ使い易いものに仕上がってます。なお、それに伴いURLも変更になっています。JICR.ORG のトップページにリンクを張ってありますから、そこからも行けますが、直通する場合は以下のURLをご利用下さい。また、「ブックマーク」や「お気に入り」に登録されている方は変更をお願いします。
http://www.roukyou.gr.jp/


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